1999-05〜1999-12記事




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00(Medical Tribuneなどの記事)【はじめに】今まで 一般(どなたでも)参照可能であったMedical Tribuneの記事が2000年9月28日から、メディプロという会員制(ID+パスワードが必要)サイト内に移行してしまいました。
情報公開IT革命という世の中に於て、残念でなりません。そこで乳癌に関連したニュース (一般雑誌より参考になり得る情報)をここにセレクトし、upしました。  尚、ここに転記したり転載したる責任の所在は吉利です。 Medical Tribune誌関連の方、もし転載に問題がございましたら、 webmaster@prodr.com(吉利)までお願いします。

☆(Medical Tribune Vol.31, No.10,)【心理療法で乳癌患者の予後が改善】
米国放射線療法・腫瘍学会の年次集会での研究、スタンフォード大学精神科のDavid Spiegel教授らは、 乳癌患者に心理療法が有用であることを示唆する報告をした。教授らは、1年間の集団心理療法を受けた 転移性乳癌患者と受けなかった症例について、集団心理サポート療法が患者に及ぼす生理的効果を分析し 両群の生存率とクォリティオブライフ因子を比較した。

結果:集団心理療法を受けた症例群は受けなかった症例群と比較し平均して18ヶ月も長く生存した。

注記:このことは、乳癌というホルモンの関係する腫瘍では、心理的なサポートが重要に思われる。 この逆の反論報告は2000-11/5現在報告されていない。故にHANAさんBBSのポリシーが正しいと思う。
Spiegel教授の報告をサポートしている本:HANAさん推薦のこの一冊; ディーン・オーニッシュ著「愛は寿命をのばす - からだを癒すラブ・パワーの実証的研究 - 」 光文社
キーワード 【乳癌・心理的サポート】このDavid Spiegel教授の記事を元に、雑誌より転載しています。

[1999年4月22,29日]
(Medical Tribune Vol.32, No16,17., )【触診所見の正常な乳房痛は低リスク】
乳癌精密検査偏重の風潮に警鐘
〔オランダ・ハールレム〕 乳房痛があっても触診で異常がなければ,心配する理由はどこにも見当たらない。乳房痛女性の臨床所見に異常が見られなくても,疑いを晴らす目的で,乳房撮影の実施を指示する医師は多いが,Locatie Elisabeth病院(ハールレム)放射線科のL. E.M. Duijm氏はBritish Medical Journal(317:1492-1495,1998)で「こうした場合に乳房撮影を実施しても,疑わしい異常所見が得られることはごくまれで,ましてや生検などはやり過ぎだ」と述べている。

乳房痛女性の86.5%で正常所見
 Duijm氏らは,4 年の間に乳房撮影を受けた約980例の乳房痛女性と,ルーチンのスクリーニングとして乳房撮影を受けたほぼ同数の無症状女性についてデータを比較検討した。
 その結果,86.5%の乳房痛女性の所見は完全に正常であった。また,乳房痛女性で異常を認めたものの明らかに良性であると判定されたのが8.5%,良性の可能性大であると診断されたのが3.6%であった。真の疑惑が生じたのは 8 例(0.8%)にすぎず,うち半数で癌が確認されたが,その 4 例では疼痛のない対側の乳房から癌が発見された。また,乳房撮影後 2 年以内に悪性腫瘍を生じた症例が,ほかに 2 例確認された。
 対照群のデータも同様の傾向を示し,乳房撮影の直後に 7 例(0.7%)が組織検査により乳癌と診断された。乳房撮影所見が正常または良性であったグループのうち,Duijm氏らは10例の乳房痛女性に対して生検を実施。1 例だけが線維嚢胞性乳腺症と診断された。良性の可能性大の36例中 2 例に対しても,穿刺吸引細胞診を実施したが,悪性細胞は発見されなかった。

不安を和らげる効果
 Duijm氏は「乳房痛が存在しても,触診で異常が認められなければ乳癌リスクは高くならない」と結論を下しているが,この比較試験においては乳癌の症例数が少なすぎるという点も考慮しておく必要がある。一方で,同氏らも認めているように,乳房撮影には乳房痛女性の不安を和らげる効果があることも否定できない。  乳房撮影所見が良性の場合には,小嚢胞か硬化性腺症あるいは微小嚢胞性過形成などの乳腺症であることがほとんど。その多くは自然に消滅するので,治療は不要である。しかし,適当な間隔で乳房撮影を実施すれば,まだ治癒可能な早期のうちに悪性化を把握できる。
キーワード 【乳癌精密検査偏重の風潮に警鐘】

[1999年5月6日]
(Medical Tribune Vol.32, No.18, )【乳房X線画像専門の放射線科医のほうが腫瘍を早期検出】
〔ニューヨーク〕 乳房X線画像専門の放射線科医のほうが,より広範囲にわたるX線画像を読影する放射線科医よりも早期乳癌をよく検出しているという新しい研究成績が示された。Karl Franzens大学(オーストリア・グラーツ)放射線医学のFerdinand Schmidt博士らはCancer(83:2516-2520,1998)に「 2 万6,000例を超える乳房X線画像の読影結果から,放射線科医が乳房X線画像を専門に読影すると,経験を積むに従って早期癌の検出率が向上することが分かった」と報告した。

1人が専門に読影
 Schmidt博士によると,欧米女性のおよそ10人に 1 人は生涯に乳癌を発症するが,これら女性の余命延長の可能性があると分かっていることは癌の早期検出しかない。乳癌患者の長期予後は(診断時の)腫瘍サイズに大きく依存しており,7 年生存率は,診断時の腫瘍サイズが 1 インチ(2.54cm)未満の患者では96%であるのに対して,2 インチ(5.08cm)を超える患者では46%に低下することが研究により示されている。  同博士らは,所属大学医療センターの乳房X線画像と乳癌データを 5 年間再検討した。初めの 2 年間は,複数の放射線科医が 1 回 4 〜 8週間の期間で交替で乳房X線画像を読影した。残りの 3 年間は,1 人の放射線科医が乳房X線画像を専門に読影した。 その結果,小腫瘍の検出率は初めの 2 年間では26〜27%の範囲にあったが,次の 3 年間では約39%にまで向上した。
 同博士は「われわれは,乳房X線画像専門の放射線科医が読影すると,一般の放射線科医が読影する場合よりも多くの小腫瘍が検出されることを示した」と述べた。

 カリフォルニア大学放射線医学のMyron Moskowitz名誉教授は,同誌の論評に「これは魅力的で重要な仮説だが,Schmidt博士らの方法ではこの仮説を明確に証明することはできない」と記した。  ウエスタンペンシルベニア病院(ペンシルベニア州ピッツバーグ)乳房画像診断センターの所長でもあるピッツバーグ大学(ピッツバーグ)放射線医学のEllen B. Mendelson臨床准教授は「乳房X線画像の読影経験を積むほど小腫瘍をよく検出できるようになるというのは,直感的には理にかなっているが,Schmidt博士らはこれをきちんと証明しなかった」と述べた。
キーワード 【読影は乳房X線画像専門医に】読み飛ばしてください

[1999年5月13日]
(Medical Tribune Vol.32, No.19, )【新しい癌抑制遺伝子NOEY2を同定】
乳癌,卵巣癌患者の40%で欠損
〔ニューヨーク〕 テキサス大学MDアンダーソン癌センター(テキサス州ヒューストン)分子遺伝学部門のYin-hua Yu博士は,Proceedings of the National Academy of Sciences(96:214-219)に,新たな遺伝子欠損を同定したと発表。「NOEY2と命名した遺伝子の欠損は,40%にのぼる乳癌および卵巣癌に関連している」と報告した。

癌細胞の増殖を阻止
 Yu博士は「in vitroで癌細胞にNOEY2遺伝子を導入したところ,90%が増殖を停止することが明らかになった」と発表した。  共著者である同癌センター医学部門のRobert C. Bast部長は「通常,だれもがNOEY2遺伝子を 2 コピー受け継いでいる。しかし,インプリントと呼ばれるプロセスにおいて,母親から受け継いだ遺伝子のコピーが停止し,片方の遺伝子しか機能していない」と説明。「乳癌および卵巣癌の細胞の40%で,この機能しているはずのNOEY2遺伝子が欠損していた」と述べた。  さらに同部長は「今回研究した腫瘍細胞のうち,他の50%は,NOEY2遺伝子が両コピーとも存在しているものの,通常ならば機能を有するはずの遺伝子が,腫瘍の増殖抑制に必要な蛋白質を,ほとんどまたは全く産生していなかった」としている。

 Yu博士は「NOEY2遺伝子は,細胞の増殖サイクルを制御するとともに,腫瘍の増殖を抑制する蛋白質を産生する」と述べ「この蛋白質は正常組織中に存在するが,多くの悪性腫瘍細胞において,同蛋白質は発現していない」と説明した。
 Bast部長らは,NOEY2を発見した後,欠損遺伝子を置き換えて,腫瘍の増殖の阻害を試みている。同部長は「これは,明らかな進歩だ。しかし,この発見が臨床的に役に立つかどうかを明らかにするには,さらに多くのデータを積み重ねていく必要がある」と説明。「今後のin vitroおよびマウスの実験が実を結べば,ヒトを対象とした臨床試験を,3 年以内に開始できるかもしれない」と期待を述べている。
 Yu博士らは,次の段階として,機能していない母親からのNOEY2遺伝子が機能を回復するように,インプリンティングプロセスの逆行を試みる計画だ。  もう 1 つの方法として,機能しているNOEY2遺伝子を,遺伝子導入向けにデザインしたウイルスに組み込み,腫瘍細胞に遺伝子導入する計画もある。
 ピッツバーグ大学(ペンシルベニア州ピッツバーグ)癌研究所/McGee-Women's病院総合乳腺プログラムのVictor Vogel部長は「今回の新しい発見は,基礎科学の観察結果で,臨床応用はまだ先の話だ」と指摘。「この遺伝子の発見が,直ちに癌治療に結び付くとは考えられない。新しい遺伝子を腫瘍細胞に導入するのは,想像を絶するほど困難を伴うことだ」と述べた。
キーワード 【新しい癌抑制遺伝子・NOEY2】

[1999年5月13日]
(Medical Tribune Vol.32, No.19, )【予防的乳房切除術の有用性は高い】
〔ニューヨーク〕 予防的乳房切除術で高リスク女性の乳癌罹患率は,皆無にはならないものの激減することが,メイヨークリニック(ミネソタ州ロチェスター)のLynn Hartmann博士らが行った研究で明らかになり,The New England Journal of Medicine(340:77-84)に報告された。  ただし,このような結果にもかかわらず,一部の医師や癌関連団体は,議論の多いこの手術を,リスクのある患者に広く勧めることはできないとしている。

罹患率の減少は約90%
 Hartmann博士らは乳癌の家族歴を持ち,両側乳房切除術を受けた女性639例と,同術を受けなかった同胞の医療記録を比較した。記録はメイヨークリニックで1960〜93年に集積されたものである。  この研究では乳癌または卵巣癌に罹患した家族の数および診断年齢から,対象女性を高リスク群と中等度リスク群とに分けて検討している。
 乳癌の家族歴があり予防的な両側乳房切除術を受けた639例のうち,高リスク群は214例,中等度リスク群は425例だった。フォローアップ期間の中央値は14年だった。  乳癌の罹患率予測モデルであるGailモデルに従うと,中等度リスク群で予測される乳癌発症率は37.4%だが,実際に乳癌と診断されたのはわずか 4 例だった。これは両側切除により,中等度リスク女性の乳癌発症リスクが89.5%減少されたことを意味する,とHartmann博士らは述べている。
 一方,残り214例の高リスク女性については,予防的切除術を受けなかった姉妹との比較を行った。その結果,切除を受けた高リスク群214例のうち乳癌と診断されたのは3例(1.4%)だったのに対し,同術を受けなかった姉妹403例での乳癌診断率は156例(39%)だった。 これは予防的切除術が高リスク群の乳癌発症リスクを90%以上下げたことを意味している。

緻密なリスク分析が必要
 同誌の論評でペンシルベニア大学(ペンシルベニア州フィラデルフィア)のAndrea Eisen,Barbara Weber両博士は,「姉妹が乳癌を発症した女性は,乳癌の家族歴がない女性に比べ予防的切除術を希望する率が高い」ことが,今回の研究のバイアスになっている可能性がある,と指摘する。両博士によると,患者による自己選択が,両側切除術の過剰評価につながる可能性がある。
 またアラバマ大学総合癌センター(アラバマ州バーミングハム)家族性癌クリニックのLisle Nabell所長は,高リスク群を含め,大多数の女性には予防的切除術は勧められないと述べている。
「同術を勧める前に緻密なリスク分析をするのは医師の義務である」と言う同所長は,加えて,近親者が乳癌にかかったとき多くの女性は,自分も罹患する確率は非常に高いという間違った概念に捉えられてしまう,と指摘した。
キーワード 【予防的乳房切除術の有用性】こんな記事もありました。

[1999年7月15日]
(Medical Tribune Vol.32, No.28, )【〜進行乳癌患者への高用量化学療法〜】
生存率が標準的治療と同等でも中止望まず
〔アトランタ〕 当地で開かれた米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次集会で,乳癌患者に対する高用量化学療法 (HDC)と骨髄移植(BMT)の併用療法(HDC/BMT)などに関する研究 4 件の予備的知見が発表され,HDC/BMTは患者の生存期間を延長しないことが報告された。しかし,同集会に参加した医師らは,進行癌患者への最後の希望として提供されるHDC/BMTを中止することは望まないとの意向を示した。

最終的結論は保留
 1980年代中ごろ以降,転移性乳癌または10か所以上のリンパ節転移を有するハイリスク原発性乳癌患者の治療に,標準的化学療法の 5 〜30倍の用量を投与するHDCとBMTとの併用が行われるようになった。しかし,同療法の効果に関するデータは今までわずかしかなかった。
 今回発表されたのは,米国の研究 2 件とフランスの研究およびスカンジナビアの研究各 1 件など。それによると,HDC/BMT後の生存率は,BMTを併用しない標準用量化学療法後の生存率と同等であったという。  今回の集会に先立ってASCOのウェブサイトに発表されたこの知見は,HDC/BMTの有効性を信ずる人々に衝撃を与えた。しかし,集会に参加した医師の多くは,これまでと同様に患者を治療し続け,より長期にわたるフォローアップのデータが分析されるまで最終的結論を保留しておくべきである,との見解を示した。
「私はこれまで,転移性癌に対するHDC/BMTは標準的療法より有効性が高いと考えていたが,現時点では両者は同等であると考えている」とペンシルベニア大学のStadtmauer部長は述べた。

進行乳癌患者への高用量化学療法は“禁止すべきではない”
〔アトランタ〕 米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次集会で報告された,乳癌患者に対する高用量化学療法(HDC)に関する予備的研究は少なくとも 4件。その1つである米国の癌・白血病グループB(CALGB)共同研究を統轄したWilliam Peters博士は「HDCが標準的療法に劣るというデータは出ていない。したがって,この治療を禁止すべきではない」と主張した。

現時点では両者は同等
 また,米東部腫瘍共同研究グループ(ECOG)による試験を統轄したペンシルベニア大学(ペンシルベニア州フィラデルフィア)骨髄移植プログラムのEdward A. Stadtmauer部長は「私はこれまで,転移性癌に対するHDCと骨髄移植(BMT)の併用(HDC/BMT)または幹細胞移植の併用療法は標準的療法より有効性が高いと考えていたが,現時点では両者は同等であると考えている」と述べた。
 ECOGの試験では,転移性乳癌患者を対象として,HDCと幹細胞移植の併用療法と標準的治療(シクロホスファミド+メトトレキサート+フルオロウラシル)とを比較した。試験参加者の総数は553例,そのうち分析の対象となったのは184例であった。検討の結果,治療開始3 年後の生存率はHDC+幹細胞移植併用群で32%,標準的治療群では38%で,両群間に差は認められなかった。
 783例のハイリスク原発性乳癌患者を対象としたCALGBの試験結果も同様で,HDC群の 3 年生存率が68%であったのに対して,中等用量化学療法(標準的治療より用量が多いが,HDCより少ない)群では64%で,両群の 3 年生存率はほとんど同等であった。
 スカンジナビアの研究では,ハイリスク原発性乳癌患者を対象として,HDC/BMTと,患者の血球数に従って用量を調整する化学療法とを比較。その結果,20か月後の生存率に差は見られなかった。また,フランスの研究では転移性乳癌患者65例を対象にHDC/BMTと標準的治療法とを比較。その結果,両群間の 5 年生存率に差は見られなかったが,HDC/BMT群では再発までの期間が延長し,3 年間の再発率が標準的治療群で79.3%であったのに対して,HDC/BMT群では50.8%であった。

臨床試験への参加を
 これらの研究結果が最初に発表された際に行われた記者会見で,Stadtmauer部長は「今回発表された知見は期待に反するものではあるが,失望するには至っていない」と述べ,HDC/BMTの恩恵を受ける患者集団もあるかもしれないと指摘した。例えば,限局性進行乳癌(病巣は乳房に限局されているが,進行しているために乳房切除術の適応とならない)に対するHDC/BMTの効果を観察する複数の試験が,現在行われている。
 同部長はまた,4 〜 9 か所のリンパ節転移を有する中等度進行乳癌もHDC/BMTによって治療できる可能性があると述べた。しかし,コロンビア大学(ニューヨーク)のKaren Antman博士は今回の集会で,この患者集団を対象として米国で行われている臨床試験は現時点では1 件しかないと指摘。HDC/BMTに関するもう 1 つの重要な問題,すなわち,同療法を既に受けた乳癌患者約 1 万2,000例のなかで,臨床試験の参加者は 5 %にすぎなかった,という問題が再び論議された。乳癌患者を臨床試験に紹介しにくいのは,HDC/BMTに関する明確なデータが不足しているためである,との点で意見が一致した。Stadtmauer部長は「現在この療法を行う環境として最適なのは臨床試験である」としている。
 Stadtmauer部長はまた,「期待に反するデータが多いなかで,南アフリカで行われた試験の結果には希望が持てる」と述べた。154例の乳癌患者を対象とした同試験では,標準的治療群に比べてHDC/BMT群では再発が少なく,生存期間も延長したことが示された。5 年後の死亡率がHDC/BMT群で17%であったのに対して,標準的治療群では35%であった。

初回治療としてのHDCに期待
 同試験を統轄したWerner Bezwoda博士によると,この試験が他の試験と異なっている点は,同博士らがHDCを第一段階治療として用いた点であるという。他の試験はいずれも,HDCで癌の撃退を試みる前に,標準的用量の化学療法によって寛解に導くという標準的プロトコルに従っていた。
 今回の集会で,ワシントン大学(シアトル)のRobert Livingston博士は,第一段階治療としてのHDCについて研究を行うべきであるとし,「第一段階治療として行われる低用量の標準的化学療法によって,薬剤耐性を持つ癌細胞が発生し,のちのHDCが無効となるのかもしれない」と述べた。
キーワード 【進行乳癌患者への高用量化学療法】

[1999年8月5日]
(Medical Tribune Vol.32, No.31, )【乳腺嚢胞で高い癌リスク】
〔ニューヨーク〕 ウエスタン総合病院エジンバラ乳房部門(英スコットランド・エジンバラ)のJ. Michael Dixon博士らはThe Lancet(353:1742-45)に,触知可能な乳腺嚢胞を有する45歳未満の女性の乳癌リスクは一般人口よりも約 6 倍高いことがわかったと発表した。
 同博士らは触知可能な嚢胞と診断された女性1,374例の追跡調査を平均 9 年実施し,65例で癌が発症したと報告した。乳癌の総体的リスクはスコットランド人女性の一般人口よりも 3 倍近く高かった。45歳未満の女性ではリスクが5.9倍に増大した。これに対して,55歳の女性のリスクは一般人口よりも1.7倍の高さだった。
 Laheyクリニック(マサチューセッツ州バーリントン)放射線腫瘍学のTheodore Lo博士は「意外な報告だ。一般に,われわれは乳腺嚢胞の患者に精密検査が必要だとは考えていなかった」と述べた。
キーワード 【乳腺嚢胞で高い癌リスク】

[1999年8月26日]
(Medical Tribune Vol.32, No.34, )【−−タモキシフェン−−】
服用すべき女性を特定できず
〔アトランタ〕 タモキシフェンが乳癌リスク低減薬として承認されて 1 年になる。当地で開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次集会において,タモキシフェンの「技術的評価」によって一部の女性の癌リスクを低減させることは確認されているが,どのような女性がこの薬剤を服用すべきかは不明であることが報告された。

“リスクの認識”がかぎ握る
 ASCO報告の筆頭執筆者でもあるカリフォルニア大学ロサンゼルス校内科腫瘍学・血液学のRowan T. Chlebowski部長によると,タモキシフェンを服用するかどうかの決定は,最終的にはその女性の“リスクの認識”にかかっており,またその認識の形成に医師がどのようにアプローチすべきかは明確で簡単な指針のない複雑な問題であるという。
    同部長らは,この問題を持ち出す際の一般通則として,
  • (1)女性は自分の乳癌リスクを過大評価しがちであることを覚えておく
  • (2)癌の絶対リスクと相対リスクの差違を必ず患者に説明する
  • (3)ある女性を“高リスク”ときめつけない    ことなどの項目を挙げた。
これらの提案のほか,同部長は「重要なことは医師がタモキシフェンについて高リスクの女性と少なくとも話し合いをすることである。医師が女性にタモキシフェンを勧めないからといって,その医師を責めることはできない」と述べた。
 タモキシフェンがリスク低減目的で使われ始めてから,同薬には混乱がつきまとうようになった。1978年以来,進行乳癌の治療薬として利用されてきたが,米国乳癌予防試験(BCPT)の結果,FDAは新しい使用法を承認した。この治験は,5 年以内に乳癌を発症する可能性が1.7%以上である女性 1 万3,388例を対象としたものであった。この治験の結果から,タモキシフェンを 5 年間投与された女性では,次の5 年間の発癌リスクは1.3%となった。これに対して,プラセボを投与された女性のリスクは2.6%と 2 倍も高く,タモキシフェンによって相対リスクが49%低減したことが示された。
 しかし,高リスクの女性2,471例を対象とした英国での治験が同時に実施され,タモキシフェンにはこのような効果がないことが示された。さらに,同薬には次のようなリスクがある。
(1)ASCO報告書によると,いくつかの大規模試験では,タモキシフェン投与群は,プラセボ投与群より子宮体癌の発癌率が 2 倍以上高かった。 (2)血管系の合併症も懸念される。5,400例の女性を対象としたイタリアの治験では,タモキシフェンを投与された50歳以上の女性では,プラセボ群の同年齢の女性に比べ脳卒中の発生率がほぼ 2 倍高かった。全年齢層で,タモキシフェン投与患者の肺塞栓症の発生率は 3 倍高かった。
 ASCO専門委員会は,1990〜98年のタモキシフェンに関する全臨床試験データを検討し,大部分の治験はタモキシフェンの恩恵を確認するものであると結論した。また,リスクについては,例えば子宮体癌は塗抹細胞診および異常出血の徹底的評価を含む,毎年の婦人科検診で対処できるとした。

乳房撮影も重要
 ASCO会議で発表された別の報告によると,タモキシフェンは前癌性の細胞増殖,特に同所発生の小葉上皮内癌あるいは異型過形成を有する女性の発癌リスクを低減させる可能性があるという。  ボストン医療センター(ボストン)のDonald L. Wickerham博士は「われわれの研究チームが,BCPTの小葉上皮内癌あるいは異型過形成を有する女性2,019例を対象とした研究を行ったところ,タモキシフェンの投与によって乳癌リスクが実質的に低減した」と報告した。
 小葉上皮内癌を有する女性では,タモキシフェン投与により癌再発リスクはプラセボ患者に比べ66%低下。異型過形成の女性では,相対リスクが86%低下した。  同博士は「医師は,このような女性を特定し助言を与える必要がある。これら患者にタモキシフェンを勧めると同時に,定期的な乳房撮影の重要性を強調すべきである」と述べた。  Chlebowski部長も「医師は高リスクの全女性に,タモキシフェンが唯一の選択肢ではないことを必ず知らせるべきである。乳房撮影を受けるほうがさらに確実な効果がある」と強調した。
 また同部長は,自身の研究チームによる研究結果を報告した。「タモキシフェンが骨損失に対してわずかながら保護作用を示し,脂質の低減にも役立つことが示されたが心疾患の予防作用は証明されず,以前タモキシフェンが示すと考えられていた付随的効果には及ばなかった。医師はタモキシフェンのおもな恩恵は乳癌リスクの低減のみであると考えるべきである。そして,乳癌リスクとタモキシフェン使用リスクのどちらに重きを置くかを決定するのは,医師と患者である」としている。
 同部長らは,骨粗鬆症治療薬であるraloxifeneの乳癌リスク低減効果について現在研究中であるが,臨床ではまだ使用できないことを報告した。乳癌予防用として使用するには,同薬のデータは不十分で,同部長によると,乳癌リスク低減効果についてraloxifene投与を受けているのはわずか62例の女性である。
キーワード 【タモキシフェン】

[1999年11月4日]
(Medical Tribune Vol.32, No.44, )【放射線照射で乳癌の再発率が低下】
非浸潤性は13〜31%の低下
〔ニューヨーク〕 全米外科的アジュバント乳腺・腸プロジェクト(NSABP)のプロトコールB-17臨床研究の最新報告が発表された。今回の臨床研究を主導しているNSABP病理センター(ペンシルベニア州ピッツバーグ)のEdwin R. Fisher博士は,Cancerの8月1日号に「研究開始後8年目の今回の検討で,乳癌切除後に放射線照射を実施した非浸潤性乳癌患者では,再発率が13〜31%低下した」と報告した。計画では,この臨床研究の継続期間は20年以上とされている。

有意な予測因子はコメド壊死
 今回の報告で,Fisher博士は,再発巣が浸潤性であるかどうかを予測できるような特徴は見出せなかったものの,コメド壊死と呼ばれる原発腫瘍の状態が,癌再発の有意な予測因子であることを明らかにした。  研究対象となったのは,腺管内癌または非浸潤性乳管癌(DCIS)で,乳房温存術を受けた女性である。  中等度または顕著なコメド壊死が認められた女性では,8 年再発率は40%と予測された。しかし,放射線治療を行った患者では,再発率は14%にとどまった。コメド壊死が軽度,または認められない女性では,再発率は23%であったが,放射線治療実施例では13%となった。
再発の定義は,原発巣と同側の乳房における癌の再発とした。 試験の対象となった女性623例全体における癌の再発率は22%であった。再発症例の約40%は浸潤性であった。

 インタビューにおいて,同博士は,「癌再発時に浸潤性が高いにもかかわらず,生存率が高かったのは良い知らせだ」と発表。論文中でも「 8 年間の試験期間中の総死亡率はわずか1.6%だ。DCIS患者における乳房切除術の必要性を裏づける研究データは得られていない」と強調している。
 ノースウエスタン大学(イリノイ州シカゴ)Lynn Sage乳腺センター外科のMonica Morrow博士は,同誌の論評において,「今回の知見は,患者や担当医が,最良の治療法を決定するうえで有用なものとなるだろう。今回の試験によって,個々のDC IS患者が,どのレベルまでならリスクを受け入れられるかを個人的に決定し,それに見合う治療法を選択するのを助けるうえで,貴重なデータが得られた」と称賛している。

“歓迎すべき結果”
 その一方で,Morrow博士は「プロトコールB-17は批判されがちであった」と指摘。「そのおもな理由は,DC ISの評価技術が,今回の試験の参加者を最初に選択したときから,変化してきているからだ」と述べた。さらに同博士は,乳房温存術後の断端の状態に基づいて評価したとき,なぜ再発率に差が見られなかったのかについてもコメントしている。
 Fisher博士らは「それは,試験では早期の再発者が多かったためだろう」と述べた。しかし,Morrow博士は「今回の試験で用いた断端の評価技術が不正確だったことのほうが深く関係しているのではないか」と疑っている。  それでも,同博士は「こうした限界はあるものの,NSABPのB-17データベースは,同一治療を受けて,プロスペクティブな評価を受けた最大の無作為の患者群だ」と評価。「特に,高リスクDCISおよび低リスクDCISを差別化するのに必要な情報がないことを考えると,今回の臨床試験の最近の評価結果は歓迎すべきものだ」と述べた。
キーワード 【放射線照射・乳癌の再発率】

[1999年11月18日]
(Medical Tribune Vol.32, No.46, )【治療中の癌患者にも運動が有効】
〔ニューヨーク〕 アルバータ大学(カナダ・アルバータ州エドモントン)身体教育部のKerry S. Courneya教授は,24の医学研究論文を調査し,化学療法あるいは放射線療法を受けている癌患者でも,大部分の患者は運動プログラムから恩恵を受けることができることをAnnals of Behavioral Medicine(21:171-179)に報告した。

身体的機能,QOLなどが改善
 Courneya教授は「最初の反応は『そんなことを提案するのは気違いじみている』というものだった。これらの患者は,癌を治療するために化学療法や放射線療法を受けているので,リラックスして何もすべきではないと教えられている」と述べた。しかし,今回の調査によると,運動は癌患者の身体的機能およびQOLを改善し,体力および持久力も改善することが一貫して示された。  同教授は「運動は疲労や抑うつを軽減する。しかし,ほとんどの腫瘍専門医は患者に,化学療法の間はのんびりして安静にするよう勧めている。これによって悪循環が続き,化学療法による疲労の原因となる。したがって,現在の腫瘍専門医の勧告は,実際に疲労およびエネルギーの欠如というさらなる問題をつくり出している」と述べた。
 同教授は癌治療における運動の役割に対する認識を,30〜40年前の心疾患治療における運動に対する認識になぞらえた。「当時,心臓病の患者はベッドに寝かされ,のんびりするよう言われていた。今や最初に行うべきこと,させるべきことは運動である」。癌治療での運動は,おもに20〜30分のウォーキングあるいは固定自転車こぎで構成されている。
 同教授によると,運動は全体的な健康感覚を向上させるほか,多くの癌に直接作用する可能性があるという。現在,運動が生存率に関与しているという直接の証拠はない。しかし,運動によって細胞数および細胞活性が増加するので免疫系が改善し,このことが癌の進行および増殖に関与する可能性があるという。  運動による第 2 の効果発現機序は,内分泌系が癌に影響を及ぼすことが考えられる。ホルモンは乳癌,前立腺癌,子宮癌,精巣癌の発生において重要な役割を果たしている。同教授は「運動は,癌に関与するホルモン環境を変化させる可能性がある」と述べた。例えば,運動はエストロゲン濃度を低下させるが,高エストロゲン濃度は乳癌に関与する。
 同教授は,調査した研究の大部分はサンプルサイズが小さく,多くの研究は結論を出すには期間が短すぎると認めたが,さらなる調査を行うに十分な,確固たるものであった。

気分が良くなり苦痛和らぐ
 ブラウン大学(ロードアイランド州プロビデンス)精神医学・人間行動科のBernadine Pinto助教授は「運動は,しすぎない限り,ほとんど欠点がない」とコメント。同助教授は運動と乳癌患者について調査を行っており,「乳癌生存者における運動およびリハビリテーション」と題する論文をPsyco-Oncology(8:191-206)に発表した。
 同助教授は「運動によって,患者は気分が良くなり,苦痛が和らぐようだ」と述べ,いくつかのデータは,運動は化学療法による体重増加を予防する可能性を示唆していると指摘。「治療中,患者は他人の指示に従わなければならないが,運動することで自分の好きなようにすることができる」と述べた。  ジョンズホプキンス腫瘍学センター(メリーランド州ボルティモア)腫瘍看護研究部のVirginia Mock部長は「おもな癌センターは,患者に運動するよう勧め始めた。癌患者を治療する地域の医師にこの情報が普及するまでにはもう少し時間がかかるだろう。米国では,医師がいまだ癌患者にのんびりするよう勧めているところが多いだろう」と述べた。
 同部長は,治療を受けていても癌患者に適切な運動として,自己ペースで行う 1 日30分までのウォーキングプログラムがあると述べた。運動は患者の耐久力や全体的な健康維持に役立つだけでなく,化学療法や放射線療法に対して患者が肉体的により良く耐容できるようにする。もちろん,患者には安静が必要だが活動も必要だ。しかし,すべての癌患者に運動が適切であるわけではない。血球数が低すぎる場合,あるいは癌が骨に転移している場合は,運動量を軽減すべきである」と述べた。
キーワード 【運動プログラムが化学療法あるいは放射線療法にも良い】







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1999-05〜1999-12記事