1998-06〜1998-12記事

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00(Medical Tribuneなどの記事)【はじめに】今まで 一般(どなたでも)参照可能であったMedical Tribuneの記事が2000年9月28日から、メディプロという会員制(ID+パスワードが必要)サイト内に移行してしまいました。
情報公開IT革命という世の中に於て、残念でなりません。そこで乳癌に関連したニュース (一般雑誌より参考になり得る情報)をここにセレクトし、upしました。  尚、ここに転記したり転載したる責任の所在は吉利です。 Medical Tribune誌関連の方、もし転載に問題がございましたら、 webmaster@prodr.com(吉利)までお願いします。

☆(Medical Tribune Vol.31, No.10,)【心理療法で乳癌患者の予後が改善】
米国放射線療法・腫瘍学会の年次集会での研究、スタンフォード大学精神科のDavid Spiegel教授らは、 乳癌患者に心理療法が有用であることを示唆する報告をした。教授らは、1年間の集団心理療法を受けた 転移性乳癌患者と受けなかった症例について、集団心理サポート療法が患者に及ぼす生理的効果を分析し 両群の生存率とクォリティオブライフ因子を比較した。

結果:集団心理療法を受けた症例群は受けなかった症例群と比較し平均して18ヶ月も長く生存した。

注記:このことは、乳癌というホルモンの関係する腫瘍では、心理的なサポートが重要に思われる。 この逆の反論報告は2000-11/5現在報告されていない。故にHANAさんBBSのポリシーが正しいと思う。
Spiegel教授の報告をサポートしている本:HANAさん推薦のこの一冊; ディーン・オーニッシュ著「愛は寿命をのばす - からだを癒すラブ・パワーの実証的研究 - 」 光文社
キーワード 【乳癌・心理的サポート】このDavid Spiegel教授の記事を元に、雑誌より転載しています。

(Medical Tribune Vol.31, No.25, )【乳癌患者への放射線療法が食道癌リスクを上昇させる恐れ】
〔ニューヨーク〕 コロンビア大学(ニューヨーク)コロンビア長老教会派医療センター公衆衛生学のHabibul Ahsan博士らは『Annals of Internal Medicine』(128:114-117)で「放射線治療を受けた乳癌後生存患者で食道癌発症リスクが上昇する恐れがある」と報告した。

放射線治療歴古い患者は要注意
吉利要約:Ahsan博士らが乳癌患者22万806例を対象に行った調査によると,放射線治療を受けた患者の食道癌発症率は受けなかった患者の 5 倍だったという。特に喫煙または飲酒習慣を有する患者は注意を要する」と述べた。

注釈寸評”喫煙,飲酒,線量のデータがない
今回の研究対象は,“Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)”データベースに医療記録が登録されている,1973年 1 月〜93年12月に乳癌と診断された患者。この集団における食道癌発症率の上昇が,少なくとも部分的には喫煙または飲酒に関係している可能性を除外することができない」。
データベースに放射線量に関する情報がなかったことであるとし,「食道癌発症率が放射線量の増加と ともに上昇することを示すことができれば,より説得力が高まっただろう」。 の論あり
キーワード 【放射線療法と食道癌 の論】読み飛ばしてください

(Medical Tribune Vol.31, No.27, )【乳房X線検査は月経周期2週目に】
〔独チュービンゲン〕 チュービンゲン大学病院放射線診断科のMarkus Mller-Schimpfle博士は『Der Radiologe』(37:718-725,1997)で「閉経前の女性に癌スクリーニングの一環として乳房X線検査を実施する場合には,検査日が月経周期の 2 週目に当たるよう配慮すべきである」と報告。同博士は,文献を詳細にレビューするとともに独自に研究を行い,乳房X線検査に最適な時期を割り出したとしている。

ホルモンによる乳房の変化は,とりわけ月経周期の後半に,水分貯留量や乳腺体積の増大として現れる。しかし,こうなると実質が厚くなり,癌の早期発見は困難になってしまう。このため,乳房X線検査の実施には月経周期の前半が適している。ただし,月経終了後 7 日目までは,まだ乳腺体積が縮小しつつあるため,同検査には適していないという。
キーワード 【乳房X線検査は月経周期2週目】読み飛ばしてください

(Medical Tribune Vol.31, No.28, )【“全女性患者にタモキシフェン処方”は疑問】NCIが警告
〔ワシントンD.C.〕 米国立癌研究所(NCI,メリーランド州ベセズダ)は先ごろ当地で,タモキシフェンは乳癌の予防に役立つが,致命的な副作用のリスクを増加させる可能性があると警告した。したがって,医師はこの薬剤を処方する前に女性患者とこの問題を十分に話し合い,個々の患者のリスクファクターを吟味しなければならない。

臨床試験は中止
NCIのRichard Klausner所長によると,4 月下旬,NCIはタモキシフェンが乳癌のリスクを45%減少させるとする証拠は強力なので,プラセボを対照とした大規模臨床試験を続行するのは倫理に反するとして同試験を中止した。
この乳癌予防臨床試験には,60歳以上で乳癌の家族歴があるか,または乳房生検の際に非定型過形成が認められたため,乳癌発症リスクが高いと判定された米国およびカナダの女性 1 万3,388例が参加した。試験に参加した女性は,今ではタモキシフェンと無効なプラセボのいずれを服用したかが分かっており,60歳の女性では約1.7%が 5 年以内に乳癌を発症することが予想されている。
同所長は,タモキシフェンを服用した女性は試験の予定期間であった 5 年間服用を続けることが望ましく,プラセボを服用した女性はタモキシフェンを服用するか,raloxifenなどの副作用がより少ないと考えられている同様の薬剤とタモキシフェンとを比較する別の癌予防臨床試験に参加するのが望ましい,と述べた。
タモキシフェン癌予防臨床試験を実施した全米外科的アジュバント・乳房腸プロジェクト(ペンシルベニア州ピッツバーグ)のBernard Fisher首席治験責任医師は「この臨床試験によって,史上初めて乳癌は治療できるのみならず,予防すらできることが示された」と語った。

全女性に対する有用性は不明
一方,Fisher医師は「タモキシフェンはどの患者に最も有用であるか,どれくらいの期間にわたって服用しなければならないかなど,答えるべき疑問は無数に残されている。しかし,これらは結果を左右するものではない。なお,タモキシフェンは肺塞栓などの致命的な副作用を引き起こすことがあり,また子宮体癌のリスクを増加させるので,乳癌発症リスクの高い女性も含めすべての女性に適用できるとは限らない」としている。
以前の研究では,タモキシフェンは乳癌を治療して経過が良好な患者の乳癌再発率を低下させることが示されている。しかし,乳癌発症リスクが平均より高い健常女性にも有用かどうかは分かっていなかった。 ワシントンD.C.に本拠地を有する全米女性保健ネットワークのCynthia Pearson理事は「高リスクの健常女性にも有用なら,われわれもおおいに称賛する。しかし,まだ回答されていないいくつかの疑問が存在する。例えば,乳癌に罹患した女性の大多数はハイリスク集団に含まれていない。この問題はどのようにして折り合いをつけるのか」と述べた。

米国臨床腫瘍学会(ASCO)代表でペンシルベニア大学癌センター(ペンシルベニア州フィラデルフィア)のLynn M. Schuchter准教授は「これは非常に重要な臨床試験成績であるが,われわれはまだ魔法の薬剤を手にしているわけではない。これはすべての女性向けの薬剤ではなく,また乳癌発症リスクの高い女性のすべてが服用できる薬剤ですらない」と述べ,女性は乳癌発症リスクを過大評価する場合が多い,と付け加えた。
キーワード 【乳癌予防にタモキシフェン論争】

(Medical Tribune Vol.31, No.30, )【元ファーストレディの影響で乳房切除が増加】
〔ニューヨーク〕 1987年に,レーガン大統領夫人(当時)のナンシー・レーガンさんが乳房切除術を受けたことが,同治療を受ける女性の増加につながった,との研究結果が『Journal of the American Medical Association』(JAMA,279:762-766)に発表された。研究を報告したウィスコンシン医科大学(ミルウォーキー)のAnn Butler Nattinger博士らは,米国人は有名人がどのような医療を選択したかに影響されるようだ,としている。
同博士によると,健康習慣の動向には,有名人が影響する可能性があると考えられ,有名人を使って健康習慣の促進が行われてきた。しかし,医療的決断に対して,有名人の示した模範がどのような影響を与えるかは,ほとんど知られていなかった。

6か月間で温存術25%減少
Nattinger博士らは乳癌女性16万2,000名以上の記録を調べ,元ファーストレディのナンシー・レーガン夫人が1987年10月に,温存手術ではなく拡大切除術を選択したことによる影響を検討した。 その結果,レーガン夫人の手術の 3 か月前と比較し,夫人の術後 6 か月の間に乳房温存療法を選択する女性の数が25%減少(その分拡大切除が増加)したことが分かった。全米規模の数字に置き換えると,夫人の手術の後 6 か月間に,温存手術を受ける女性が予想より3,400名減少したことになる。
しかし,その 6 か月後には,温存療法を選択する女性の数は増加し,夫人の手術前と同等のところまで復帰した。同博士らは「レーガン夫人の手術の影響が最も大きかったのは,夫人と似通った条件,つまり50〜79歳の白人女性で,これより高齢または若齢の女性,あるいは白人以外の女性とは対照的だった」と述べた。
キーワード 【ファーストレディの術式に影響される?】

(Medical Tribune Vol.31, No.33, )【タモキシフェンの乳癌一次予防作用に疑問符】
〔ロンドン〕 本年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)でも議論を呼んだタモキシフェン(TAM)の乳癌一次予防作用に,疑問を投げかける研究が『Lancet』(352:93-101)に報告された。
ヨーロッパ腫瘍研究所(イタリア)のU. Veronesi教授らが,乳癌の既往がない子宮摘出術施行患者5,408例(平均年齢51歳)を対象に,同薬20mg/日の乳癌予防効果を無作為二重盲検試験で検討したところ,乳癌発症はTAM群19例,プラセボ群22例で有意差はなかった。
一方,ロイヤル・マーズデン国家医療制度トラスト(英国)のT. Powles博士らは,乳癌の家族歴を有する健常女性2,494例を対象に同様の試験を行い(追跡期間中央値:70か月),両群間に乳癌発症の有意差を認めなかった(TAM:34例,プラセボ:36例)。
これらの結果は,TAM投与により乳癌発症が45%減少したとするNSABP-P1試験の結果と相反するようにも見えるが,同号の論評ではこの違いは,
(1)Veronesi教授らの試験ではコンプライアンスが悪く,60歳未満の女性が多かった
(2)Powles博士らの研究でも若年層,低リスク群が多く,また観察期間が長すぎて治療効果が消えてしまったこと,

によるものであろうとする一方,乳癌予防のための安易なTAM投与に一石を投じる成績であることは認めている。
キーワード 【タモキシフェンの乳癌一次予防作用に疑問】

(Medical Tribune Vol.31, No.33, )【遺伝子工学による新薬】化療との併用で乳癌を退縮
〔ロサンゼルス〕 レブロン/カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA,カリフォルニア州ロサンゼルス)女性腫瘍研究プログラムの責任者であるDennis Slamon主任研究員は「標準的な化学療法と遺伝子工学による新薬の併用によって,約30%の乳癌患者で乳癌の退縮や腫瘍増殖の遅延が見られた」と報告した。当地で開かれた米国臨床腫瘍学会(ASCO,ロサンゼルス)の年次集会で明らかにしたもの。

癌細胞に対する抗体
まだ上市されてはいないが,Herceptinと呼ばれるこの新薬は癌細胞でHER2/neuという遺伝子が過剰発現している患者に効果がある。これは,ヒトの体内で働くことが示された最初のバイオ薬の 1 つである。Herceptinはモノクローナル抗体であり,小さな誘導ミサイルのように働いてHER2/neu遺伝子が腫瘍細胞に「増殖しろ」という指令を送るのを妨げる。
乳癌患者469例を対象とした2.5年の試験では,標準的な化学療法にHerceptinを併用した乳癌患者の49%で腫瘍が退縮したのに対し,化学療法のみを行った患者では32%であった。この試験では,Herceptinと化学療法を併用していた患者の 1 年生存率は78%,化学療法のみを受けていた患者では67%であることが示された。

癌細胞だけに作用
Slamon研究員は「Herceptinは,特異的な遺伝子の変化を標的にする腫瘍の治療法として初めて成功したもので,腫瘍細胞と健康な細胞の両方を殺すショットガンアプローチとは大きく異なる。Genentech社(サンフランシスコ)が開発中の同薬は年内に米食品医薬品局(FDA,メリーランド州ロックビル)から認可を受けられるだろう」と述べた。
同集会で発表された別の一連の研究によると,Herceptinは単独でも効果があるが,化学療法と併用するといっそうの効果があるという。
同研究員は「この薬剤はHER2/neu遺伝子が過剰発現している患者のすべてに効くわけではない。この型の乳癌患者のなかで,この新薬が最も効く患者を明らかにするためにはさらに研究が必要である」と警告している。同研究員によると,患者がこのタイプの乳癌であるかどうかはHER2/neuの血液検査を受ければ判明するという。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校(サンフランシスコ)のCraig Henderson博士は「この結果は非常に素晴らしい。彼らが示したのは“未来への第一歩”だ」と述べた。
ダナ・ファーバー癌研究所成人腫瘍部門(ボストン)の教育副主任でもある,ASCOのRobert J. Mayer会長は「Herceptinのような新薬と新しい腫瘍治療アプローチは,腫瘍細胞に対する全く新しい革新的な対処法であるが,既存の治療の代替法としてではなく,ルーチンの化学療法と併用し腫瘍細胞の根絶や再発予防を助ける」という。
Herceptinはわずかしかつくられないため,抽選で年間400例分しか供給できない。
キーワード 【Herceptinの話題】

(Medical Tribune Vol.31, No.39, )【飲酒で乳癌のリスクが上昇】
吉利略記:〔ニューヨーク〕 ハーバード大学公衆衛生学部(ボストン)の栄養研究者Stephanie A. Smith-Warner博士らは,これまでで最も大規模な研究を行い,少量でも毎日飲酒する女性は乳癌になるリスクが高いことを明らかにした。
この知見は『Journal of the American Medical Association』(JAMA,279:535-540)に報告された。ニューヨーク州立大学バッファロー校(ニューヨーク州バッファロー)社会予防医学のMaurizio Trevisan主任も「 1 日 2 〜 3 杯の飲酒によって,乳癌のリスクは有意なレベル以上に大きく増加する」と同じ見解である。
キーワード 【飲酒と乳癌のリスク】読み飛ばしてください

(Medical Tribune Vol.31, No.44, )【骨粗鬆症治療薬で乳癌の骨転移減少】
新規の腫瘍発生も非投与群の半数に
〔ニューヨーク〕 ハイデルベルク大学のIngo J. Diel博士らは「骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネート製剤,clodronateを乳癌患者に投与することによって,新規の骨転移および内臓転移が劇的に減少した」と『New England Journal of Medicine』(339:357-362)に報告した。
抗癌薬としての作用示す
Diel博士らによると,骨転移リスクを有する乳癌患者302例を対象とした試験の結果,clodronate投与群では,新規の腫瘍発生が非投与群の半数にとどまったという。 同博士らは,乳癌治療として標準的外科療法,ホルモン療法,または化学療法を受けた女性302例を 2 群に分け,157例にclodronate1,600mg/日を 2 年間投与した。145例はclodronateを投与しない対照群とした。
その結果,新規の骨転移を認めた患者は,clodronate投与群で21例(13%)であったのに対して,対照群では42例(29%)であった。患者の死亡は,clodronate投与群で 6 例(3.8%)であったのに対して,非投与群では22例(15%)であった。さらに,他の臓器における新規の癌性増殖の発生率も,clodronate群のほうが低かった。
テキサス大学保健科学センター(テキサス州サンアントニオ)骨・ミネラル代謝学のGregory R. Mundy教授は付随論評で「今回の研究は,clodronateが乳癌に随伴する疼痛や骨折などの骨合併症を予防するだけでなく,抗癌薬としての作用を発揮して新たな腫瘍の発生を減少させることを示している」とコメント。「clodronateになぜそうした働きがあるのかは明確に分かっていないが,抗癌薬のように腫瘍細胞に対して直接作用するのか,あるいは,骨環境を変化させて腫瘍細胞の増殖を抑制するのか,のいずれかであろうと推測されている」と説明した。

汎用されるパミドロン酸
Clodronateは経口薬で米国ではまだ上市されていないが,同様の薬剤パミドロン酸が,骨髄腫や乳癌を原因とする骨疾患の治療薬として数年前に米食品医薬品局(FDA)により認可されている。 Mundy教授は「これらの薬剤は非常に安全で副作用はわずかである。癌の骨転移を来した患者に同薬を使用しない理由は見つからない」と述べた。
同教授によると,骨髄腫患者の約70%がパミドロン酸の投与を受けているという。「骨髄腫患者はインターネットでパミドロン酸を知り,医師に投与を希望してくる。乳癌患者にはまだそれほど投与されていないと思う。今回のような報告は大きな影響力を持つであろう。骨合併症を発症していない患者は同薬の適応とはならないかもしれない」と同教授は述べた。

“研究規模が比較的小さい”
これに対して,ジョージタウン大学(ワシントンD.C.)ロンバルディ癌センターのDaniel Hayes臨床部長はより慎重な姿勢で,「これは非常に興味深い研究であるが,直ちに正しいと断言することはできない。なぜなら,研究規模が比較的小さいからだ」とコメント。「今回の研究が過去の研究と著しく異なっている点は,肝や肺など骨以外の臓器への転移も減少し,死亡率も低下したと報告している点である」と述べた。
同部長は今回の知見を説明する仮説として,「骨における新規の癌性増殖が,他臓器への転移の源として機能する可能性がある。したがって,骨転移巣を抑制することによって他臓器での癌性増殖も抑制するのかもしれない。あるいは,ビスホスホネート製剤がなんらかの未知の作用によって,癌性増殖の土壌としての他臓器に変化をもたらすのかもしれない」との 2 説を挙げている。
同部長は「今回の研究よりも規模が大きい英国の最近の研究では,骨以外の部位における腫瘍の減少および死亡率の低下は認められなかった」と指摘。「clodronate療法が直ちに標準的治療法となるかどうかは現時点では不明である。今回の知見が正しいことを期待するが,さらなるデータの蓄積を待つ必要がある」と述べた。
キーワード 【骨粗鬆症治療薬で乳癌の骨転移減少の話題】

(Medical Tribune Vol.31, No.44, )【乳癌の術前化学療法の有用性確認】
〔ニューヨーク〕 アレガニー大学(ペンシルベニア州ピッツバーグ)のBernard Fisher博士らは『Journal of Clinical Oncology』(16:1-14)に,同博士が主宰する 5 年間の全米外科的アジュバント乳腺・腸プロジェクト(NSABP)から得られた所見を発表した。

切除術必要なケース少ない
乳房切除術をできるだけ回避することを目的として,乳癌患者に対する術前化学療法が増加傾向にあるが,Fisher博士らの所見はこれを支持するもの。術前化学療法を受けた患者は,術後化学療法を受けた患者に比べて乳房切除術が必要になるケースが少なく,生存率の低下も見られないことが示された。
同博士らは乳癌患者1,532例を対象とし,術前療法群と術後療法群に分けた。化学療法薬の組み合わせは全患者で統一した。乳房温存術を受けた患者の割合は,術後療法群では60%,術前療法群では68%だった。
5 年間のフォローアップから,術前療法群の無病生存率は66.7%で,術後療法群の67.3%とほぼ同等であることが分かった。同博士は「この研究から,通常は術後に行う治療を術前に行っても,総体的な結果は変わらないことが最終的に示された。また,術前療法群の80%において,腫瘍の完全消失あるいは50%の縮小が認められた」と述べた。

術前の腫瘍の大きさも問題となるが,同博士は「この研究の開始時点の腫瘍サイズは,全患者の28%で 2 cm以下,13%で5.1cm以上だった。このような患者には術前化学療法を試みるべきだ。術前に癌を効果的に治療でき,乳房を温存することができる」と説明した。
テキサス大学MDアンダーソン癌センター(テキサス州ヒューストン)乳腺外科のEva Singletary部長も「非常に時宜を得た所見だ。現在の乳癌治療の傾向として,すべての乳癌患者に対して術前化学療法を標準とする方向に動いており,この研究はそれを支持するものだ」と賛成意見を述べた。ただし,両氏とも「やはり乳房切除術が必要な患者もあり,術後化学療法を必要とする患者も多い」としている。
キーワード 【乳癌の術前化学療法】

(Medical Tribune Vol.31, No.49, )【FDA タモキシフェンを乳癌予防薬として承認】
――大規模臨床試験を中止――
〔米メリーランド州ベセズダ〕 米食品医薬品局(FDA)の抗癌薬諮問委員会は,現在は健康だが乳癌のリスクが高い女性に対して乳癌予防を目的としたタモキシフェンの使用を承認するよう勧告していたが,FDAは10月29日,同薬を初の乳癌予防薬として承認した。勧告は重大な副作用が認められることから,慎重な態度で行われていた。

“健常者への投与”は初めて
タモキシフェンは,乳癌の治療および再発防止に長年使われてきた薬剤。今年に入って,米国立癌研究所(NCI,ベセズダ)は,「タモキシフェンに乳癌発症のリスクを44%も低下させることを示唆する知見が得られ,これ以上の試験継続は倫理に反すると判断せざるをえなかった」として,同薬の大規模臨床試験を中止した。
諮問委員会では「治療の対象者が明確にされていない。NCIの臨床試験の参加者は,全例が乳癌発症のリスクが平均よりも高い女性だ」とする意見もあった。
同委員会の議長を務めるMontefiore医療センター(ニューヨーク州ブロンクス)のJanice Dutcher教授は「タモキシフェンが乳癌予防薬として上市されると,たとえ不適切な使用であっても,乳癌のリスクが低い女性たちも投与を望むかもしれない」と指摘。「タモキシフェンは,深部静脈血栓症や肺塞栓症のリスクを 3 倍に,子宮体癌のリスクを 2 倍に高めるうえ,白内障のリスクまで増大させる」など,重大な副作用が認められることから,同委員会は慎重な態度で勧告を行っていた。
NCIの臨床試験において,6,700例近くの女性が 5 年間タモキシフェンを服用し続けたが,プラセボ群6,700例と比較すると,乳癌予防の効果が認められたのは70例であった。

−−低用量のタモキシフェン−−
高齢乳癌患者の骨折予防に有用
〔ニューヨーク〕 Jewish Home and Hospital研究部門の副部長で,マウントサイナイ医科大学(ともにニューヨーク)老年医学・成人病部門のスタッフでもあるBrenda Breuer博士は「エストロゲンは悪性腫瘍のリスクを引き上げるため,高齢の乳癌患者には骨強化を目的としたエストロゲン補充療法を実施することができないが,通常より低用量のタモキシフェン投与が高齢の乳癌患者の骨折防止に役立つかもしれない」と『Journal of the American Geriatric Society』(46:968-972)に発表した。

10mg/日で骨折率が低下
Breuer博士らは,ナーシングホームで生活する乳癌患者 9 万3,031例を対象とした試験を実施。その結果,低用量(10mg/日)タモキシフェン群の患者の骨折率は,非投与群に比べ低下していた。しかし,標準用量(20mg/日)のタモキシフェン群では,骨折に対する保護作用は認められなかった。
同博士は「タモキシフェンは,骨密度を安定化することにより骨折のリスクを低減すると考えられるが,なぜ低用量のタモキシフェンのみにこのような保護作用があるのかは不明だ」と述べた。
クロスセクション試験で,タモキシフェンを投与しない対照群の骨折率は7.62%であったのに対し,タモキシフェン10mg投与群では3.2%,同20mg群では6.73%であった。大腿骨頸部骨折に限れば,各群の骨折率はそれぞれ4.98%,2.4%および4.57%であった。

標準用量では多すぎる?
Breuer博士は「今回の知見から,新たなタモキシフェンの効果が明らかになった。女性の骨折率について言えば,タモキシフェンは従来の推奨用量の半分の用量で,より効果的だ」と報告。「薬物の代謝・排泄が若年層ほど速くない高齢患者では,標準用量は多すぎるのかもしれない。例えば,タモキシフェン20mg群の高齢女性は抑うつを訴えたが,投与量を減らすと抑うつ症状は消失した」と述べた。
同博士はインタビューに応えて「来るべき臨床試験〔タモキシフェンとraloxifene(Evista,EliLilly社)を比較〕の実施者が,10mgの治療選択肢も設定するよう希望する」と述べた。これは,この秋から実施されるStudy of Tamoxifen and Raloxifene(STAR)を指しており,この試験では 2 万2,000例の閉経後女性の参加を見込んでいる。
さらに,同博士は「低用量のタモキシフェンが乳癌の再発や対側乳腺における乳癌発症を防止するかどうかの知見は得られていない」としている。

若年層では50%の骨折率低下
タモキシフェンの開発に携わったニューウエスタン大学(イリノイ州シカゴ)Lurie Comprehensive Cancer Centerで行われているLynn Sage乳癌研究プログラムのV. Craig Jordan部長は「高齢の患者では,骨に対する効果がさらに顕著になることを期待していたので,今回の結果には驚いた。乳癌のリスクが高い,より若い年齢層の女性を対象とした予防試験の結果が先ごろ発表されたが,それによると,タモキシフ ェンにより大腿骨骨折のリスクが約50%低下している」と報告。「ナーシングホームで暮らしているタモキシフェンによる乳癌治療下の患者には,同薬の骨に対する効果が最大限発揮されるように,重力負荷のかかる骨強化運動が必要かもしれない」と述べた。
また,同部長は「しかし,今回の試験の対象となった女性は末期乳癌の患者で,既に骨転移しているかもしれず,そのため骨折率に影響が出たとも考えられる」と考察。「今回の試験の対象者とタモキシフェンによる予防試験の対象者は,全く異なっている」と強調した。
キーワード 【FDA タモキシフェンを乳癌予防薬として承認】

(Medical Tribune Vol.31, No.49, )【BRCA遺伝子を持つ若年女性】
予防的外科手術で生存年数延長の可能性
〔ニューヨーク〕 1994年にBRCA1遺伝子が発見されてから,臨床医や研究者は検査で突然変異陽性であることが判明した患者をどのように扱うかという問題に取り組んできたが,コロンビア大学(ニューヨーク)ハーバートアービング総合癌センターの健康転帰研究責任者,Victor R. Grann内科臨床准教授らは「少なくとも,乳癌遺伝子を持つハイリスクの若年女性では,予防的外科手術を行うことによって,乳癌のスクリーニング試験や頻繁なサーベイランスを行うよりも生存年数が延長すると思われる」ことを示唆する研究結果を『Journal of Clinical Oncology』(16:979-985)に発表した。

手術はQOLとの兼ね合いで
Grann准教授らは,数学的モデルとこれまでの研究のデータを利用して,検査により突然変異BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子が陽性であることが判明した後に予防的な乳房切除術と卵巣摘出術の双方を受けた30歳の女性では,患者の全般的なリスクに応じて余命が 6 年程度延びる可能性があると推定した。両手術のうち一方のみを受けた患者でも,両方とも受けた患者ほどではないものの,生存年数が延びると思われる。
しかし,同准教授らは「予防的手術によって生存年数が延びても,身体の外観の変化,女性であるという意識の減弱,手術による肉体的不快感または更年期の早期発現のために,患者のQOLが実質的に低下することが予想される」としている。そのため,「予防的手術で寿命の延長が期待できるという情報を患者に与え,患者自身に選択の判断を委ねるべきだ」と述べた。
この研究チームは,米国立癌研究所(メリーランド州ベセズダ)により19年にわたって行われたSEER(Sur-veillance,Epidemiology,and End Results)のデータを分析したもので,データからは,癌の家族歴とこの遺伝子の突然変異コピーを有する女性は70歳までに85%の確率で乳癌を発症し,63%の確率で卵巣癌を発症することが示されている。アシュケナジユダヤ人では,この遺伝子を有する女性が70歳までに 乳癌および卵巣癌を発症する確率はそれぞれ,56%および16%であった。
しかし,これまでの研究から,予防的外科手術により,乳癌のリスクが90%,卵巣癌のリスクが50%低下する可能性のあることが示唆されている。この情報を用いてGrann准教授の研究チームは,家族歴およびこの遺伝子を有する女性では予防的乳房切除術および卵巣摘出術の双方により生存年数が 6 年延長すると推定した。アシュケナジユダヤ人女性では,これらの手術により生存年数が4.5年延長する可能性がある。

ハイリスク群では有効
同准教授らはさらに,quality-adjusted life-years(QALY=質で調整した生存年数)に対する予防的手術の影響を検討し,卵巣摘出術を単独で行った場合と,卵巣摘出術および予防的乳房切除術の双方を行った場合に,QALYがそれぞれ0.5および1.9延長すると決定した。
同准教授らは「治療も手術もせずに癌とともに生きていくことは,両者がもたらす恩恵を断念することであり,肉体的,精神的および経済的負担を抱えることである」と述べた。しかし,乳房または卵巣の切除に伴って遺伝的欠陥を知らされることによって受ける心的外傷は,生存年数の延長を相殺するものとなる可能性があることを指摘している。
ピッツバーグ大学(ペンシルベニア州ピッツバーグ)癌研究所の総合乳房プログラムの責任者であるVictor Vogel博士は,生存年数の延長を「著しい増加」と呼び,「予防的外科手術は,こうしたハイリスク群に対してはきわめて効果的な戦略である」と指摘した。
同博士は「おのおのの患者に対して,肉体的外観と生存年数のどちらに価値を置くかを尋ねなければならない。医師はこうしたデータを見せ,この問題について患者と話し合う必要がある」としている。
キーワード 【BRCA遺伝子を持つ若年女性】

(Medical Tribune Vol.31, No.53, )【〜乳癌の再発リスク〜】
血管新生引き起こす蛋白で予知
〔ニューヨーク〕 このほど発表された 2 件の研究によると,血管新生の生化学的マーカーは再発リスクの高い乳癌患者,さらには生存率の低い患者を予測するうえで優れた因子であると思われる。研究者は,血管内皮増殖因子(VEGF)によって血管形成が刺激されないと腫瘍は急速に増殖できないと考えている。

VEGF高値例で死亡が約3倍
一方の研究論文の著者であるウメオ大学病院(スウェーデン・ウメオ)のBarbro Linderholm博士は,再発リスクの高い女性を見出すことができれば医師はより積極的に治療でき,逆に再発リスクの低い女性の過剰治療が避けられるであろう,と述べている。
また,『Journal of Clinical Oncology』(16:3121-3136)に報告された所見は,抗血管新生薬が乳癌による死亡を予防するうえで有効であることを示唆している。 同博士は早期に乳癌が検出された女性の多くは経過が良好であるが,10〜20%は10年以内に新たに乳癌に罹患する,と言う。
患者525例を対象とした同博士の研究では,今後約 2 年間にわたって順調に経過するかどうかを予測するうえで,VEGFは最も優れた予測因子であった。全体として,女性40例が乳癌で死亡した。同博士によると,VEGF高値の女性は低値の女性より乳癌で死亡する確率が約 3倍高かった。
同様に,女性305例を対象としたスイスの研究では,腫瘍が分泌するVEGF量が今後 3 年間の乳癌の経過を予測するのに最も優れた予測因子であることが示唆され,VEGFが高値であるほど乳癌は悪化した。この研究では86例で乳癌が再発または転移し,49例が死亡した。
論文の著者であるバーゼル大学女性クリニック(スイス・バーゼル)シュティフトゥング腫瘍バンクのUrs Eppenberger博士によると,乳癌が再発せずに40か月にわたって生存したのはVEGF低値の女性では83%であったのに対し,VEGF高値の女性では58%にすぎなかった。研究期間の全体を通じ,VEGF高値の女性は低値の女性より乳癌を再発する,または死亡するリスクが 7 倍高かった。
キーワード 【乳癌の再発リスク】

(Medical Tribune Vol.31, No.53, )【遺伝性と非遺伝性の乳癌で生存期間に差】
〔ニューヨーク〕 キュリー研究所(仏パリ)のYan Ansquer博士らは『Lancet』(352:541)に「遺伝性乳癌の女性患者の生存期間は,非遺伝性の乳癌患者よりも短いかもしれない」と発表した。

遺伝性患者のほうが短命
最近の研究から,BRCA1遺伝子の変異を遺伝的に受け継いでいる女性のほうが乳癌を発症しやすいことが明らかにされているが,遺伝性乳癌のほうが,散発性乳癌より致死的なことを示す知見はほとんど得られていなかった。事実,遺伝性乳癌のほうが予後が良いことを示唆する報告もあった。しかし,今回発表された研究結果は,変異遺伝子を保有する女性の平均生存期間のほうが短いことを明らかにした。
同博士らは,35歳以下の乳癌患者123例を対象とした調査を実施。遺伝子検査の結果,このうち15例にBRCA1の変異が認められたが,27%の女性には乳癌の家族歴は認められなかった。これら 2 群を比較したところ,診断時の平均年齢および平均腫瘍サイズはほぼ同じで,腋窩リンパ節の状態もほぼ同様であった。組織学的にgrade 3と判定される腫瘍を有する患者の数は,BRCA1変異群において有意に多かった。
しかし,3 年以上フォローアップしたところ,変異遺伝子を有する女性の生存率は,散発性乳癌患者よりも有意に低値となった。43か月後の生存率は,散発性乳癌群でおよそ92%であったのに対し,遺伝性乳癌群では約70%であった。

検体数の少なさに懸念
ピッツバーグ大学癌研究所(ペンシルベニア州ピッツバーグ)およびMagee-Womens病院総合乳腺プログラムのVictor G. Vogel部長は「新しい研究結果が発表されたものの,BRCA1が乳癌の予後に及ぼす影響は依然不明だ」とコメント。「この問題に関する研究では,さまざまな結果が報告されている。BRCA1の変異保有者のほうが予後は悪いとする結果もあれば,予後には差が見られないとの報告もあるし,むしろ予後は良いとする報告さえある」と述べた。
さらに,同部長は「相反する統計結果が導き出される原因として,これまでの研究が,いずれも小規模なうえレトロスペクティブなものであることが挙げられる」と説明し,「今回の研究について,私が最も懸念しているのは,変異遺伝子保有者がわずか15例だという点だ」と指摘。「今は注視し観察しているが,変異BRCA1遺伝子が予後に影響を及ぼすのかどうか,確信が得られない。一方,遺伝性乳癌患者の治療法は,腫瘍サイズおよび進行度など従来から治療方針の決定に用いてきたファクターに従って決定すべきだ」と忠告している。
キーワード 【遺伝性と非遺伝性の乳癌】読み飛ばしましょう

(Medical Tribune Vol.31, No.53, )【ホルモン補充療法と乳癌との関連を確認】閉経の遅れと同程度のリスク
〔ニューヨーク〕 ハーバード大学癌予防センター(ボストン)のGraham A. Colditz博士らは,『Journal of the National Cancer Institute』(90:814-823)に「新たなメタ解析の結果,更年期障害のためにホルモン補充療法(HRT)を受けている女性では乳癌のリスクが高いことが確認された」と発表。「HRTの期間を 1 年延長することは,閉経が 1 年遅れるのとほぼ同程度に乳癌のリスクを上昇させることが明らかになった」と報告した。

待たれるSERMの評価
Colditz博士は「閉経の遅い女性では,おそらく血中エストロゲンが高濃度を維持する期間が長いために,閉経が 1 年遅れるごとに,乳癌のリスクが 3 %ずつ上昇するのだろう。ホルモンは,閉経後の女性における発癌過程のうち後期の段階を促進し,悪性細胞の増殖を助ける働きをするようだ。さらに,閉経後の長期ホルモン使用と乳癌のリスクとの間には,正の相関性があるようだ」と報告した。
この結果を踏まえて,同博士は「更年期症状を緩和し,骨粗鬆症や心疾患を長期的に予防するために,乳癌のリスクを伴わない治療法を早急に確立しなければならない」と強調。「それまでは,医師は適切な治療法を決定する際に,各患者の心疾患,骨粗鬆症および乳癌のリスクと,これらの疾患に対する患者の不安や懸念を比較考量しなければならない」と述べた。
骨粗鬆症治療薬のraloxifene(Evista,Eli Lilly社)および乳癌治療薬として広く用いられているタモキシフェンなどの選択的エストロゲン受容体モデュレータ(SERM)が,乳癌の発症を恐れてエストロゲンの使用を嫌う女性に福音をもたらす日が来るかもしれない。実際,raloxifeneの予備的試験の結果,乳癌のリスクがraloxifeneで約70%,タモキシフェンで約45%低下することが明らかになった。

HRTの恩恵はリスクを上回る
Colditz博士らは「われわれは比較的新しいこれらの薬剤のリスク/利益比を早急に評価し,十分な知識を蓄え,更年期症状の軽減や慢性疾患の長期的予防のために多数の選択肢を検討している女性たちに助言しなければならない」と述べた。
イースタンバージニア大学(バージニア州ノーフォーク)産婦人科のWilliam Andrews名誉教授は「SERMは将来有望なように思われるが,その研究の歴史はエストロゲンほど長くはない」と指摘。今回のメタ解析については「大変興味深いもので,よく解析されている」と評価しながらも,「結局,HRTの恩恵はリスクを上回る。しかし,乳癌の家族歴のある女性は,SERMについて医師と話し合うべきだ」と述べた。
デューク大学医療センター(ノースカロライナ州ダーラム)で産婦人科部長を務めるCharles B. Hammond教授は「乳癌のリスクがエストロゲンの使用により上昇しないとは断言できないが,上昇するとの結果についても,まだ確信はしていない」とコメント。「実際にエストロゲンにより乳癌のリスクが上昇するとしても,その上昇幅は大きなものではないだろう。今回のメタ解析の結果によると,考えられる最悪のシナリオは,エストロゲンの使用で閉経が 1 年遅れるのと同じ程度に,乳癌のリスクを押し上げることだ」と説明している。
キーワード 【ホルモン補充療法と乳癌との関連】








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1998-06〜1998-12記事