2000-06〜2000-12記事

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00(Medical Tribuneなどの記事)【はじめに】今まで 一般(どなたでも)参照可能であったMedical Tribuneの記事が2000年9月28日から、メディプロという会員制(ID+パスワードが必要)サイト内に移行してしまいました。
情報公開IT革命という世の中に於て、残念でなりません。そこで乳癌に関連したニュース (一般雑誌より参考になり得る情報)をここにセレクトし、upしました。  尚、ここに転記したり転載したる責任の所在は吉利です。 Medical Tribune誌関連の方、もし転載に問題がございましたら、 webmaster@prodr.com(吉利)までお願いします。

☆(Medical Tribune Vol.31, No.10,)【心理療法で乳癌患者の予後が改善】
米国放射線療法・腫瘍学会の年次集会での研究、スタンフォード大学精神科のDavid Spiegel教授らは、 乳癌患者に心理療法が有用であることを示唆する報告をした。教授らは、1年間の集団心理療法を受けた 転移性乳癌患者と受けなかった症例について、集団心理サポート療法が患者に及ぼす生理的効果を分析し 両群の生存率とクォリティオブライフ因子を比較した。

結果:集団心理療法を受けた症例群は受けなかった症例群と比較し平均して18ヶ月も長く生存した。

注記:このことは、乳癌というホルモンの関係する腫瘍では、心理的なサポートが重要に思われる。 この逆の反論報告は2000-11/5現在報告されていない。故にHANAさんBBSのポリシーが正しいと思う。
Spiegel教授の報告をサポートしている本:HANAさん推薦のこの一冊;ディーン・オーニッシュ著「愛は寿命をのばす - からだを癒すラブ・パワーの実証的研究 - 」 光文社
キーワード 【乳癌・心理的サポート】このDavid Spiegel教授の記事を元に、雑誌より転載しています。

[2000年6月22,29日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.25,26)【乳癌 治療法選択時には患者心理に留意を】
ストレス状態が実験的治療参加のきっかけに
〔ニューヨーク〕 フロリダ大学(フロリダ州ゲインズビル)小児血液腫瘍学・骨髄移植部のPaulette Mehta部長らによると,進行性乳癌患者でパイロット試験データに基づく実験的な試験のすべてに参加することを選択した女性は,苦痛と不安にとらわれている可能性が高いという。

異なる治療法を求める
頭痛に見舞われたときはアスピリンを服用すれば治る。子供がしつこい耳の感染症に侵されたときは抗菌薬が大抵効く。しかし,癌はそんなに単純ではない。癌患者は水晶占いの恩恵に浴することなく生きるか死ぬかに等しい決定を迫られて,何の保証もなしに治療法を選択しなければならないことが多い。そして,従来とは異なる治療法を求める癌患者の数は増えている。放射線療法や化学療法などの標準的な治療法に従う患者がいると同時に,催眠療法や漢方薬,厳密な臨床試験で検討されていない薬剤などの実験的アプローチに頼ろうとする患者もいる。何がこのような行動に駆り立てるのかに関する研究は最近始まったばかりである。

Mehta部長らはこの 2 種類の行動を解明することで,医療における意思決定過程が改善されると考えている。今回の所見は,今まで受け入れられてきた代替医療を求める女性のイメージを否定している。従来,このような女性は自己主張が激しく,心理学的に強く,よく適応していると考えられてきた。

患者は苦痛と不安のとりこ
今回の研究に参加した患者はすべて骨髄移植を受けていたが,現在行われている実験的な試験のすべてに参加することを選択した女性は,苦痛と不安にとらわれている可能性が高かった。すなわち,実験的治療法への参加をたやすく承諾する患者は抑うつ気分に陥っているか,心理学的ストレスを受けていることに医療従事者は注意を払うべきである。
この研究は年齢31〜65歳の乳癌患者42例を対象とし,いずれの患者も高用量化学療法を受け,次いで実験的治療として骨髄移植を受けていた(従来の化学療法より骨髄移植のほうが治療上有効かどうかはまだ証明されていない)。
各患者はQOLと心理学的特徴に関するさまざまな問診を受けた。これらの問診は,骨髄移植を受ける患者の心身医学的健康を評価するために必要とされているものである。次に,移植の成功率を改善する薬剤その他の治療法を試験する 1 〜 3 件の追加実験研究への参加にたやすく同意した患者の60%について調査した。
Mehta部長によると,その結果,追加実験研究への参加に同意した女性は意思決定に影響すると思われる強い心理学上の悩みを抱えていることがわかった。これらの患者は,追加研究への参加に同意しなかった患者と同様の身体能力を有していたにもかかわらず,不安にとらわれ,日常生活が 1 人でできなかった。
患者の意思決定の理由を正確に知るにはさらに研究が必要だが,同部長らは,これらの患者は自らの治療を自らが決定していることを確認したいという思いが強く,また有効な治療法を見つけることに絶望しているのではないか,と推測している。
同部長は,フロリダ大学保健学部臨床心理学のJim Rodrigue氏およびフロリダ大学シャンズ医療センター(シャンズ)骨髄移植プログラムのJohn R. Wingard部長らと共同研究を行っている。
Mehta部長は「これは驚くべきことである。より多くの治療を受けようとする患者は心理的に強く,より高度の教育を受け,知性も優れていると考えられてきたが,実際は苦痛を受けている可能性が高いのである。これは逆説的である。われわれはだれでも臨床試験に参加してもらいたいと考えているが,たやすく参加に同意する人は理性的に選択したのではなく,ストレスから同意していることに注意すべきである。われわれは脱力感や抑うつ,孤独,絶望感を伴って試験に参加する女性がいることを認識すべきである。これらの患者は試験を継続するかもしれないが,心理的なサポートを提供すべきである」と述べた。

患者の動機解明が課題
Mehta部長は今回の研究は小規模で,ちゅうちょせずに実験的治療を試みる患者が存在することの疑問に答えるためにはさらなる研究を要することを認めている。
しかし,伝統的ではない治療法−実験的な臨床試験であれ漢方薬,マッサージ療法,催眠療法などの代替治療法であれ−を追求する患者の動機を正確に知ることは科学上の研究課題となっている。昨年,ダナ・ファーバー癌研究所とハーバード大学(ともにボストン)の研究者がThe New England Journal of Medicineに報告した所見を見てみよう。この研究では新たに初期乳癌と診断された患者480例のうち,伝統的な治療法に加えて心理投影法や鍼治療などの代替療法を追加した患者28%は,そうでない群に比べて,不安や抑うつ気分を有しており,QOLの調査で得点の低い確率が高かったのである。
ハーバード大学の研究と今回の研究では問診の内容に大きな違いがあるが,ともに治療法の選択に及ぼす心理学的因子の影響を重視している。これらの問題をよく理解することで医師は患者が悩んでいることを知り,適切な精神保健カウンセリングを提供し,治療の選択について助言できるようになると思われる。
ハーバード大学の研究の筆頭著者であるダナ・ファーバー癌研究所およびハーバード大学のHarold J. Bur-stein講師は「癌患者を治療する者はすべて,患者が治療法についてどのように決断を下すのかに関心を持っている。癌の治療においては素直に決断が下されることはまれである。患者が実験的治療法に同意するかどうかをどのような心理的,社会的因子から予測できるのであろうか。われわれは乳癌患者であることがどういうものかをよりよく理解し,より優れた治療法が受けられるようにしたいと考えている」と述べた。
キーワード 【治療法選択時と患者心理に関する考】

[2000年7月13日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.28)【〜乳腺密度の高い画像パターン〜】追加スクリーニングが必要
〔ワシントンD.C.〕 ミシガン大学(ミシガン州アナーバー)のM. A. Roubidoux博士は当地で開かれた米国レントゲン学会の第100回集会で,1 年に 1 回の乳房撮影を受診する女性では,これより受診頻度が低い女性に比べると,より小さな癌が検出されることが示された,と発表した。

脂肪密度高いと検出率も高い
Roubidoux博士は,乳癌の予後や検出方法が乳房画像の密度によって異なるかどうかを確認するために,乳房撮影と乳房の理学的検査の所見が陰性で,その後17か月以内に浸潤性乳癌と診断された女性126例を対象とし,その有病率を調査した。

記載内容詳細は割愛します。


同博士は「乳腺密度の高い乳房画像パターンを有する女性には,浸潤性乳癌の早期診断のために追加スクリーニング検査が必要だ」と指摘している。
キーワード 【乳腺密度の高い画像と再検査のこと】

[2000年7月13日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.28)【〜上皮内癌後の浸潤癌発症リスク〜】乳管や乳腺葉の癌で高い
〔スウェーデン・ウプサラ〕 ウプサラ大学病院外科のFredrik Warnberg博士はThe Lancet(355:724-725)で「非浸潤性乳管癌(DCIS)などの初期癌であっても,のちに浸潤性の乳癌を発症するリスクが高い」と報告している。
同博士らは,1980年から92年に掛けてスウェーデンの癌データベースに登録された上皮内癌(CIS)女性患者3,455例について,ケース・コントロールスタディを実施。CIS後に浸潤癌を発症またはそのために死亡したすべての女性と,診断後約 4 年が経過し健診場所が一致している患者(対照群)との比較分析を行った。 その結果,DCISなどでは,のちに浸潤癌を発症するリスクが数倍も高くなり,その大半が対側の乳房に発生していたことが判明した。
キーワード 【上皮内癌後の浸潤癌発症リスク】

[2000年7月13日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.28)【レーザーで乳癌細胞を捕捉しエストロゲン受容体数を定量】
〔サンフランシスコ〕 米国立衛生研究所(NIH,メリーランド州ベセズダ)のArash Malekafzali研究員は当地で開かれた米国癌研究協会(AACR)の年次集会で,個々の乳癌細胞上にあるエストロゲン受容体の数の定量に役立つ新たなレーザー技術を発表した。同研究員は「乳癌の患者におけるtrastuzumab(Herceptin,Genen-tech社)のHer-2/neu受容体抑制効果を評価する臨床試験に,実験的レーザー捕捉顕微解剖(LCM)が採用されている。LCMはまだ実験的な技術だが,実験室の段階では,もう認められるところまで来ている」と述べた。

薬効評価に有用だが感度に疑問
Malekafzali研究員は「訓練を受けた技術者は,15分間で約500個のサンプルを採取できる」と述べた。レーザーを 1 回照射するたびに,不均一な組織断片から 5 〜 6 個の細胞が捕捉され,これらの細胞が表面へ移される。サンプルを染色したのち, 3 段階の処理で細胞の個々の層を同定し,以降の解析のために切除する。次に,酵素標識免疫吸着試験(ELISA)を使用して細胞上の受容体数を測定する。
同研究員は「私のHer-2/neu定量は,標準の免疫組織化学スコアリングに一致した」と述べた。LCM/ELISA法で 7 個の腫瘍サンプルを連続して解析したところ,受容体数はHer-2/neu陰性腫瘍サンプルの7,000分子からHer-2/neu陽性腫瘍サンプルの70万分子までの幅があった。
Boehringer Ingelheim社(ウィーン)の腫瘍学研究者Fabio Solca博士は「こうした研究を実施するおもな理由は,臨床試験においてHerceptinなどの薬剤の効果を評価するための代替マーカーを発見することだ」とし,「この方法の長所は,計算対象とする腫瘍細胞を選択できるという点だ。しかし,この方法の感度には,まだ問題があると思う」と述べた。
費用はレーザーが約10万ドル,EL ISAが約600ドルとなっている。
キーワード 【レーザーで乳癌細胞を捕捉】

[2000年8月3日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.31)【戦時中のノウハウが乳房画像スクリーニングに役立つ】
吉利要約:第二次世界大戦時に,レーダー観測者が潜航している敵の潜水艦からの信号を検出するのに使われたノウハウが,放射線科医による乳房画像の読影精度の向上にも役立つかもしれない。 戦時中のレーダー読み取りのシミュレーションと同じで、読影30分と休息30分で精度維持という内容の報告
キーワード 【要旨を記載しておきます】読みとばしてください

[2000年8月10日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.32)【〜乳腺腫瘍の超音波検査〜】
良性か悪性かが即時に判明
〔米ミシガン州アナーバー〕 乳腺腫瘍患者は近い将来,自分の腫瘍が悪性であるか良性であるかを即時に知ることができるようになると思われる。ミシガン大学保健システム(アナーバー)放射線学および生物工学のPaul Carson教授らは,ドプラ効果を利用して,病変の疑われる領域の周辺血管の血流速度および血流量を測定し,こうした情報を三次元(3D)的にカラーで表示する超音波検査法を開発した。

100%識別に成功
吉利要約:Carson教授らは,3Dカラードプラ超音波検査法を38例に行い,検討した。この検査で悪性腫瘍と良性腫瘤を100%識別することに成功。患者20例は生検により悪性腫瘍であることが確認された。
同教授は,超音波法が乳房撮影法や生検に取って代わるものになるとは考えられないが,患者に有益な補助的手法として利用される可能性は大きいと語った。
キーワード 【3Dカラードプラ超音波法診断のこと】読みとばしてください

[2000年9月7日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.36)【コンピュータ支援診断で乳癌を見落とすリスクが低下】
〔米ジョージア州アトランタ〕 X線フィルム上の微小陰影が癌かどうかを識別する場合,特に若い女性の乳房画像では,コンピュータによる“第 2 の意見”を取り入れれば識別が多少容易になるかもしれない。シカゴ大学(イリノイ州シカゴ)放射線科のKunio Doi教授は当地で開かれた国防総省乳癌研究プログラム会議で,「乳房画像上で乳癌を見落とすリスクが,コンピュータ支援診断により50%以上低下しうることがわかった」と発表した。

大量処理能力も有用
Doi教授は「コンピュータ支援診断を行うと陽性結果が増加するため,従来の乳房画像スクリーニングに対する第 2 の意見としての役割を果たせるとわれわれは確信している」と述べ,「コンピュータが乳房画像をレーザーでスキャンしたのち,乳房画像に小さな白い点として現れる微小石灰化領域,または熟練した放射線科医でも見落とすことがある密度の高い領域を強調する。コンピュータ処理は約10秒で完了する」と説明した。
同教授は同会議で「コンピュータは放射線科医の代用とはなりえず,また乳房画像に描出されていない腫瘍は発見できない。しかし,特に乳腺密度が高く腫瘍の徴候を発見しにくい若い女性の乳房画像において,疑いのある領域を指摘して医師を支援することができる」と報告した。
同教授らはコンピュータ支援診断の試作機で,ルーチンの乳癌スクリーニングに訪れた女性 1 万2,670例の乳房画像を読影した。全例中79例が乳癌を発症し,このうち23例の癌を放射線科医が見落とした。コンピュータに読影させたところ,放射線科医が見落とした腫瘍のうち12例を指摘した。
同教授は「これはつまり,より早期に乳癌を検出できる例もありうるということだ。この研究では,放射線科医が見落とした乳癌の52%をコンピュータが検出した」と述べた。
米議会管理下医学研究プログラム(メリーランド州フォートディートリック)の責任者であるKenneth Bertram中佐は「何千枚という画像を検査できるというコンピュータの能力もまた,女性の救命に役立つ。この方向性は正しい」と述べた。
キーワード 【コンピュータ支援診断】読みとばしてください

[2000年9月7日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.36)【ホルモン補充は乳癌に影響せず】
〔英グラスゴー〕 NHSトラスト大学ノース・グラスゴー病院外科・病理学科のSheila Stallard氏はBritish Medical Journal(320:348-349)で「閉経後女性の乳癌ではタイプ,大きさ,進行度に関して,ホルモン補充療法実施の有無による違いはほとんど認められなかった」と報告した。
同氏らは,1988年から93年にかけてスコットランドでルーチンな乳癌スクリーニングを受け,スクリーニング時,あるいはのちに乳癌と診断された50〜64歳の女性1,130例を対象に横断調査を実施。ホルモン補充療法実施の有無が確認できなかった17例を除く1,113例について検討した。スクリーニングで陽性所見が得られたのは815例で,残りの298例では“のちに乳癌”が発見された。 スクリーニング陽性群でホルモン補充療法を受けていたのは100例(12.3%)であったのに対し,“のちに乳癌”群では66例(22.1%)であった。

今回の研究で得られた唯一の相違点は,非浸潤性乳管癌(DCIS)はホルモン補充療法群全体の 8 %で,ホルモン補充療法を受けていなかった群の15%で生じていたということである。同氏は「調査対象者数が少ないため,現時点ではこの違いについて説明できないが,さらに研究を積み重ねる必要がある」としている。
キーワード 【ホルモン補充と乳癌】

[2000年10月5日]Journal Scan
(Medical Tribune VOL.33 NO.40)【ブセレリンとタモキシフェンの併用療法による乳癌での生存の延長】
欧州癌治療機関−乳癌協力グループの研究者らは,ブセレリンとタモキシフェンの併用療法により,閉経前の進行性乳癌患者での全生存期間が,いずれかの薬剤の単独療法に比べて延長するという研究を発表した。

応答率も上昇
研究者らは,タモキシフェン療法により血漿エストラジオールの濃度が高くなることはわかったが長期作用が不明であることから,併用療法についての研究を行った。黄体形成ホルモン放出ホルモン作動薬であるブセレリンによるエストロゲン抑制と,エストラジオール受容体拮抗薬であるタモキシフェンの併用効果が検討された。
この研究の目的は,タモキシフェン療法によって引き起こされたエストラジオール濃度の上昇が減少するか否か,および抗腫瘍作用が増強するか否かを検討することであった。今回のプロスペクティブな 3 群治験には,1988〜95年に総数161例の閉経前進行性乳癌患者が参加した。患者は,ブセレリン投与群,タモキシフェン投与群,または併用群に無作為に割り付けられた。ステロイド受容体陰性腫瘍による無病期間が 2 年未満の患者,または受容体が不明の腫瘍で無病期間が 2 年未満の患者は除外した。中央値7.3年の経過観察期間中,被験者の76%が死亡した。死因はいずれも乳癌であった。

ブセレリンとタモキシフェンの併用療法は,いずれかの薬剤の単独療法に比べて結果が良好であった。併用療法の全生存期間は3.7年であったが,ブセレリンでは2.5年,タモキシフェンでは2.9年であった。

疾患の進行が認められなかった生存期間については,併用療法群では9.7か月であったが,ブセレリン投与群では6.3か月,タモキシフェン投与群では5.6か月であった。客観的応答率は,併用療法群では48%,ブセレリン投与群では34%,タモキシフェン投与群では28%であった。 併用療法群またはブセレリン投与群では血漿エストラジオール濃度は同様に抑制された。タモキシフェン投与群では,投与前の値に比べて濃度が 3 〜 4 倍に上昇した。
(Journal of the National Cancer Institute 92:903-911)
キーワード 【欧州癌治療機関−乳癌協力グループの研究・ブセレリン&タモキシフェン併用】

[2000年10月12日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.41)【乳癌は“遺伝性”よりも“散発性”に発症】
〔ニューヨーク〕 メルボルン大学(オーストラリア・カールトン)遺伝免疫学センターのJisheng Cui博士らは,Cancer Epidemiology,Biomakers & Prevention(9:805-812)に,近親者で乳癌に罹患した女性が1人いる場合に突然変異体キャリアになるリスク上昇はわずか 2〜3倍のため,乳癌の家族歴は突然変異状態を確実に予想できるものではないと発表した。

大半の乳癌患者で家族歴ない
Cui博士らは,乳癌を早期発症した女性患者が突然変異体キャリアである確率を検討するために,乳癌に罹患した近親者の数を考慮に入れてシミュレーション研究を行った。 信頼性のある対立遺伝子頻度の範囲値として,突然変異体キャリアになるリスクの範囲を 5 から20とした。これは,70歳のオーストラリア人女性の25%から70%の累積リスクと同等である。

この研究は,アシュケナジ系ユダヤ人を含む地域住民をベースにした研究がきっかけとなった。その研究によると,BRCA1やBB CA2に生殖細胞系の突然変異体を持ち,乳癌を早期発症している女性の50%以上で乳癌の家族歴がなかった。そのため,“遺伝性”の乳癌発症例の多数が実際には散発性であり,また,さらに多くの家族性乳癌が遺伝性ではないという結論が議論に付されることになった。 研究対象となった家族は,症例とその母親,姉妹,母方と父方の祖母とおばである。姉妹とおばの数はポアソン分布によって作成され,年齢はワイブル分布を使って割り当てられた。

その結果,家族歴のシミュレーション分布,被験者の間の突然変異体罹患率と,地域住民研究の対象者との間に,総合的な類似性が確認された。しかし,突然変異体キャリアの間で,乳癌罹患リスクの不均一性が示唆された。これにより,同博士らは極度の乳癌の家族歴を持つ場合以外,突然変異体キャリアになる可能性は一般的に低いと結論付けた。
キーワード 【“遺伝性”の乳癌発症例の多数が実際には散発性か】

[2000年10月19日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.42)【QOL研究の発展を目指す】
〜第1回日本QOL学会・第39回QOL研究会が同時開催〜
1988年,わが国で世界に先駆けて設立されたQOL(Quality of Life)研究会は,現在会員数が2,200人を超えているが,QOL研究のさらなる発展を目指して,第1回日本QOL学会が東京で開催された。日本QOL学会は科学性を追求する研究の場であるが,医療現場において確実に評価法が理解・実現されるため,現場の声を反映した学際的な演題を発表する場としてQOL研究会の存続が決まり,第39回QOL研究会(会長=聖路加国際病院・日野原重明名誉院長)が同時開催された。一部の報告を紹介する。

疾患特異的質問票の開発を
基調講演「日本QOL学会に望むもの」のなかで,国立循環器病センターの萬代隆氏は地下鉄サリン事件の患者のQOL調査に触れた。QOLの変化を社会的・身体的・精神的要因に分けてみると,発症直後は社会的障害が多かったものの,精神的障害は時間が経過してもなくなっていないことから,QOLは時期を考えて対処しなければならない。また,患者の助けになったのは家族・友人,病院,弁護士の順だったが,「患者にとって何が助けになるのかを検討するのもQOLの研究課題である」と指摘した。
 QOL研究の要点としては,
  • (1)疾患および段階特異的な質問票の開発
  • (2)文化的環境の差を補正し,国際間で比較できるような研究
  • (3)専門家でなくても理解しやすく,使いやすい統計処理方法の開発
  • (4)異なる領域の専門家の学際的な協力      を挙げた。
日野原名誉院長は「EBMとQOLは両立するか」と題し特別講演を行い,まずEBMについて,臨床疫学を含めたその歴史を概観した。QOLについては,1985年に米食品医薬品局(FDA)が「抗癌薬による腫瘍縮小率と生命期間の延長,QOL」を調査したころからQOLの追求が盛んになったと指摘。医学・医療は生命の延長のケアから命を与える豊かな質のケアへ,生産性重視から生活の豊かさの重視へ,疾患指向から患者指向に変わりつつあり,EBMにより個々の患者に適用されるようになった,と述べた。
また,「1991年に国連は,高齢者のQOLについて自立,参加,ケア,自己実現,尊厳が必要であると議決したが,これは患者にも通じる。ソクラテスは『何より大切にすべきは,ただ生きることでなく,よく生きることである』と言った。魂や心をどう大切にするか。医学・医療は,科学としての医学を超えて,哲学や宗教を含む人文科学と同じ枠のなかで人間を扱うものとなる」と,QOLの重要性を強調した。

治療法の選択にも使用
東京大学健康体育科学看護学科の大橋靖雄教授は,特別講演「QOLの統計的評価 最近の成果から」のなかで,臨床評価におけるQOLに対して抱かれている多くの疑問について「現在では,QOL評価は不可欠である。種々の調査票も翻訳され,その妥当性が検証されており,介入の評価には適用事例があり,感度は高い。しかし,依然として,時系列的変動の解析の必要性,データ欠損の多さなどの問題がある」と述べた。

そこで,QOLに関する内外の最近の成果を紹介し「QOLを臨床評価に応用するには,対象とする疾患や薬剤のタイプ・適応などが多様であるため,適切な試験デザインや解析方法が必要である。治療法の評価だけでなく,治療法の選択にも使用できる,だれのための評価か,という視点から評価法を検討することが重要である」と指摘した。

QOL告知逆転の法則
1993年から毎年 2 週間,学生をSangre de Cristo Hospice(米コロラド州)で研修させている大阪大学環境医学教室の南吉一氏は,QOLについての学生の報告をまとめて紹介した。そのなかで「米国のホスピスでは,キリスト教の役割が非常に大きい。日本のホスピス・緩和ケア病棟では,キリスト教信者に対しても,宗教的ケアがなされていない。今後は対応策を考える必要がある」と指摘した。
同様の点に関して,聖学院大学人文学部人間福祉学科の丸山久美子氏は「QOLには身体・社会・心理・精神の側面があると言われているが,日本人は,生活を支える価値観,特に死生観を構成する要素としては,宗教的要素が希薄で,むしろ生来の性格が重要な因子である。個人の性格を考慮したQOL尺度を作成する必要がある」と報告した。
また,南氏は米国での研修成果について「根治不能手術では,適切な告知・ケアがなかった場合,術後QOLは低下し医療不信に陥るが,適切な告知・ケアがあった場合,術後QOLは改善する。同様に,在宅末期医療では,適切な告知・ケアがなかった場合,QOLは低下する一方で医療不信に陥るが,あった場合,現在を受容し,QOLは改善し,悟りの境地になる」とまとめ,「QOL告知逆転の法則」と呼ぶことを提唱し,今後はこの仮説を立証したいと述べた。

十分なICなら術式の違いで術後QOLに差ない
国立病院四国がんセンター外科では,乳癌患者に対し癌告知だけでなく,術後化学療法についても詳しく説明するインフォームド・コンセント(IC)を実施しているが,同科の佐伯英行医長らは,乳癌患者における選択術式と術後補助化学療法の有無がQOLに及ぼす影響について報告した。
腫瘍径 3 cm以下でステージ II 以下の乳癌症例201例を対象に術後QOLを比較検討し,再発判明例は解析から除外した。その結果,乳房温存療法群は,手術に対する自己採点・術前ICの納得度・乳癌罹患に対する受容度で,乳房切除術群より優れていた。全体的なQOLの「総合的自己評価」・自覚症状・感情面への影響は,術式間に有意差を認めなかった。「不安」「抑うつ」の検討では,「不安」は術式間に差はなく,「抑うつ」は術後12か月で温存群が良かったが,その他の時期では術式間に差がなかった。
術後補助化学療法の有無別では,化療群は全体的なQOL・感情面などで有意に低い評価で,特に術後 3 か月後の低下が著明であった。しかし,手術の経済面への影響を除いて,術後12か月以降には,両群間に有意差はなくなった。佐伯医長は「術前に十分な説明を行い,患者の意思を尊重して術式を決定する現在の方法は,いずれの術式を選択しても,術後QOLに及ぼす影響に大きな差はなかった」と述べた。
キーワード 【第1回日本QOL学会・第39回QOL研究会の記事】

[2000年10月26日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.43 p.34 )【JOURNAL SCAN】
女性パーキンソン病患者は死亡率と乳癌リスク高い
 女性のパーキンソン病患者は死亡率が 2 倍高いうえに乳癌のリスクが高いという研究が発表された。
 1984〜92年におけるパーキンソン病患者246例(男性696人年,女性1,018人年)の生存率,死亡率,転出・転入および癌発生率をレトロスペクティブに評価したところ,この間に男性49例,女性53例が死亡していた。標準化死亡率は男性で1.74,女性で1.97だった。
 80歳未満の患者228例のうち男性 8 例,女性 7 例に癌が発生した。総体的リスクは男女いずれでも 1 未満だった。これは統計学的に有意な差ではなかったが,女性における乳癌のリスクが上昇し,標準化死亡率は5.49だった。
 標準化死亡率から,パーキンソン病の患者はその地域の他の住人よりも死亡率が約 2 倍高いことが示された。さらに,女性ではパーキンソン病が乳癌リスクを高めることに関与していた。
キーワード 【Journal of Neurology 247:429-434】

[2000年11月9日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.45 p.16)【発癌経路遮断の可能性をマウス細胞で確認】
〔ニューヨーク〕 ジョンズホプキンス大学(メリーランド州ボルティモア)分子生物学のPhilip A. Beachy博士はハワードヒューズ医学研究所と共同で,マウス細胞を用いてヒトにおけるいくつかの癌のかぎとなる重要な細胞内経路を遮断し,悪性の典型である無制限な細胞分裂を明らかに逆転させることが可能であることをNature(406:1005-1009)に発表した。基底細胞癌は皮膚癌のなかでも最も多いものである。

ヘッジホッグ経路を抑制

 この研究では,遺伝子工学で無制限に分裂するようにしたマウスの線維芽細胞に,米国西部のヒツジ用牧草地の植物から化学的に抽出したcyclopamineを加えると,分裂が正常に回復することが明らかにされた。
 Beachy博士らは,通常は発生中の胚でのみ活性化している生化学的経路(生物学者の間ではヘッジホッグ反応経路として知られている)の反応をオンにする突然変異を抑制する物質としてcyclopamineを用いた。成人におけるこの経路の異常な活性化は,白人に最も多く見られる基底細胞癌と関係している。また,悪性度の高い小児の筋肉腫瘍である横紋筋肉腫や小児脳腫瘍である髄芽細胞腫とも関係している。
 製薬会社やその他の研究所など,世界中の科学者が癌の情報伝達経路とそれを抑制する手段を模索しているが,この研究はこのようなアプローチの結果として報告された数少ないものの 1 つであり,この特定の経路に注目した初めてのものである。

新たな治療標的に

 Beachy博士は「将来の癌治療はメカニズムを基本としたアプローチになると考えている。それは細胞内で異常な過程を見つけ出し,それを正常化,あるいは,その作用を打ち消すことである。その過程は 1 つであることが多い。目的は,われわれがこれまで数年にわたり化学療法によって行ってきた,すべての増殖細胞を殺す通常のアプローチに代わって,癌発生の過程や経路を特異的に標的とする薬剤を開発することである。われわれの研究は非常に基礎的であり,そこを明らかにしたいと考えている。既に今回の研究で 1 つの過程を選び出し,マウスの細胞中でそのスイッチをオフにできること,連続的な無制限の細胞増殖を抑制できることを示した」と述べた。
 1950年代,アイダホの牧羊地において単眼の奇形ヒツジが多数生まれた原因を調査した際に初めてcyclopamineが発見された。妊娠ヒツジは高濃度のcyclopamineを含む野性のイキシアを食べていた。のちに,cyclopamineが胚において将来の目や外肢の位置の方向付けを行うヘッジホッグ反応経路を抑制していることが明らかになった。

理論的には副作用なし

 今回の研究でBeachy博士らは,ヘッジホッグ経路の 2 つの遺伝子に注目した。Smoothened(SMO)は細胞の増殖や分裂を起こさせるカスケード反応全体を始動させる。2 つ目の遺伝子Patched(PTCH)は,正常ではブレーキのように機能しており,成人におけるSMOの活性を抑える。しかし,胚ではヘッジホッグと呼ばれるマスター遺伝子の活性化によってPTCHの機能が停止され,PTCHのブレーキ作用が緩められる。同博士によると,ヘッジホッグをオンにすればPTCHの機能が停止し,SMOやそれに続く増殖反応が全速力で進行するという。
 一連の実験では,patched遺伝子をノックアウトしたマウス細胞を作製した。これらの細胞は,癌突然変異として知られる,分裂を調節できない細胞と似た挙動を示す。同博士らはSMOの変異により癌が生じる細胞をも作製した。同博士は「この細胞も異常に分裂するが,cyclopamineやより強力なその誘導体を加えるとヘッジホッグ経路が遮断されて細胞分裂が停止する」と述べた。
 同博士は「PTCHがどのように作用するか正確なところはわかっていないが,どうにかしてSMO遺伝子の産生物に作用し,不活化させているのだろうと推測される。これは,cyclopamineやその誘導体が癌治療のいくつかの点で有用であることを意味している。この治療は,成人の癌患者でのみ活性化していると考えられる経路を特異的に標的とするため,理論的には副作用がほとんどないはずである」とコメントした。
キーワード 【発癌経路遮断の可能性】

[2000年12月7日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.49 p.28)【】

乳房切除術における乳房再建は患者の満足度を高める
同時再建が最大の心理的後押し

〔米ミシガン州アナーバー〕 ミシガン大学(アナーバー)形成・再建外科のEdwin Wilkins准教授らは,Plastic & Reconstructive Surgery(106:1014-1025)に,乳房切除後に乳房再建術を受けた女性は,乳房再建術として選択した方法あるいは時機にかかわらず,情動的・社会的・機能的満足度が大幅に改善することを報告した。しかし,研究によると,最大の心理的後押しの効果は,乳房再建術を後で受けた患者よりも,乳房切除術と同時に再建術を受けた患者に見られるという。インプラントあるいは患者自身の組織の選択による差はほとんどなかった。

後の再建術でもかなりの恩恵

 これは,ミシガン多施設プロスペクティブ乳房再建術転帰調査(MBROS)から得られた結果で,乳癌患者の乳房再建手術について高まる議論に対して,慎重に収集された科学的証拠を追加するものである。また,この報告では,あるアプローチが他のアプローチより優れているとする過去の知見を否定している。
 研究を指導したWilkins准教授は「われわれは,乳房を失うという情動的ショックを和らげる方法を見つけたようだ。今や,テクノロジーと外科技術は,自然に見える乳房を新たにつくり出せるほど進歩している。乳房切除術と同時に,新たな乳房をそこに再建した患者で最大の効果があるようだが,後で再建術を受けた患者もかなりの肯定的恩恵を経験した」と述べた。
 この研究では,米国およびカナダの12医療センターにおいて乳房切除術を受けた患者250例についてアンケート調査を行った。23人の外科医が施行した再建術の数日前および手術から 1 年後に調査を行った。患者の大部分に当たる184例は,TRAM再建術と呼ばれる手術の 2 変法の 1 つを用いて自己組織から乳房を再建した。残りの女性は,人工組織拡張器,あるいは生理食塩水またはシリコンを充填したインプラントを利用した。患者の 3 分の 2 (161例)は,乳房切除術と同時に乳房再建術を受けた。
 このアンケート調査は 2 時間を要する宿題形式で,女性の情動的満足,活力,一般的な精神衛生,社会機能,機能的・社会的満足度,身体イメージなどを評価した。乳房再建術後は,手術に対する満足度についても質問した。異なる再建アプローチおよび時機を選択したグループ間で結果を比較した。
 同准教授は「アンケート結果から乳房再建術は患者の満足度を改善し,回復を促進するという目標に適合していることが再度確認された。われわれの知見は,乳房切除術後の再建術を普及させようとする立法当局や政策立案者の最近の努力を評価するものである」と述べた。

時機で心理的改善度に差

 全体として,論文執筆者らは「結果から,どのような種類の再建術であっても,女性が疾患から情動的・心理的に回復するのを手助けすることが示される。しかし,再建術の時機によって,特に心理学的改善度の程度に差が生じる」としている。
 Wilkins准教授は「乳房切除術−再建術を同時に受ける前に調査した患者は,かなり低いスコアであった。これはおそらく最近診断が下されたからであろう。一方,乳房再建術を後で受けた患者は,術前スコアが相対的に高かった。これは,患者が癌治療を完了して,数か月あるいは数年間その状況をしのいできたためである」と述べた。
 同時再建術を受けた患者は,かなり低い心理学的スコアから始まったが,術後 1 年における調査では,他のグループに比べ大部分のスコアが大きく増加した。例外は身体イメージで,同時再建術患者においてはあまり変化しなかった。これは,これら女性が乳房のない生活を送ったことがなかったためであろう。
 このアンケート調査により,特定の満足度と身体イメージ結果において,測定可能な再建アプローチ間の差異が示された。
 例えば,乳房切除術後しばらくして再建術を受けた(遅延再建術)患者は,再建術でインプラントを使用するより自分の組織を使用するほうが身体イメージが大きく増加した。同准教授は,これはおそらくTRAM乳房のより自然な感じによるものだろうと示唆している。
 しかし,乳房切除術から数か月後にインプラントで再建術を受けた患者は,TRAM再建術患者に比べ,活力および社会的満足度が大きく増加しており,これはTRAM手術からの回復が時には長く掛かることを反映しているのだろう。

同時再建術を受けるかどうかがかぎ

 Wilkins准教授は「乳房切除術を受ける女性にとって最も重大なことは,どの再建術を選択するかではなく,同時再建術を受けるかどうかである。遅延再建術においては,選択した方法が最も大きく影響するようだ」と説明した。
 研究で検討したTRAM手術のいずれの方法も,腹部の皮膚,脂肪,筋肉を新しい乳房部位に移植する。free TRAM法は腹直筋を切断するが,pedicle TRAM法は腹直筋の一端を結合させたまま上方に回転させる。
 MBROSプロジェクトは,1996年,ミシガン大学,他の 3 州およびカナダの病院において開始された。これは米国陸軍医学研究および需品司令部(メリーランド州フォートデトリック)および復員軍人局病院の診療管理・転帰研究センター(アナーバー)の資金援助を受けている。
 このプロジェクトでは,再建術後,患者を 2 年間以上追跡調査するため,同准教授と同僚の研究者らはデータを分析する準備をしており,長期の心理学的効果が示される予定である。また,この研究では,機能的結果,合併症率,美容上の結果,費用など別の側面も検討した。財源の限界により,再建手術を受けない患者の比較グループは除外された。
 同准教授は「個別および全体的に,乳房再建術に関して決定を下すのに必要な情報を,患者,医師,保険会社に提供したい」と述べた。
キーワード 【発癌経路遮断の可能性】

[2000年12月21日]
(Medical Tribune VOL.33 NO.51 p.05 )【適切な乳癌手術】

米国 適切な乳癌手術を受ける患者の割合が低下

〔米ウィスコンシン州ミルウォーキー〕 ウィスコンシン医科大学(ミルウォーキー)のAnne Butler Nattinger博士らは「米国では早期乳癌に対して適切な一次治療を受ける患者の数が著しく減少している。この知見は,新しい治療法を臨床適用する際には適応と転帰を十分に検討する必要があることを示している」とThe Lancet(356:1148-1153)に報告した。

88%が78%にまで低下

 Nattinger博士らの研究によると,適切な一次療法を受けた患者の全体的割合は,1983〜89年では88%であったが,95年には78%にまで低下したという。同博士は「乳房温存手術の施行が増加するにつれて,適切な治療を受ける患者の割合が低下したことは皮肉な結果である」とコメントした。
 1990年,米国立衛生研究所(NIH)によるコンセンサス策定会議は,乳房温存手術または乳房完全切除術のいずれもが,I〜II期の乳癌患者に対する治療法として適切であると発表した。乳房温存手術のほうがより望ましいが,完全切除術よりも複雑で,腋窩リンパ節郭清と術後放射線療法を併用しなければならない。
 同博士らは,米国国民サーベイランス・疫学・最終結果腫瘍登録から,12年間に早期乳癌に対する手術を受けた30歳以上の女性14万4,759例の記録を抽出。研究期間を 3 か月ごとに区切り,それぞれの期間ごとに,少なくとも最小限の適切な一次治療(NIHコンセンサス会議の基準による)を受けた患者の割合を算出した。
 その結果,年齢,人種,乳癌の病期,人口密度で分類したサブグループのすべてにおいて,適切な一次治療を受けた患者の割合が低下していた。不適切な型の乳房切除術を受けた女性の割合は,全研究期間を通じて2.7%で一定していた。
 同博士らは「ここで強調したいのは,適切な乳房温存手術を受けた患者の割合はこの12年間に変化しなかったということである。むしろ,以前に大部分を占めていた乳房切除術(ほとんどがコンセンサスの基準に従って行われている)に代わって,乳房温存手術(かなりの症例がコンセンサスの基準を満たしていない)を受ける患者が増えたことで,適切な治療を受ける割合が低下したと考えられる」と述べた。

温存術の基準の遵守が必要

 リスクの非常に低い患者集団に対しても放射線療法や腋窩リンパ節郭清の併用を勧告しているNIHコンセンサスに,一部の医師や患者が反対している可能性も考えられる。しかし,適切な治療を受けた患者の割合はすべてのサブグループにおいて低下していることから,これがその原因であるとは思われない。
 Nattinger博士らは「患者は多様であり,コンセンサスパネルの勧告をすべての患者に厳格に当てはめることはできない。したがって,患者の100%がコンセンサスの基準を満たす治療を受けていなくても驚くには当たらない。しかし,コンセンサス会議直後の数年間に基準を満たす治療を受けた患者の割合が低下したことは驚くに値する」と述べ,「今回の知見は1990年代における乳房温存療法の臨床適用の解釈に疑問を投げ掛けている。多くの患者は適切な治療を受けているが,適切な治療を受ける患者の割合を80年代末の水準にまで戻すには,乳房温存手術に放射線療法と腋窩リンパ節郭清を併用するというコンセンサスの基準が,もっと守られるようにする必要があるであろう」と結論した。
キーワード 【温存術の基準の遵守】







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2000-06〜2000-12記事