2002-01〜2002-06記事

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00(Medical Tribuneなどの記事)【はじめに】
今まで一般公開されていたMedical Tribune「週間医学雑誌記事」が2000年9月28日から
ID+パスワードが必要になってしまいました。情報公開の時代に残念な出来事でなりません。
そこで乳癌に関連したニュース(一般雑誌より参考になり得る情報)をここにセレクトし
転記します。転載した責任の所在は吉利です。Medical Tribune誌関連の方、もし転載に
問題がございましたら、webmaster@prodr.com(吉利)までメールをお願いします。

[2002年1月3,10日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.1,2 p.02)

PETスキャンで変わる乳癌患者の治療

〔米バージニア州レストン〕 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UC LA)アーマンソン生体イメージングクリニック/核医学クリニック(ロサンゼルス)分子および医用薬理学部のJohannes Czernin博士は, PETスキャンにより再発性乳癌患者の60%で治療法が変更になったほか,36%で以前の癌進行度の判定と異なる結果が得られたとJournal of Nuclear Medicine(42:1334-1337,2001)に発表した。
この調査は,UCLAアーマンソン生体イメージングクリニックおよび北カリフォルニアPETイメージングセンター(NCPIC)で実施された。これら施設で全身フルオロデオキシグルコース(FDG)PETを受けた乳癌患者160例の担当医にアンケート調査を行った。患者50例の担当医32人には,2 段階のアンケートに回答してもらった。

進展病期への変更が28%

 その結果,臨床管理の変更とは,例えば「手術から放射線療法へ」,「薬物療法から治療なしへ」など,ある種類の治療から別の治療への移行。そのほかの変更は「ある種類の化学療法薬から別の種類へ」といった,現行の療法のなかでの変更であった。
 PETスキャンを実施した全患者について,進行度を再判定した。そのスキャン結果は疾患の進行度の判定に大きな影響を与えた。より進展した病期への変更例は 4 分の 1 を超える28%(14例),より早期への変更例は 8 %( 4 例)であった。スキャン前は全患者の36%がIV期の癌を有するとの報告であったが,スキャン後はそれまで検出されていなかった転移を発見した結果,半数を超える患者(52%)がこの病期にあった。
 Czernin博士は「これらの結果は,再発性乳癌患者の治療決定におけるPETの重要性を示している。より良い治療の決定を下せることは,この疾患の患者により長くより良いQOLをもたらすことになるはずだ」と述べた。
 同博士はPETの重要性に加えて「PETスキャンの結果,進行度判定そのものに影響がなくても,しばしば臨床管理が変更となった」とし,「この研究は,再発性乳癌の医療費償還に賛成する昨年 6 月19日のメディケアの費用負担に関する諮問委員会の投票結果と合わせて,乳癌患者の疾患管理と治療計画における,PETの役割と重要性を強化するものだ」と述べた。
 米国癌協会(ACS,ジョージア州アトランタ)は,米国における2001年の浸潤性乳癌の新規発症は約19万3,706例で,約 4 万600例がこの疾患により死亡すると推定している。ACSによると,死亡率の低下は「おそらく,より早期の検出と治療の向上の結果だろう」という。
キーワード 【PETスキャン 乳癌治療】

[2002年1月3,10日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.1,2 p.15)

夜間照明や夜勤が乳癌リスクを増大

〔米ワシントン州シアトル〕 フレッドハッチンソン癌研究センター公衆衛生科学部門およびワシントン大学公衆衛生・地域医療科疫学(ともにシアトル)のScott Davis部長は,夜更かしの習慣や寝室の照明,夜勤などによって夜間に照明に当たることが多い女性では乳癌リスクが最大60%増加していると,米国立癌研究所(NCI)のJournal of the National Cancer Institute(93:1557-1562,2001)に発表した。NCIが助成した今回の研究は,乳癌リスクと夜間照明への曝露との関連を住民ベースで調査した初めてのもの。

10年間の夜勤歴を調査

 この研究の筆頭著者であるDavis部長は「夜勤が健康に及ぼす影響の研究は,心疾患から胃の疾患に至るまで数多く行われてきたが,深夜勤務と夜間照明を,それぞれ独立した乳癌リスクファクターとして包括的に取り上げたのは今回の研究が初めて」と述べている。
 同部長らは,シアトル地域で乳癌と診断された800例以上の女性に個人面接を行い,同年齢の女性を対照群(同数)として面接した。面接では,乳癌の診断以前の10年間での夜間照明への曝露,交代勤務の経験などを調査した。
 その結果,乳癌の診断以前の10年間に 1 回以上深夜勤務に就いた女性では,そうでない女性に比べて乳癌リスクが約60%増加していることを突き止めた。さらに,週当たりの深夜勤務が 1 時間増えるごとにリスクは有意に増加していた。

メラトニン生成の妨害が関与

 睡眠や夜間の照明と乳癌発症との間には,脳の松果体で生成されるホルモンのメラトニンが関与している。メラトニンの生成は,夜間の睡眠時にピークに達する。一説によると,夜間の睡眠剥奪や照明ヘの曝露により,なんらかの理由でメラトニン生成が妨害され,その結果,卵巣から乳癌促進物質として知られるホルモンのエストロゲンが過剰に分泌されるという。
 メラトニンと乳癌との関係は,既に盲目女性を対象とした研究でも間接的に示唆されていた。この研究では,盲目女性の乳癌リスクが対照群とした脳卒中や心血管疾患の女性患者に比べて20〜50%低かった。リスク低減の原因として,盲目女性は光の変動の影響を受けないためメラトニンのレベルが一定に保たれ,それによって体内を循環するエストロゲンのレベルも抑制されるのではないかという仮説が立てられている。
 Davis部長らは,乳癌リスクが交代勤務の継続年数,週当たりの深夜勤務時間に関係していることを発見した。例えば,4 年半以上にわたり頻繁に夜勤に就き,その間週 3 日以上は,メラトニンの分泌がピークに達する午前 1 〜 2 時の間に起きていた女性では,乳癌リスクが 2 倍であった。さらに,同時間帯に起きていた日が週当たり 1 日増えるごとに癌のリスクは14%増加した。
 また,統計学的に有意ではないが,寝室を明るくして眠る女性でも乳癌リスクの増加が観察されている。寝室内の照明の程度は,目の前にかざした手が見えないほど暗かったとか,ベッドの端まで見通せたなど,被験者自身の記憶に基づいて判断した。ただし,夜間に起きて手洗いに行くなどで照明をつけた場合には,癌リスクの増加は見られなかった。

勧告には時期尚早

 夜間の照明や深夜勤務と乳癌との関係に関するこうした知見から,どのような結論が導き出せるのだろうか。
 Davis部長は「平均量の夜間照明に当たる人に対して特別に指示したり,生活様式を変更するような勧告を行うのは時期尚早である」とし,「研究の観点からは,正常なサーカディアンリズムを崩すさまざまな要因が癌リスクを左右するホルモンに影響を及ぼすという一般的な見方をすることが大切」と述べている。
 こうした要因としては,例えばストレスが挙げられる。交代勤務に伴うストレスが,夜間照明への曝露とは無関係に,かぎとなるホルモンの変動を引き起こすとも考えられる。
 同部長は「交代勤務ではさまざまな要因がサーカディアンリズムの制御機構に影響を及ぼす。例えば,警察や消防,救助活動,原発の監視,工場作業,医療,看護など交代勤務が含まれる職業に伴うストレスもその 1 つである」と述べている。
 交代勤務がホルモンに与える影響をより正確に評価するため,同部長らはサーカディアンリズムの崩壊がメラトニンとエストロゲンの産生に与える影響を研究する予定である。
 同部長は「研究の次段階では,夜勤と日勤の看護婦を対象に,これらのホルモンレベルを比較したり,現時点では夜勤とメラトニン減少やエストロゲン増加との関係がヒトで確認されていないので,交代勤務が特定の生物学的影響を引き起こすかどうかを測定していく必要がある」と述べている。
 同誌の同じ号には,同部長の研究以外にも,夜勤による睡眠の中断と乳癌リスクの有意な増加との関係を論じた記事がもう 1 件掲載されている。
キーワード 【夜間照明 夜勤 乳癌リスク】

[2002年1月24日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.4 p.22)

転移性乳癌
集中全身化学療法でも脳への転移による死亡は防げない

〔米カリフォルニア州サンアントニオ〕 ノースカロライナ大学(ノースカロライナ州チャペルヒル)のL. A. Carey博士らは,転移性乳癌に集中全身化学療法を行うことは生存率の改善をもたらすものの,脳への転移による死亡は防止できないと,サンアントニオ乳癌シンポジウムで報告した。
 同博士らは,II 〜III期の乳癌に対して新しい補助化学療法を1992年から同大学で受け,その後の経過を追跡できた132例の患者について検討したところ,中枢神経における再発による死亡リスクが最も高いのは,エストロゲン受容体(ER)が陰性の若年女性患者であることがわかった。
 35か月の追跡期間中に,34例(25%)が遠隔再発を起こした。それらの患者のうち,11例は中枢神経における再発で,5 例は中枢神経のみで再発して進行していた。
 中枢神経に再発した患者の大半は脳実質に多発という形で再発しているため,外科治療や薬物療法が行えず死亡したが,従来の化学療法にもハーセプチンなどの生物学的治療にも抵抗性があるのが特徴であった。
 同博士らによると,全身化学療法の効果がそれほどなかった過去のデータでは,中枢神経系の再発で死亡しているのは10%にすぎないことを強調していたという。
 集中全身化学療法を行っても中枢神経での再発の頻度を減らすことはできないため,このような再発予防と治療のための新しいアプローチが求められているという。
キーワード 【転移性乳癌】

[2002年1月31日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.5 p.20)

タモキシフェンに取って代わるアロマターゼ阻害薬
閉経後女性の乳癌

〔米テキサス州サンアントニオ〕 タモキシフェンは,今や閉経後女性の乳癌のアジュバント治療におけるゴールドスタンダードであるが,当地で報告された大規模多施設試験の結果,タモキシフェンの代わりにアロマターゼ阻害薬が用いられるようになるかもしれない。

再発率が低い

 ロンドン大学(ロンドン)のMichael Baum名誉教授は,サンアントニオ乳癌シンポジウムにおいて,中央値で30.7か月の時点では,アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール)治療群のほうがタモキシフェン治療群より再発率は17%低かった,と報告した。アナストロゾール群では女性3,125例中317例(10%)が再発したのに対して,タモキシフェン群では3,116例中379例(12%)であった。なお,併用治療群では,タモキシフェン群と差は見られず,3,125例中383例(12%)に再発が認められた。
 同名誉教授は,これまでに行われたこの種の試験のなかでは最大のものと報告されたアナストロゾール,タモキシフェン単独あるいは併用(ATAC)試験の国際的な主席研究者としてこの報告を行った。
 今回の多施設ランダム化二重盲検試験には,21か国380の癌センターから,閉経後女性で浸潤性乳癌の一次治療を終えた患者9,366例が参加。試験参加者には,アナストロゾール( 1 日 1 mg)またはタモキシフェン ( 1 日20mg)のいずれか単独,もしくは併用投与を 5 年間,あるいは再発が見られるまで行った。

 米国の研究者の代表であるテキサス大学MDアンダーソン癌センター(テキサス州ヒューストン)のAman Buzdar博士は,「初期乳癌に対して確立されてきたタモキシフェンの有益性には疑問が出てきている。同薬は非常に有効性が高いが,子宮内膜癌のリスクを高めるなどの副作用がある」とコメントした。
 この研究では,子宮内膜癌の発生率はタモキシフェン群の0.5%に対してアナストロゾール群では0.1%であった。一方,腟出血はそれぞれ8.1%,4.5%,深部静脈血栓症発症率は1.7%,0.1%だった。しかし,骨折(主として手首骨折)の発生率はアナストロゾール群が5.8%と,タモキシフェン群の3.7%を上回った。
 Baum名誉教授によると,閉経後女性ではいくらかエストロゲン様の作用を持つタモキシフェンで治療を行ったほうが,アロマターゼ阻害薬を用いるより認知機能の維持効果は高いことを複数の研究者が示唆している。現時点ではこの推測を裏づける証拠はないが,他の研究において,ある型のエストロゲンの存在が閉経後女性における認知機能の維持に役立つことが示された。
 この研究に引き続き,他のサブグループが遠隔転移までの期間,全体的な生存率,新たな原発癌の発生などを含む,他のエンドポイントを決める試験を行う予定である。

もう1つのアロマターゼ阻害薬

 アジュバント治療におけるタモキシフェンの優位性に対する挑戦として,もう 1 つの多国籍試験の報告が挙げられる。これは,進行乳癌に対する第一選択薬として,もう 1 つのアロマターゼ阻害薬letrozole(Femara)をタモキシフェンと比較したものであり,letrozoleのほうが生存率は高いと報告された。
 デューク大学医療センター(ノースカロライナ州ダーラム)デューク乳癌プログラムの臨床部長であるMatthew Ellis博士は,「この研究で得られたデータは,既にホルモン感受性のある閉経後の進行性乳癌患者の治療にはletrozoleのほうがタモキシフェンより有効であることを示している。これらの新たな結果は,治療が非常に難しいHER-2陽性乳癌の初期にもletrozoleが有効である可能性を示唆している」と述べた。
 この研究では,Ki67,上皮細胞成長因子,HER-2-neuなどの腫瘍細胞上の分子マーカーや受容体により明示された通り,letrozoleが細胞増殖の抑制という点でタモキシフェンより有効であることが示された。
 907例の閉経後女性を対象としたランダム化二重盲検試験で,letrozoleを投与された患者は,治療開始から 5 年後に,タモキシフェン投与の患者より治療に対する応答の可能性が78%高かったこと,さらに腫瘍の進行は30%低かったことが示された。letrozoleは癌の進行を9.4か月にまで遅らせたのに対して,タモキシフェンは6.0か月であった。letrozole群は,カルノフスキー尺度のスコアもタモキシフェン群より高く,タモキシフェン群で試験開始時の機能レベルを維持できたのは3.5年だったのに対して,letrozole群ではそれを4.6年以上維持した。
 これら 2 件の研究結果は,アロマターゼ阻害薬が有望であることを示しているが,研究者らは,現在タモキシフェンの投与を受けている患者は,その治療途中でアロマターゼ阻害薬に変更しないほうがよいだろうと注意を促している。
キーワード 【アロマターゼ阻害薬】

[2002年1月31日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.5 p.38)

〜進行・再発乳癌〜
Letrozoleでタモキシフェンより高い生存率

〔米テキサス州サンアントニオ〕 第 3 世代アロマターゼ阻害薬letrozoleの第III相試験結果によると,ホルモン補充療法が実施可能な閉経後の進行・再発乳癌女性を対象に生存率を検討した大規模試験の結果,letro-zole投与群はタモキシフェン投与群に比べて生存率が高かったと,当地で開かれたサンアントニオ乳癌シンポジウムで報告された。今回の試験は1996年11月から 2 年間にわたり実施され,ホルモン補充療法が第一選択で実施可能な907例を対象に,ランダム化二重盲検試験でletrozole群405例,タモキシフェン群454例の治療経過および生存率を比較したもの。

治療反応性も高い

 解析の結果,薬剤治療に対する反応性は,letrozole群のほうがタモキシフェン群に比べて78%と有意(P=0.0002)に高かった。進行・再発乳癌の進行を遅らせている期間はletrozole群で9.4か月とタモキシフェン群の 6 か月に比べて有意(P=0.0001)に長く,乳癌が進行する可能性はletro-zole群でタモキシフェン群に比べて30%低いことが示された。また,1 年後および 2 年後の生存率は,いずれもletrozole群で有意(P<0.02)に高いことが認められ,乳癌が進行しなかった症例の割合もletrozole群で有意(P=0.011)に大きいことがわかった。
 さらに,乳癌の進行に伴った日常生活動作への影響をカルノフルスキー評価指標を用いて測定した結果,letrozole群ではタモキシフェン群に比べて日常生活動作レベルが長期間維持された。
 この結果について,ジュールボルデ研究所(ベルギー)化学療法部門長のMartine J. Piccart博士は「進行・再発乳癌の治療で唯一できることは癌の進行を遅らせることだ。24か月間の試験期間で,letrozoleがタモキシフェンに比べて乳癌の進行を遅らせ,高い生存率を示したことから,ホルモン補充療法の第一選択薬はタモキシフェンからletrozoleになるだろう」と述べている。
キーワード 【Letrozole】

[2002年2月7日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.6 p.24)

原発性乳癌 ビスホスホネートが骨転移を抑制し余命を延長

 王立マースデン病院(ロンドン)のTrevor Powles博士らは,「ビスホスホネート製剤であるclodronateの経口投与を原発性乳癌に対するアジュバント療法として実施したところ,骨転移件数および死亡率が有意に減少した」と同集会で報告した。

投与期間中の骨転移が減少

 Powles博士らは,カナダの研究者と共同で多施設研究を行い,1,069例の女性患者を無作為に 2 群に分け,clodronate 1,600mg/日またはプラセボを 2 年間投与した。
 その結果,clodronate群においては骨転移件数は12で,プラセボ群の28より少なかった。しかし,投与期間終了後の追跡調査期間中には,骨転移に関して両群間に有意差は見られなくなった(clodronate群80,プラセボ群63)。また,骨外転移の発現率についても有意差は見られなかった(clodronate群112,プラセボ群128)。しかし,追跡調査を開始して 2 年後の死亡件数に関しては有意差が認められた(clodronate群98,プラセボ群129)。
 同博士は「これらの結果が有意であるとはいえ,本剤および他のビスホスホネート製剤を用いた追加研究は必要である」と指摘。「別のビスホスホネート製剤であるzolendronateを用いた 2 つの治験が開始されたところで,5 年間の追跡調査が予定されていることから,これまでで“最も有力な”研究として期待されている」と述べた。

死亡率低下の確認に大きな意義

 米国臨床腫瘍学会は以前に公表したガイドラインで,1999年の論文および他の情報のレビューに基づいて,ビスホスホネートは生存率全体というエンドポイントには影響を及ぼさないと指摘していたため,clodronateを用いた今回の試験において死亡率の低下が報告されたのは朗報と言えよう。
 王立パース病院(オーストラリア・パース)のSamuel Vasikaran博士はAnnals of Clinical Biochemistryに掲載されたレビュー記事で,「ビスホスホネートは乳癌および多発性骨髄腫に多く適用されているが,悪性腫瘍におけるおもな作用は,破骨細胞を介した骨再吸収に影響を及ぼすことを通じて発現すると考えられている」と説明。「ビスホスホネートは,メバロン酸経路を介して,リポ蛋白代謝作用を有するとも考えられ,このことは臨床的に重要であるかもしれない」と述べている。
キーワード 【原発性乳癌 ビスホスホネート】

[2002年2月7日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.6 p.24)

米の乳癌手術は日帰りが主流に

〔ワシントンD.C.〕 米医療研究・品質管理局(メリーランド州ロックビル)のClaudia Steiner博士らは1990〜96年の乳癌手術の統計を調べ,州によっては外来での日帰り手術が劇的に増加していることを明らかにし,Health Services Research(36:869-884,2001)に詳細を発表した。

乳房温存術では大半が日帰り

 Steiner博士は「臨床的要素の重要性に変わりはないが,乳房全摘術を外来手術で受ける選択には,どの州で手術を受けるか,またどの保険に入っているかが大きく影響している」としている。同博士らは各州における数年間の診療録を検討。一定期間に乳癌の手術を受けた全患者を対象に,入院患者と外来患者を併せて評価した。実際には,コロラド・メリーランド・ニュージャージー・ニューヨークの各州では1990〜96年,コネティカット州では93〜96年の記録を調べた。手術内容は乳房温存術,乳房亜全摘術,乳房全摘術とした。また,手術を入院して受けるか外来で受けるかの選択に際し,疾患の重症度,医療保険がカバーする範囲,手術手技の範囲,その病院の特質などが及ぼす影響を評価し,地域差を検討した。
 その結果,上記期間中では乳房温存術はほとんどが外来手術として行われた。1996年になると,乳房温存術を受けた患者の78〜88%が病院に 1 泊もせずに帰宅した。外来手術で乳房亜全摘術が施行された率は,90年の10〜50%から96年には43〜72%と上昇した。ただし,この数字は州によってばらつきがあり,激増した州もある。例えば,コロラド州では外来手術として乳房亜全摘術が行われた率が,90年ではわずか10%にすぎなかったが,96年には67%まで上昇した。外来で乳房全摘術を施行する率は90年ではほとんどゼロに近かった。しかし,96年までにニュージャージー州では 3 %,ニューヨーク州では 4 %まで増加し,さらにコネティカット州では 8 %,メリーランド州では12%,コロラド州では22%にまで上昇した。

医療の質が犠牲になる可能性も

 乳房全摘術のフォローを入院して受けるかどうかの選択には,医療保険の適用範囲も影響した。メディケイド加入者では97%が入院して術後管理を受けたが,メディケア加入者では94%であった。健康維持組織(HMO)加入者の入院は89%であった。病態が重篤な患者では入院加療が多かった。他の疾患を合併している患者,乳房再建術が必要な患者,癌が転移している患者では外来で手術を受ける率は低かった。また,公立病院や教育病院では患者が外来手術を受ける率が低いことが判明した。
 Steiner博士は「外来手術での直接的コストはかなり低いが,患者が何回も来院する費用や,多くの患者にとって負担となる自宅での介護にかかる費用,また家族が介護に当たることによる間接的コストに関しては十分な検討が行われていない」と述べた。さらに「入院期間の短縮は古くて新しい問題である。医療費を削減することによって得られる利益は,医療の質を犠牲にして得ている可能性がある。この質を監視し続ける必要がある」とコメントした。
キーワード 【米国乳癌手術 日帰りオペ】

[2002年2月7日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.6 p.25)

転移乳癌 トラスツズマブの早期投与は有効か
−−国際臨床試験が進行中−−

〔ニューヨーク〕 転移乳癌の標的療法に使用される遺伝子組み換え薬のトラスツズマブが,早期乳癌にも効果があるかどうかを検討する国際臨床試験が現在進行中である。この研究は乳癌国際研究グループ(BCI RG,Jean-Marc Nabholtz理事長)が主導するもので,トラスツズマブによる早期乳癌治療の国際臨床試験としては最大規模(約600施設が参加)であり,米国ではメリーランド大学グリーンバウム癌センター(メリーランド州ボルティモア)が参加している。

転移前のHER2阻害がねらい

 同センターおよびメリーランド大学腫瘍学科のKate Tkaczuk准教授は「この革新的な研究は,進行乳癌の女性に,従来よりはるかに早い時期でのトラスツズマブ投与の機会を与えるもの」と説明している。
 現在,米食品医薬品局(FDA)は,他の部位に転移した進行乳癌の治療にのみトラスツズマブの投与を承認している。これまでの研究で同薬が従来の癌治療薬の効果を高めることがわかっている。今回の研究は,進行乳癌患者を対象に,治療初期のトラスツズマブ投与にメリットがあるかどうかを見極めようというもの。
 トラスツズマブがHER2遺伝子の能力を遮断し癌の増大を遅延させることは,予備研究で既に示唆されていた。同薬は,標的療法に用いられる遺伝子組み換え薬,モノクローナル抗体の一種である。ヒトの免疫系が生成する抗体は異物や病原菌と戦うが,モノクローナル抗体は特定の種類の癌細胞と戦うことを意図して作製される。トラスツズマブは乳癌細胞のHER2遺伝子を探し出してこれと結合し,癌細胞の増殖を食い止め,縮小させることがわかっている。
 HER2遺伝子は通常,細胞の増殖および細胞死の調節に関与しているが,HER2遺伝子の過剰発現は癌の急増殖につながる。こうした欠陥遺伝子は,乳癌の約25%で見つかっている。New England Journal of Medicineに最近掲載された研究によると,トラスツズマブを薬物療法と組み合わせることで,進行乳癌患者の生存率を24%高めたという。このため,新規の乳癌患者でも,トラスツズマブはより効果を発揮するのではないかと期待されている。

再発防止と延命に期待

 Tkaczuk准教授は「このような国際的な最先端研究に参加できて喜ばしい。今回の研究は,乳癌治療に関する最新の科学的知見に基づいており,これが成功すれば,HER2陽性の乳癌患者の治療における全く新しい基準の確立に結び付くだろう。この治療法が癌の増殖,再発を遅延させ,さらには防止することを期待している」と述べた。
 同研究は,世界中の乳癌患者3,150例を10年にわたり調査するもので,グリーンバウム癌センターでは,リンパ節検査で癌細胞陽性のHER2陽性乳癌患者,リンパ節検査は陰性だが 2 cmを超える腫瘍がある患者,エストロゲン受容体陰性の乳癌患者,35歳未満の患者を被験者とした。研究目標は,3 通りの治療法のうち,癌の再発を防ぎ,患者の生存期間延長に最も効果のある方法を見極めることである。
 今回の研究の共同主任を務めるNabholtz理事長(カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授および同大学癌治療開発プログラム監督)は「乳癌の有望な新治療における進歩は目覚ましい。今回のような研究を通じて,これらの治療法の効果を実証する必要がある」とし,「現在臨床試験中の新療法に焦点を当てるのは,乳癌を克服可能な患者数を増やすためである」と述べた。
 乳癌は全世界で毎年新たに78万件が報告されている。米国女性では,皮膚癌に次いで多く,女性の癌による死因の第 2 位となっている。米国癌協会(ACS,ジョージア州アトランタ)では,2001年中に新たに18万2,800人の女性が乳癌と診断され,乳癌による死者は 4 万人を超えると見積もっている。
 外科手術で腫瘍を除去しても,微少すぎて確認できない腫瘍細胞が残っていて癌の再発につながるかもしれない。手術後に化学療法や生物製剤投与を行うのは,こうした腫瘍細胞の根絶が目的である。
 グリーンバウム癌センターでは今後,(1)トラスツズマブ投与に,薬物療法との並行投与と事後投与とで差異があるかどうか,(2)トラスツズマブの皮下注と静注との効果の比較,(3)過去の研究で指摘されているZinecardによる心臓への副作用の発現および程度の軽減に役立つかどうか−も評価することにしている。
 乳癌が腋窩リンパ節に転移した患者では,術後10年以内に他の部位で癌が再発する可能性が高いため,この種の乳癌治療に対する関心が高まることは重要である。
キーワード 【トラスツズマブ 国際臨床試験】

[2002年2月14日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.7 p.02)

生涯にわたる身体活動が乳癌リスクを減少

〔カナダ・カルガリー〕 アルバータ大学(エドモントン)体育・レクリエーション学部のKerry Courneya教授らは,生涯にわたる身体活動は乳癌リスクを減少させる可能性があるとの研究結果をMedicine and Science in Sports and Exercise(33:1538-1545,2001)に発表した。この論文の共著者である同教授は「この研究運動で乳癌リスクが減少することを示した先行研究を確認するものだが,生涯にわたる活動に注目した最初の研究でもある。また,職業上の活動とレクリエーションの活動を結合した最初の研究でもあり,さらに活動の強度と期間に注目した最初の研究でもあるため,大変興味深い」と述べた。

中等度の活動が大きく貢献

 Courneya教授は,アルバータ癌評議会のChristine Friedenreich,Heather Bryantの両博士とともに,最近乳癌と診断された1,200例を超える女性を,癌に罹患していない同数の女性と比較し,2 群のライフスタイルの差に注目した。この論文は,一連の 3 部作の研究の 2 番目に当たる。
 Courneya教授らは,参加者が生涯にわたる身体活動に関する古い記憶を呼び起こすのを助けるために回想カレンダーという手法を用いた。その手法とは,「あなたが結婚したときのことを思い出してください。どのような種類の活動をしていましたか,あるいはどこで働いていましたか」とか,「あなたの 2 番目の子供が生まれたときのことを思い出してください。かかわっていたとすれば,どのようなスポーツにかかわっていましたか」と尋ねることである。同教授によると,この認識にかかわるインタビュー技術は,参加者が人生の重大な出来事に注意を向け,実際にいろいろなことを思い出すのに役立つ。
 同教授らは,“最大”の乳癌リスク低下が中等度の強度の職業上の活動と関連しており,また,“ある程度”のリスク減少も中等度の強度の家事の活動に起因することをはっきりと見出した。
 同教授は「活発な活動はリスク低下をもたらさなかったが,おそらくそれは,活発な活動がほとんど報告されなかったからであろう。しかし,活動の強度は,この対象において観察された乳癌リスク低下の重要な要因ではなかった。また,総合的な活動の頻度と期間は,リスク低下のための重要な決定要因だった」と述べた。
 同教授らによると,北米では,身体活動の源としての職業上の活動が,機械化が進むとともに減少しているため,乳癌リスクに対する職業上の活動の影響は,これからの世代の女性ではこの研究に含まれる80歳までの女性群より弱くなるかもしれない。
 職業上の活動と家事の活動におけるエネルギー消費の減少は今後も続くと見られるため,リスクにさらされている人々は,それらを補うようにレクリエーションの活動レベルを増加させるようにすべきだろう。
 同教授は「われわれは,運動する女性の乳癌リスク減少に関する多くの研究を蓄積し始めており,また,これまでの研究は,それを裏づけている」と述べた。
キーワード 【生涯にわたる身体活動と乳癌リスク】

[2002年2月28日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.9 p.16)

閉経女性の進行乳癌治療に有望なFaslodex

〔ポルトガル・リスボン〕 クリスティー病院(英マンチェスター)腫瘍学のAnthony Howell教授らは,新しい乳癌治療薬Faslodex®(ICI 182,780)と主要なアロマターゼ阻害薬アナストロゾールとの結合データ分析の結果を公表し,少なくとも進行乳癌の 2 次的治療としてFaslodexにアナストロゾールと同等の効果があると述べた。同薬での治療は,現行のホルモン療法で効果が得られなかったり治療抵抗性を示す患者にとっての新しい選択肢として期待が寄せられている。

効果はアナストロゾールと同等以上

 今回のデータは,同様の設定で実施された 2 件の研究の成果を,あらかじめ定められた基準で分析したもの。これらの研究では,他の内分泌療法で癌の進行が見られた閉経女性患者を対象に, Faslodex(250mg/月)の筋注とアナストロゾール( 1 mg/日)経口投与とを比較している。
 結合分析のデータは 2 件合わせて851例で,フォローアップ期間の中央値は15.1か月。アナストロゾール治療では病勢進行までの期間の中央値が4.1か月であったのに対し,Faslodexでは5.4か月であった。
 奏効(著効+有効+24週間以上の病状安定)率はFaslodex治療群は43.5%で,アナストロゾール治療群では40.9%であった。
 両薬の奏効率に統計学的な有意差はないが,有効性エンドポイント分析ではすべてFaslodexのほうが優れていた。いずれの治療群でも副作用による中止は少数だった(Faslodexで2.8%,アナストロゾールで1.9%)。また,両薬とも患者の耐容性は高く,QOLの維持は同等であった。

現行薬と異なる作用機序

 Faslodexはエストロゲン受容体阻害薬の一種で,乳癌治療薬としては最新のもの。その作用機序は他のホルモン依存性乳癌治療薬とは異なる特有なもので,乳癌細胞のエストロゲン受容体に結合し,その結果,エストロゲン受容体を退化・消失させる。
 現行の治療では,腫瘍の成長・増殖がエストロゲン依存性である進行乳癌の閉経女性患者に対し,タモキシフェンなど癌細胞のエストロゲン受容体を遮断する薬剤か,アナストロゾールなど患者のエストロゲン生成を抑制し腫瘍へのホルモン供給を遮断するアロマターゼ阻害薬などが投与されている。しかし,時間が経過するにつれ乳癌細胞がこうした治療に抵抗性を有するようになり,癌進行の恐れがある。Faslodexは現行のホルモン療法に抵抗性となった癌細胞を新規の方法で攻撃するもので,投与法も異なり,月単位の筋注投与であるためコンプライアンスが良好である。
 Howell教授は「研究成果は非常に有望で,将来的にFaslodexが優れた治療薬になることが見込まれる。同薬は現行の治療法とは異なる特有の作用を有しており,進行乳癌患者やその家族にとっては,タモキシフェンで効果が見られなかったり治療抵抗性を示した場合の治療として確実な進歩である」と述べた。
キーワード 【乳癌治療薬Faslodex®

[2002年3月7日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.10 p.02)

〜改良搾乳器による細胞検査〜
非侵襲的に乳癌リスクを予測

〔サンフランシスコ〕 医師の診察室で行うことができる簡便な非侵襲的方法が,乳癌のリスクが高い患者を予測する助けとなることが示された。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF,サンフランシスコ)疫学・生物統計学のMargaret R. Wrensch博士らが,搾乳器を改良した装置で採取した乳汁中の細胞の異常を検査することが有効であることを示した。今回の知見はJournal of National Cancer Institute(93:1791-1798,2001)に掲載された。

7,000例以上を追跡調査

 UCSFでは,1970年代の初めから乳首を吸引して乳汁を採取することが行われていた。72〜80年に行われた初期の試験では乳汁を採取するためにこの方法が用いられ,サンフランシスコ湾周辺の授乳中でない女性4,046例から得た乳汁を分析・分類し,91年までかけて乳癌を発症するかどうかを調べた。以前の試験の結果では,乳汁に異常細胞が認められる女性は乳癌を発症しやすいことが示されている。
 今回の研究でWrensch博士らは,以前の試験グループの追跡調査を拡大し,1981〜91年にかけて3,271例の参加者からなる第 2 群についても試験を行った。両群について99年まで追跡調査を行い,その後乳癌を発症した女性を同定した。
 以前の研究と一致していたのは,乳腺から乳汁が採取できない女性もあり,乳汁に正常細胞が含まれている女性の乳癌罹患率は乳汁が採取できなかった女性に比べて30%高かったことであった。
 さらに,乳汁中の細胞分析からより詳しいリスク評価が可能になった。乳汁中に異常細胞が含まれていた女性の乳癌罹患率は乳汁が採取できなかった女性の 2 倍で,乳汁中に正常細胞しか含まれない女性より60%高かった。
 同博士によると,簡単な搾乳器を用いて検体を採取することの大きな利点は,この方法が非侵襲的でリスクが非常に少ないか,全くないことであるという。
 同博士は「今回の研究で行った細胞学的検査よりも簡単な検査で検出できる他の腫瘍マーカーや悪化する前の細胞のマーカーを見つけるためには,さらに研究が必要だ。今後の研究によって,女性の乳癌リスクについてより特異的な情報を得ることができるだろう。現在,他の方法やマーカーも発見されつつあり,今回の知見はこの単純な方法を利用する医師と研究者の数を増やすことになるだろう」と述べた。
キーワード 【改良搾乳器による細胞検査】

[2002年3月7日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.10 p.13)

乳管洗浄で異型細胞を同定
乳癌リスクの指標に有望

〔米オクラホマ州オクラホマシティ〕 オクラホマ大学(オクラホマシティ)乳腺研究所内科部長のWilliam C. Dooley博士らは,乳管から異常細胞を採取して,乳癌発症リスクが上昇していることを同定する手技を,Journal of the National Cancer Institute(93:1624-1632,2001)に発表した。
( 2 ページに関連記事)

低侵襲かつ高い信頼性

 今回の研究で,乳管洗浄により参加者の24%に異常細胞が認められた。参加者は乳癌高リスク患者であるが,過去12か月以内に実施した乳房撮影や臨床検査で「正常」と診断されていた。Dooley博士は「異常細胞つまり異型細胞が女性の乳癌リスクを 4 〜 5 倍増大させていることは既に周知の事実で,そのリスクは乳癌の家族歴を有する女性ではさらに高くなる」としたうえで,「問題は異型細胞を検出することにあったが,乳管洗浄という低侵襲でより信頼性の高い検出方法を用いることが可能になった」と述べた。
 乳管洗浄は乳管に極細のカテーテルを挿入して行う。乳癌のほとんどは乳管から発生するため,乳管に生理食塩液を勢いよく注入して細胞の標本を採取する。採取した標本はリスクを増大させる異型細胞であるかどうかを検査室で解析する。定期的にこの手技を繰り返すと,細胞の変化を経時的にフォローできる。

細胞レベルの変化を示す

 今回の前向き多施設研究には,米国と欧州の19施設から高リスク女性507例を登録した。参加者は,(1) 5 年間Gailリスクが1.7%以上(2)乳癌の既往(3)BRCA1/BRCA2突然変異が陽性−のいずれかに該当している。
 Dooley博士らは,乳管洗浄により,主治医と患者は,リスク軽減のための積極介入が適切か否かを決定するためのより多くの情報を得ることができると結論した。
 同博士は「もし自分が乳癌の高リスク者なら,入手可能な情報はすべて手に入れたい。今回の研究で,乳管洗浄は乳房内での細胞レベルの変化を示すという,新しくかつ重要な情報をさらに提供できることが示唆された」と述べた。
 低侵襲で乳腺細胞を採取できるほかの技術としては,乳頭を小さな吸引カップで覆い,微量の液状小滴を収集して評価する乳頭吸引があるが,今回の研究では,乳管洗浄は乳頭吸引に比べ異型細胞の検出頻度が3.2倍高いことが示された。

乳管洗浄は痛くない

 乳管洗浄は乳頭吸引に比べ,採取できる細胞の数が多かった。分析可能な量を満たしたのは,乳頭吸引では採取した標本のわずか27%であったのに対して,乳管洗浄標本では78%だった。
 Dooley博士らは,乳管洗浄を受けたときの感覚についても検討し,参加者に洗浄を受けた後,感じた痛みを 1 (無痛)から100(きわめてひどい痛み)のスコアを付けさせた。その結果,中央値は24で,乳管洗浄は痛くないと感じたことになる。
 同博士は「乳管洗浄によって乳管内へアクセスが可能となり,乳癌リスクの評価に新しい道が開かれた」と述べ,「この方法はリスク上昇の細胞学的根拠を検出できるだけでなく,高リスク女性が乳房撮影や臨床検査,自己診断と併用し,その後の監視手段の 1 つとして用いることができる」と締めくくった。
キーワード 【乳管洗浄 異型細胞同定】

[2002年3月14日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.11 p.20)

予防的乳房切除術 BRCA1,2の変異遺伝子キャリアの乳癌リスクを低減

〔米ミネソタ州ロチェスター〕 メイヨー・クリニック(ロチェスター)内科腫瘍学のLynn Hartmann博士らは,BRCA1およびBRCA2乳癌感受性遺伝子の変異体キャリア女性は,両乳房の予防的切除により後に発生する乳癌リスクを89.5〜100%低減したとJournal of the National Cancer Institute(93:1633-1637,2001)に発表した。

26例の高リスク女性を追跡

 Hartmann博士らは,変異したBRCA1およびBRCA2乳癌感受性遺伝子を持つことが確認された26例の高リスクの女性を追跡した。対象となった女性は全員,過去に乳房切除術を受けていた。これまでのフォローアップ期間(平均13.4年)中に,だれも乳癌を発症していない。
 筆頭著者の同博士は「計算によると,予防的外科手術を施行していなければ,キャリア群のうちの 6 〜 9 例に乳癌が発症すると予測されていた」と言う。
 今回の試験は,メイヨー・クリニックで進行中の予防的乳房切除術およびその後起こりうる乳癌リスクに関する試験のなかでは,最新のものである。当初の試験群には,過去に予防的乳房切除術を受け,強い乳癌の家族歴のある214例の女性が含まれていた。この外科手術群の女性を,同術を受けていない姉妹と比較した。試験の結果は,予防的乳房切除術によってのちに起こりうる乳癌のリスクを約90%低減したことを示すものであった。
 今回の試験において,各治験担当医師はこのハイリスクの女性の基本的なBRCA1およびBRCA2のステータスを決定しようと試みた。血液サンプルは214例中176例から入手した。うち26例は,変異したBRCA1とBRCA2遺伝子を持つことが確認され,今回の試験の被験者となった。
 同博士は「これまでの試験でも,強い家族歴を理由に予防的乳房切除術を行うことにより,のちに起こりうる乳癌のリスクを大幅に低減させることがわかっていたが,疑問が 1 つあった。予防的乳房切除術は,最も高いリスク群,すなわちBRCA1およびBRCA2キャリアのリスクを低減することができるかどうかということである。われわれの今回のデータは,比較的小さなキャリア群だが,低減が可能なことを裏づけている」と述べた。
 同博士によると,今回のデータは昨年発表されたフォローアップ期間は比較的短かったが,予防的乳房切除術を受けたより多数のキャリアに対してよく似たリスク低減を示したオランダの試験を補足するものである。
キーワード 【予防的乳房切除術】

[2002年4月11日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.15 p.16)

進行性乳癌のリスクファクター
非浸潤性乳癌にも適用できる

〔米コネティカット州ニューヘブン〕 エール大学(ニューヘブン)疫学および公衆衛生学のElizabeth Claus准教授は「進行性乳癌のリスクファクターの多くは,非浸潤性乳癌として知られる早期乳癌にも適用できる」とする初の大規模試験の結果をJournal of the National Cancer Institute(93:1811-1817,2001)に発表した。

5例中1例が非浸潤性

 Claus准教授は「主としてスクリーニングで乳房撮影が行われるようになったことにより,非浸潤性乳癌と診断される女性の数は過去10年間に著しく増大している。乳癌と診断された女性の 5 例に 1 例は,この形態の疾患に罹患している」と述べた。
 同准教授らの研究では,進行性乳癌のリスクファクターの多くは非浸潤性乳癌のリスクファクターでもあり,それらには,乳癌の家族歴,過去の乳房生検,満期分娩回数が少ないこと,閉経時の年齢が高いことなどがあることがわかったが,経口避妊薬またはホルモン補充療法の利用や,飲酒歴または喫煙歴に伴うリスクの増大は認められなかった。なお,非浸潤性乳癌と診断された女性はこうした疾患に罹患していない女性に比べて乳房撮影または年に一度の乳癌検査を受けている比率は高いが,乳房自己診断を行っている比率は高くないことが示された。
 同准教授は「この研究から,非浸潤性乳癌のリスクファクターの多くは,その性質および強度が侵襲性乳癌のリスクファクターと類似しているという証拠が提示されたことから,一部の非浸潤性乳癌は侵襲性乳癌に至る過程の一部である可能性が示唆される。これらのデータは,今のところ,あらゆる年齢層やタイプの病理を網羅した非浸潤性乳癌の疫学についての最大規模の検討課題となっている」と述べた。
 早期癌または潜在的な前駆癌を検討したこのような研究は,リスクファクターに曝露されてすぐに実施されているという点で有用である。
 この 5 年間の試験では,コネティカット州に居住し,早期乳癌と診断された20〜79歳の約1,000例の女性が対象で,ほぼ同数の乳癌未罹患女性を対照群とした。

5年間の追跡調査研究を予定

 Claus准教授らの研究グループは,米国立癌研究所(NCI,メリーランド州ベセズダ)から300万ドルの助成を受けて,さらに 5 年間にわたり全被験女性の追跡調査を行う予定。この新しい研究では2,000例の被験者に対し,アウトカムおよびライフスタイルの双方についてのデータを集めることにしている。さらに,非浸潤性乳癌の診断を受けた女性に対しては,遺伝相談と合わせてBRCA1およびBRCA2の 2 種類の乳癌感受性遺伝子の突然変異の状態の検査を申し入れる予定である。
 同准教授らは,これらのデータを用いることにより,早期発症乳癌女性では一部は進行性乳癌を発症するのに,一部は進行性乳癌とはならない理由を解明することができるのではないかと期待している。
キーワード 【進行性乳癌 リスクファクター応用】

[2002年5月2,9日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.18,19 p.01)

太陽光は皮膚以外の癌を減らす

〔米バージニア州ニューポートニューズ〕 メラノーマなどの皮膚癌リスクがあるという理由から,過剰な太陽光に曝露しないようにとの警告がなされてきたが,医師はこうした警告を再考しなければならないかもしれない。当地のWilliam Grant博士は,強力な統計学的手法を用いて「逆に太陽光が不足すると他のタイプの癌リスクが高まる」とCancer(94:1867-1875)に発表した。

膀胱癌,乳癌などの死亡率が2倍に

 Grant博士は,1970〜94年に中波長紫外線(UVB)の被曝量に基づき,米国内の500地域について癌による死亡率を比較した。
 その結果,白人では太陽光被曝量の多い南部諸州に比べて,北部のニューイングランド各州で膀胱癌,乳癌,大腸癌,子宮癌,卵巣癌,食道癌,直腸癌および胃癌による死亡率がほぼ 2 倍になることがわかった。
 さらに詳細な解析から,米国内各地の癌発生率は,他の既知要因で補正しても,居住者が被曝するUVB量と負の相関関係にあることが示された。
 統計値からは,約12種類の異なるタイプの癌に対する2002年の予想発症例128万5,000例のうち約 8 万5,000例,さらに予想死亡例55万5,000例のうち 3 万例は,米国内の一部地域でのUVB被曝量が少ないことによって生ずることが示された。
 さらに,20万4,000例の乳癌のうち 3 万5,000例,49万例の乳癌死亡例のうち7,000例は,UV B被曝量の不足に関連するものと推定された。
 同博士は「これに対し,同量のUVBによるメラノーマによる死亡増加数は3,000例と思われる」と述べた。
 皮膚癌症例を増やすことなく,UVB被曝量を増大させる方法があるのかについて,同博士は「UVBは癌のリスクを軽減させる25-ヒドロキシビタミンD3の産生を促すことによって保護作用を発揮することから,ビタミンD3によって可能になるかもしれない」と述べている。
 しかし,ビタミンD3の補給が太陽光の被曝と同様の効果をもたらすかどうかや,抗癌作用を得るためにはどの程度の量が必要であるかについてはわかっていない。
キーワード 【太陽光は皮膚以外の癌を減らす】

[2002年5月16日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.20 p.02)

乳癌長期無病生存者のQOLは良好

〔ロサンゼルス〕 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)ジョンソン総合癌センター(ロサンゼルス)のPatricia A. Ganz博士らは,初回治療後,長期の無病期間を経た乳癌患者は良好なQOLを維持している,とJournal of the National Cancer Institute(94:39-49)に発表した。今回の調査は,乳癌治療後のQOLを検討したこれまでで最大規模の前向き調査の 1 つ。アジュバント療法(化学療法かタモキシフェン,あるいはその併用)が長期にわたって身体機能の低下と関連することも明らかにしており,同博士は「患者が全身アジュバント療法を選択する際に,医師がより良い支援を行ううえでこの報告が役立つだろう」としている。

5〜9.5年のQOLに焦点

 女性の乳癌生存者は,すべての女性癌生存者のほぼ半数を占める。これまでの調査では,これらの女性は初回治療終了後,最初の数年間は健康的なQOLを維持することが示されている。しかし,その後どのような状態にあるかを調べた研究はほとんどない。
 Ganz博士らは,前回の横断調査に参加した無再発乳癌女性763例を追跡し,診断 5 〜9.5年後のQOLに焦点を当て再調査した。前回の調査では,診断後最初の 5 年間のQOLを評価した。QOLの評価項目は一般健康状態,身体機能,心の健康の測定など。
 今回の追跡調査では,対象女性は健康状態,身体機能,心の健康がそれぞれ高いレベルにあった。活動度と社会的機能は前回の調査と同レベルだった。また,女性が現在のQOLをどう評価するかについては,自身が受けた社会的サポートが影響するらしいことがわかった。
 今回の追跡調査では,前回に比べてのぼせ,寝汗,腟分泌物,乳房過敏などの頻度が減少していたが,腟乾燥や尿失禁は増加し,性的活動の低下も見られた。同博士らは,これらの臨床症状と性機能障害の増加は軽度であり,正常な加齢変化が関与するのではないかと見ている。

アジュバント療法の長期影響を示唆

 全身アジュバント療法によって,乳癌女性の無病生存率を改善できることを示唆する複数の研究結果が報告されている。Ganz博士らは,QOLに及ぼす全身アジュバント療法の晩期の影響を検討した結果,治療終了後長期間が経過しても,同療法に関連する身体機能に統計学的に有意な低下が見られたと報告している。この結果から,長期間が経過したのちにアジュバント療法の影響が発現することが示唆されるという。
 今回の調査は,対象がワシントンD.C.とロサンゼルスの女性のみに限られ,しかも,調査票回収率が61%にとどまったが,同博士らは「調査結果は,患者と医師がアジュバント療法に関して,より多くの情報をもとに決定を行うのに役立つだろう」と述べている。
キーワード 【乳癌長期無病生存者のQOL】

[2002年5月16日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.20 p.15)

新規乳癌患者の多くがBRCA1/2に変異

〔ニューヨーク〕 新たに乳癌と診断された患者の 5 分の 1 以上は,BR CA1/2の変異を有するリスクが10%以上であることがわかった。

変異リスクは10%以下

 乳癌患者と変異BRCA1/2を発現している患者は,対側乳癌および卵巣癌の発症リスクが高い。このようなリスクは新たに乳癌と診断された患者の治療に影響するかもしれない。
 このような背景に対して,マサチューセッツ総合病院(ボストン)血液学・腫瘍学のMichael V. Seiden博士らは新規に乳癌と診断された患者50例に聞き取り調査を行った。遺伝カウンセラーが家系図の 3 世代にわたって詳細を調査し,3 種類の一般的な確率モデルを用いて,各患者の生殖細胞にBRCA1/2の変異が生じているリスクを推定した。
 確率の計算は大きく異なる 3 種類のモデルを用いて行ったにもかかわらず,22%の患者は使用されたモデルの 1 つ以上でBRCA1/2の変異が生じている確率が10%以上であることが示された。
 このような患者はカウンセリングを受け,遺伝子検査を検討したほうがよいが,遺伝子検査を受けるのに適した患者11例のうち実際に受けたのは 1 例のみであった。
 同博士らは,今回の結果が,多くの診療科を抱える大規模な大学医療センターで診察を受け,新たに乳癌と診断された患者で得られたものであることから,重要であるとしている。
キーワード 【新規乳癌患者 BRCA1/2】

[2002年5月30日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.22 p.02)

高リスク乳癌管理のための乳管洗浄に新ガイドライン

〔米テキサス州ダラス〕 ベイラー大学医療センター(BUMC,ダラス)外科腫瘍学のMichael Grant博士とUS Oncology社乳癌予防のJoyce O'Shaughnessy部長(腫瘍内科学)は,高リスク乳癌の管理を補助する乳管洗浄の使用に関する初のガイドラインをCancer(94:292-298)に発表した。また,この論文では乳癌発症の個人的なリスクに関する生物学的な情報を女性に提供するためのツールとして,乳管細胞診を支持するデータを再検討している。

リスクと恩恵を比較可能

 乳管洗浄は,分析用の乳管細胞を集めるための低侵襲な手技で,通常よりも乳癌発症リスクが高いと考えられる女性に行われる。乳癌の95%以上は乳管系内面の細胞に始まり,多くは正常な細胞として始まるが,結局は悪性となる可能性がある。乳管洗浄は外来での施行が可能で,細い針吸引より侵襲性が低く,さらに多くの女性は乳房撮影より不快でないと報告している。
 医師と患者は,より綿密なサーベイランス,ホルモン補充療法,タモキシフェンを用いる抗エストロゲン療法,また非常にリスクの高い女性には,予防的乳房切除術までを考慮し,さまざまな管理選択肢のリスクと恩恵を比較検討するため,乳管洗浄から得られる結果を用いることになる。

普遍的なものではない

 O'Shaughnessy博士は「乳管洗浄を支持するデータは,それが乳癌発症に関する患者のリスクについて個別化された情報を女性に提供する効果的なツールであることを示している。2000年末に商業的に導入されて以来,乳管洗浄はかなり採用されてきたので,高リスク患者においてリスクを減らす管理戦略を指導するため,臨床医には乳管細胞診の解釈と使用に関するガイドラインが必要であった。今回のガイドラインは,そのために作成された」と述べた。
 乳管洗浄は,乳癌発症リスクが高い女性をさらに評価するのに役立つであろう唯一のツールである。しかし,Grant博士は「現状では,どのツールもリスクを減らす選択肢として女性を指導する普遍的な方法としては使われるべきでないことを示している」と述べた。
キーワード 【乳管洗浄に新ガイドライン】

[2002年5月30日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.22 p.03)

〜早期乳癌〜
ホルモン療法は化学療法より有効

〔スペイン・バルセロナ〕 化学療法とホルモン療法は,ともに早期乳癌の生命予後を改善し,相乗効果のあることが明らかになっているが,ホルモン療法がより有効であるという証拠が出そろいつつある。王立マースデン病院と癌研究所(ともにロンドン)生物化学内分泌学のMitch Dowsett教授は,新しいホルモン療法による癌との戦いの未来は明るい,と当地で開かれた第 3 回欧州乳癌学会で述べた。

投与初期の卵巣刺激が問題

 Dowsett教授は,近年におけるホルモン療法の進歩と分子構造の解明は,これらの治療によって得られる成果を今後数年間でさらに増幅させると見ており,さらに「いずれの治療法も乳癌予防薬としての治験に十分耐えうることを期待している」と付け加えた。
 ほとんどの乳癌細胞は,女性ホルモンのエストロゲンの作用によって増殖していることから,内分泌学的治療として広く用いられているのは,さまざまな形式でエストロゲン受容体陽性乳癌細胞へのエストロゲン刺激を阻害したり取り除く方法である。
 しかし,こういった治療は閉経の前後によって施行するかどうかを決定している。
 閉経前の女性では,ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストは卵巣刺激を阻害するが,欠点として,投与初期には卵巣を一過性に刺激することと,エストロゲン産生を完全に抑制できないことが挙げられる。そこで,この欠点を克服する薬剤の開発が課題となっている。
 同教授は「前立腺癌や体外受精(IVF)に対して,GnRH拮抗薬のantarelix,abarelix,cetrorelixなどを使用することを検討中である。これらの薬剤は投与初期の卵巣刺激作用がなく,短期間に持続的かつ完全に卵巣機能を抑制する。私の知る限り,これらはいずれも乳癌治療には用いられていないが,若年乳癌患者での治療効果が期待されるため,その適応について検討する必要がある」と述べている。
 エストロゲンの産生は,閉経後も卵巣からでなく副腎で生合成されるという形で続いている。これに関与している酵素がアロマターゼであることから,アロマターゼ阻害薬は高齢女性患者に有効である。
「最近の知見では,新しいアロマターゼ阻害薬がタモキシフェンなどの抗エストロゲン薬より有効であることが示されている。その理由は,最近の第 3 世代のアロマターゼ阻害薬であるアナストロゾール,letrozole(Femara)およびexemestane(Aromasin)などは,ほとんど完全にエストロゲン産生を抑制しうるからである。タモキシフェンは主として乳癌組織において抗エストロゲン作用を示すが,エストロゲンのレベルが非常に低値である場合にはむしろエストロゲン様作用を発揮してしまう」と同教授は説明した。
 実験結果は,既に発表されている同様の臨床データを裏づけており,エストロゲン枯渇療法とタモキシフェン治療の効果の違いは,乳癌のおよそ25%に発現するヒト上皮増殖因子受容体 2 型(HER2)や乳癌の20%に発現する上皮増殖因子受容体(EG FR)を発現している乳癌において,より鮮明であるという。
 同教授は「これは,乳癌組織でエストロゲン作用を示さない抗エストロゲン薬を開発する必要があることを意味しており,現在,進行性の乳癌において治験が行われている,純粋な抗エストロゲン作用を持つICI 182780(Faslodex)の存在意義が,理論的に証明されることになる」と付け加えた。

タモキシフェンは引き続き必要

 しかし,タモキシフェンの重要性が薄れるわけではなく,また,アロマターゼ阻害薬が閉経後女性患者に対する第一選択薬になるというわけでもない。おそらく化学療法薬ないしは新しい抗体,例えばトラスツズマブなどと併用されることになるだろう。こういった併用療法については,既に研究が開始されている。
 GnRHやゴナドトロピン放出ホルモンは,ゴナドトロピンである卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体刺激ホルモン(LH)などの下垂体ホルモン,胎盤で産生されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)などの合成をコントロールする。月経周期のなかで,下垂体ホルモンの産生は調節されており,それによって卵胞の成長や分化,卵巣におけるステロイド産生が調整されている。
キーワード 【早期乳癌 ホルモン療法>化学療法】

[2002年5月30日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.22 p.32)

乳癌治療に対する外科医の説明は不十分
ノルウェーの医師・患者アンケート調査結果から

〔スペイン・バルセロナ〕 ウレバル大学病院(ノルウェー・オスロ)看護学のInger Schou Bredal氏らが行った調査によると,乳腺外科医は乳房切除術(MAS)か乳房温存術(BCS)かの選択を,必ずしも初期の乳癌患者自身に行わせていないという。当地で開かれた第 3 回欧州乳癌会議で,同氏は「治療選択肢の提示についての認識は,患者と外科医では明らかに異なる。また,外科医の性別も認識の違いを生み,女性外科医は患者の安全性に対する要求を考慮して治療の勧告内容を決めるのに対し,男性外科医は乳房が女性らしさを保つのに重要であることを考慮したうえで決める」と発表した。

選択肢提示に関して両者にずれ

 Bredal氏は,ウレバル大学病院で194例の初期乳癌患者と25人の外科医を対象にアンケート調査を行った。その目的は,MASとBCSの選択肢を提示される患者の認識と,提示する外科医の認識が一致するかどうかを調べることと,患者の手術の選択に影響する要因と外科医の勧告に影響を与える要因が同じかどうかを評価することであった。その結果,外科医は81%の患者に選択肢を提示することが医学的に適切と考えたが,実際は62%の患者にしか選択肢を提示していなかった。一方,患者の59%がどちらかの選択肢を提示されたと感じていた。選択肢を提示したという外科医の評価と提示されたという患者の評価が完全に一致していたのは,38%の患者だけであった。
 手術選択に最も影響を与える要因は,患者では再発に対する恐怖(89%),術後治療の必要性(72%),外科医の勧告(70%)であった。一方,外科医では医学的評価(97%)が最も重要な要因で,次いで外科的アウトカムにおける乳房の外見(82%)であった。患者は特定の勧告を受けなかった場合,BCSを選ぶ傾向(66%)にあった。
 同氏は「この調査から,患者の手術の選択に影響を与える要因と,外科医の勧告に影響する要因が同じでないことは明らかである。しかし,患者の手術法を決定するプロセスに最も影響を与える人物は外科医である。ほとんどの患者(91%)は,外科医が勧める手術法に従う。従わないのは,癌の再発を恐れてBCSではなくMASを選ぶ場合である」と述べた。

4段階で評価

 今回の調査では,選択肢を提示しない理由を外科医に尋ねなかった。Bredal氏は「外科医がなぜ選択肢を提示しないのか,外科医が勧告をする際にその理由となる要因になぜ重点を置くのかを調べたいと思っている」と述べた。
 しかし,選択肢を提示しないケースについて,同氏は「乳癌専門看護師としての経験から,外科医は患者が手術の選択をしたくないと思っていると判断しているのか,あるいは術後のつらい治療(BCSは術後放射線治療を行う)に耐えられないと判断してMASに決定するのであろう」と示唆。BCSを受けた患者はMASを受けた患者よりも手術の選択肢を提示されることが多いことから,今回の研究はこの可能性を支持している。
 MASを勧める外科医は,患者がBCSを選択しても,術後の美容的なアウトカムが期待ほどではないと感じているためなのかもしれない。また,一部の外科医は,患者の医学知識が不十分なため,あるいは選択可能なすべての治療法について十分に概要を説明し話し合う時間がないため,患者が情報を与えられても完全にはその情報を理解できないと考えているようである。外科医は多過ぎる情報を患者と共有することにより,患者に治療決定の責任を取らせることにジレンマを感じている。
 患者と外科医の選択肢の提示に対する認識において,完全な一致は38%しかなかったことについて,同氏は「アンケートでは“全くなし”から“非常に多い”までの 4 段階による評価を用いたため,“選択肢を提示された”に関して患者は“少し”を選択し,一方,外科医は“選択肢を提示した”に関して“多い”を選択したために一致率が低かったのかもしれない。その低い割合は,おもに両者の同じ事象に対する認識の仕方の違いを示している」と述べた。

決断に参加したくない患者も

 また,この研究はすべての患者が治療法の選択の決断に参加したいと思っているとは限らないことを示している。Bredal氏は「この発見は,決断への積極的な参加が促されている現在のノルウェーの医療提供の風土において,興味深いものである」とし,「われわれはまた,年齢や教育といった人口統計学的変数が,患者の治療法選択参加意思に影響を与えないことを発見した。このことは,医療専門家が患者をステレオタイプに捉えないように注意すべきであり,決断に参加する意思があるかどうかについて個々の患者を評価するプロセスを系統立てるべきであることを提起するものである」と述べた。
 この調査は,患者が治療法を選択するのに適切な情報を与えられることがいかに重要であり,その情報を理解したかどうかを追跡調査することの必要性を証明した。そのため,同氏らの病院では,乳癌と診断されたすべての患者に,乳癌専門看護師が面接することを決定したという。「外科医の性別が患者への勧告に影響するという知見は,乳癌治療の予想以上に主観的な性質を強調するものである」と同氏は続ける。
「ここで重要なのは,外科医がこの事実を認識すべきことであり,さらに勧告を行う前に患者個々人のニーズに対する評価を試みるべきである。女性外科医は,患者に対してより強い共感を持つため,より多くの女性外科医を採用すべきであると言えるだろう。しかし,男性外科医を好む患者もいるため,これは簡単な問題ではない」
 同氏は「この調査は,まだわれわれの病院で発表されていないが,今回の知見について院内の同僚の外科医数人と話をしたところ,彼らは外科医の性別が勧告に影響していることには気付いておらず,また,すべての患者が手術法の決定に参加したいわけではないという調査結果を,興味深いものであると考えている。すべての患者に専門家との十分な相談が必要で,そのために乳癌専門看護師とコンタクトを取る機会を与えられるべきであるということに彼らは同意した」と付け加えた。
キーワード 【乳癌治療 外科医の説明】

[2002年6月6日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.23 p.02)

Raloxifeneに高エストロゲンレベルの閉経女性の乳癌予防効果も

〔サンフランシスコ〕 カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF,サンフランシスコ)臨床研究プログラム部長で,内科学疫学および生物統計学のSteven R. Cummings教授らは,米国で多用されている骨粗鬆症治療薬raloxifeneが,高エストロゲンレベルの閉経女性では乳癌発症率を75%減少させたが,低レベル女性では効果はなかったとする研究を,JAMA(287:216-220)に発表した。

効果はエストロゲンレベルに依存

 乳癌の既往歴を持たない80歳以下の閉経骨粗鬆症女性(7,290例)を対象に,選択的エストロゲン受容体モデュレータ(SERM)であるraloxifene 60mg,120mgまたはプラセボを投与した。エストロゲンのなかで最も力価の高いエストラジオールを検討したところ,エストラジオールレベルの上位 3 分の 1 に当たる乳癌発症リスクが最も高い集団では,raloxifeneのいずれの投与量でも乳癌発生率が減少することが示された。
 Cummings教授らによると,これまでの研究でエストロゲンレベルが高いほど,乳癌発症リスクが増加することがわかっている。乳癌のなかには,エストロゲンに結合する蛋白質を腫瘍細胞上に発現しているものがあり,raloxifeneのような薬剤は,エストロゲンの乳房への作用を妨害する。
 そこで同教授らは,raloxifeneの乳癌予防効果は個々の女性のエストロゲンレベルに依存するという仮説を立てた。乳癌細胞に働くエストロゲンが血中にほとんどない場合,SE RMによる治療を受けるまでもなく,リスクは最初から少ない。

血中エストロゲンを治療前に測定

 Cummings教授らは「閉経期女性のエストラジオールレベルを測定し,高値の場合は,raloxifeneによって乳癌の発生率は低下する」と見込んだ。同教授らはその仮説を確かめるために,raloxifeneの製造元であるEli Lilly社の助成を受けて行われたraloxifene評価の複数結果(MORE)研究として集積されたデータを再検討した。
 MORE研究は,raloxifeneによる骨粗鬆症女性の脊椎骨折リスク軽減効果を確かめるためにデザインされた。世界177地域7,705例の女性が登録され,そのうち7,290例について研究開始時にエストラジオールを測定し,その後 4 年間にわたり乳癌発生率を追跡調査した。「この研究で用いられた高感度の検査は,いまだ広く臨床的に用いられていないものである」と同教授は述べた。SciCor(Covance)社のCentral Laboratory Servicesが,その鋭敏な方法を用いて,すべての血液検査を担当した。
 さらに,同教授は「raloxifene治療に際して,乳癌発生率の軽減を最も期待できる女性を同定するのにエストロゲンの測定は有益である。しかし,高感度エストロゲン測定法が治療法の決定に今後用いられるなら,測定法の標準化が重要となる」と述べた。
 現時点で,raloxifeneは骨粗鬆症の治療目的に処方されているが,乳癌予防目的では米食品医薬品局(FDA)の認可は受けていない。骨粗鬆症は骨密度が減少する疾患で,50歳以上の米国人女性の23%が罹患している。乳癌は米国女性に見られる悪性腫瘍のなかで最も多く,加齢によりリスクは高まり,50歳までは54分の 1 であるが,60歳までには23分の 1 となる。
キーワード 【Raloxifene 閉経女性の乳癌予防効果】

[2002年6月20日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.25 p.03)

乳癌 外科的摘除前の化学療法で好結果

〔独ウィースバーデン〕 乳癌が潰瘍性になって初めて受診した女性看護師(42歳)は,新化学療法により癌をいったん縮小させることで摘除術が可能になった。

10か月間否定し続ける

 この看護師が,ドクトルホルストシュミット病院(ウィースバーデン)の乳腺科外来を初めて受診したときには,左胸の乳癌が16×13cm大と突出しており,潰瘍が形成されていた。この看護師は10か月ほど前から胸の異常に気付いており,乳癌ではないかと考えていたが,この考えを打ち消してきた。しかし,パートナーとの間が気まずくなり,職場にも負担をかけることを想像して,精神的にかなり動揺していた。しかも病変が増大し,悪臭もしてきたため,受診を決意した。
 腫瘍は左胸の中央部から右方向に向けて胸骨にまで達しており,左胸の内側下部全体に病変が及び,大胸筋が浸潤されていた。左腋窩には,約2.5cm大の数個のリンパ節が触れた。左胸の超音波検査では,内側下部に直径約10cmで,境界が比較的滑らかな低信号の空間占拠領域が描出され,それは潰瘍性の皮膚領域と連なっていた。左腋窩部には,約30×18mm大のリンパ節が 2 個描出された。カラードプラ法では,これらのリンパ節において灌流が明らかに亢進していた。腫瘍サイズから考えて,左胸のマンモグラフィは実施不可能であったが,健側のマンモグラフィに異常は認められなかった。
 病変部の生検によって,組織病理診断が確定した。また,肝超音波検査,胸部単純X線撮影,胸部CT検査,骨シンチグラフィなどからM0と判定されたが,大胸筋浸潤の疑いがあった。以上の検査結果から,低分化度で導管タイプの乳癌と術前診断がなされた(T4b,N+,M0,G3,ER−,PR−)。
 このようなステージの乳癌に対して,大規模な回旋皮弁形成術を行う以外に,最初から手術的摘除を行うことは不可能であったため,第 1 段階として,エピルビシンとシクロホスファミドの新化学療法を実施した。第 1 クールで腫瘍サイズは大幅に縮小した。重感染による腫瘍壊死のため,壊死の除去と創洗浄が必要になったが,保存療法により目的を達成することができた。

再建術は希望せず

 合計 4 クールの治療を終えると,左胸内側下部の潰瘍の大きさが 4 ×2.5cmに縮小した。このような状態のもとで,乳房切除,大胸筋の部分的切除,腋窩郭清などを問題なく行うことができ,組織所見も正常化した。術後にも同様に,低分化度で導管タイプの乳癌と診断された。術後には,パクリタキセルの化学療法 4 クールと,左胸壁ならびに輸出リンパ管に対する照射療法を実施した。乳房の再建は可能であったが,患者は希望しなかった。このケースは,悪性疾患に侵されると,それを打ち消そうとする心が働くことを示すと同時に,進行した癌でも,新化学療法を実施すれば,外科的摘除が可能になることも示している。
キーワード 【外科的摘除前の化学療法】

[2002年6月20日]
(Medical Tribune VOL.35 NO.25 p.24)

転移性乳癌マーカーとしてRhoC蛋白が有望

〔米サンフランシスコ〕ミシガン大学(ミシガン州アナーバー)病理学のCelina Kleer助教授は,乳房の腫瘍に見られるRhoC(正式名RhoC-GTPase)蛋白質をマーカーとして検出すれば,転移前に悪性乳癌を発見し,積極治療が必要かどうか判定することができるかもしれないと米国癌研究協会で発表した。

早期癌の発見に有効か

 Kleer助教授によると,RhoC検出テストが実際に臨床試験に応用されるのは1年以上先となるが,これまでの研究から,RhoC蛋白は転移の可能性が非常に高い乳癌のマーカーとして有望であり,直径1cm以下の腫瘍においてさえ転移の可能性を同定するという。
 ミシガン大学内科のSofia Merajver准教授が率いる同大学総合癌センター研究チームは,RhoC遺伝子に関する同チームの過去の研究に基づいてRhoC検査法を開発し,同大学の乳癌ライブラリに収められた組織サンプル182検体を使って検査の有効性を証明した。
 このRhoC検査では,転移の可能性がある浸潤癌が88%の特異度で検出され,既に転移している微小な癌が92%の特異度で検出された。正常な乳房,良性乳房嚢胞,非浸潤乳癌の組織サンプルでは,RhoCはほとんど存在しなかったと言う。
 同助教授は「RhoCは,現在は同定が難しい微小な転移性の浸潤乳癌を検出する有望なマーカーである。臨床試験を開始するまでにはさらに研究が必要であるが,この検査が,Rho蛋白をターゲットとする薬剤を使った積極治療に弱い早期癌の同定に役立つと考えている」と述べた。

RhoCが転移の原因に

 今回の研究では,さまざまな種類の乳癌細胞で産生されるRhoCの量が調べられ,正常な乳腺細胞と比較された。
 ミシガン大学による過去の研究から,成長や転移の速度が早く致死率が特に高い癌である炎症性乳癌では,RhoC遺伝子が過度に発現していることがわかっている。Kleer助教授らは,これ以外の悪性の乳癌でもRhoC遺伝子が過度に発現しており,癌細胞に多量のRhoC蛋白が発見されるのではないかと考えている。
 RhoCは細胞の内部構造を変え,細胞の分極や移動を可能にする酵素である。この能力は特に筋細胞で重要であり,筋細胞では多量のRhoC蛋白が産生されている。しかし,癌細胞では,RhoCが引き金となって細胞の構造に変化が起きるため,細胞が腫瘍から離れ,血流に入って身体中に運ばれ,転移する能力を得てしまう,と同助教授は指摘する。
 炎症性乳癌とRhoCの相関関係が解明されたことで,これまで肝臓癌,膵臓癌,皮膚癌との関連が示唆されていたRhoC蛋白が,乳癌にも関与していることがミシガン大学研究チームによって初めて明らかにされた。同チームはさらに,マウスの正常な乳腺細胞にRhoC遺伝子を移植すると,正常細胞が転移可能な癌細胞に変化することを証明した。

悪性浸潤癌との相関

 今回の研究では最初にRhoC検査法が開発された後,ミシガン大学蛋白構造研究室からRhoC遺伝子に関する情報提供などの助力を得て,組織サンプルのすべてのRhoC蛋白に結合する性質をもった抗体がつくり出された。抗体を染色して,乳房の腫瘍や周辺部位などさまざまな組織サンプルに集中するRhoC蛋白の濃度が調べられた。
 総合癌センターの乳癌ライブラリからは,ミシガン大学で乳房の生検を受けた患者164例から採取した組織サンプル182検体とともに,患者の病名(癌,あるいは線維嚢胞症など良性の乳房の疾患)などの情報が提供された。乳癌の組織サンプルには,癌の種類,腫瘍のサイズ,浸潤性(発生した細胞の層を超えて健康な組織に広がる性質)の有無,病期,転移の有無について詳細な情報が添えられていた。
 Kleer助教授によると,癌サンプルには非浸潤性乳管癌(DICI)から,リンパ節や身体の他の臓器に転移したステージ「の浸潤性乳管癌まで,あらゆる種類の癌細胞が含まれていたと言う。幅広い種類のサンプルを使用することで,異なるサイズ,病期,種類,浸潤性レベルをもった癌の差異を比較することができた。
 染色した抗体を使うと,予想通りRhoCは胸部組織周辺の筋肉細胞と血管細胞に高い濃度で見られることがわかったが,正常な胸部組織には全く観察されなかった。しかし,赤茶色の染料の濃度は癌性組織によって非常に異なっていたと言う。同助教授は最も暗色に染まったサンプルと臨床的特徴を相関させていくうちに,両者の間に関係が存在することを発見した。
 同助教授は「RhoCは浸潤癌のみで見られ,必ずと言って良いほど転移との相関性があった。一方,RhoCを高濃度に含む非転移性癌はほとんど存在しなかった」と指摘し,「進行した乳癌ではRhoCの発現レベルが増加しており,RhoCが悪性度の強い癌のマーカーになることが確かめられた。1cm未満の浸潤性転移癌について十分な数のサンプルを調べた結果,RhoCがこうした腫瘍に非常に特異的に見られることがわかったが,正確を期すためさらに多数のサンプルを調べたい」と付け加えた。
 初期結果を裏づけるため,同チームはさらに多くの乳房サンプルでRhoC検査を行う準備をしているほか,RhoCの検知能力に関する臨床研究を計画している。
 この研究は,米国立衛生研究所(NIH,メリーランド州ベセズダ),米国防総省の乳癌研究プログラム,ミシガン大学総合癌センター・ジョン&スザンヌ・マン寄金からの援助を得て行われた。共同研究者はKenneth van Golen助教授,Zhi-Fen Wu博士,Yanhong Zhang博士,Mark Rubin博士。
キーワード 【転移性乳癌マーカー RhoC蛋白】








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2002-01〜2002-06記事