1997-06〜1997-12記事

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00(Medical Tribuneなどの記事)【はじめに】今まで 一般(どなたでも)参照可能であったMedical Tribuneの記事が2000年9月28日から、メディプロという会員制(ID+パスワードが必要)サイト内に移行してしまいました。
情報公開IT革命という世の中に於て、残念でなりません。そこで乳癌に関連したニュース (一般雑誌より参考になり得る情報)をここにセレクトし、upしました。  尚、ここに転記したり転載したる責任の所在は吉利です。 Medical Tribune誌関連の方、もし転載に問題がございましたら、 webmaster@prodr.com(吉利)までお願いします。

☆(Medical Tribune Vol.31, No.10,)【心理療法で乳癌患者の予後が改善】
米国放射線療法・腫瘍学会の年次集会での研究、スタンフォード大学精神科のDavid Spiegel教授らは、 乳癌患者に心理療法が有用であることを示唆する報告をした。教授らは、1年間の集団心理療法を受けた 転移性乳癌患者と受けなかった症例について、集団心理サポート療法が患者に及ぼす生理的効果を分析し 両群の生存率とクォリティオブライフ因子を比較した。

結果:集団心理療法を受けた症例群は受けなかった症例群と比較し平均して18ヶ月も長く生存した。

注記:このことは、乳癌というホルモンの関係する腫瘍では、心理的なサポートが重要に思われる。 この逆の反論報告は2000-11/5現在報告されていない。故にHANAさんBBSのポリシーが正しいと思う。
Spiegel教授の報告をサポートしている本:HANAさん推薦のこの一冊;ディーン・オーニッシュ著「愛は寿命をのばす - からだを癒すラブ・パワーの実証的研究 - 」 光文社
キーワード 【乳癌・心理的サポート】このDavid Spiegel教授の記事を元に、雑誌より転載しています。

22〜44歳の女性,3,000例以上を対象
(Medical Tribune Vol.30, No.33, )【飲酒で乳癌リスク高まる】30歳代女性は要注意
〔ニューヨーク〕 米国立癌研究所(NCI)のChristine A. Swanson博士らは,女性のアルコール摂取と乳癌リスク上昇とを証明する最新の疫学調査の結果を『Epidemiology』(23:231-237)に発表した。今回の知見は22〜44歳の女性,3,000例以上を対象とした人口ベースのケース・コントロールスタディから得られた。

発症過程の後期に関係
それによると,乳癌と診断される前の 5 年間が30歳代で,その間,週14杯以上のアルコール飲料を摂取した女性の乳癌発症リスクは,アルコールを摂取しないと答えた女性より80%も高いことが判明した。しかし,10代〜20代でのアルコール消費は乳癌リスクの上昇をもたらさないという。
また,アルコール消費でリスクが上昇する乳癌はほぼ浸潤性の乳癌に限定されており,「そのようなリスク増加は最も進行度の高い乳癌に罹患した女性で一番顕著に現れていた」という。
限局性乳癌あるいは局所/遠隔転移の乳癌では,週に14杯以上アルコールを消費していた女性は全く飲まなかった女性に比べて,乳癌発症リスクが限局性乳癌患者では1.5倍,局所/遠隔転移では2.4倍だった。  Swanson博士らは「アルコール消費と乳癌リスク上昇とを結び付ける証拠が増えているが,われわれのデータはその意見を支持するものであり,さらにアルコールは乳癌発症過程の後期に関係することを示唆している」と記している。
今回の同博士らの調査は,新規に乳癌と診断された1,645例と乳癌に罹患していない1,497例のアルコール消費に関するデータを集めたもの。飲酒 1 杯は缶または瓶ビール12オンス(約360ml),ワイン 4 オンス(約120ml),蒸留酒1.5オンス(約45ml)と換算した。
アルコールがどのような機序で乳癌リスクの増加に結び付くのかは不明だが,Swanson博士らは,アルコールが血中のエストロゲンあるいはその他のホルモン値を上昇させるのではないかとしている。
リスク上昇はアルコール飲料の種類によっても差が見られた。年齢,人種,調査を行った場所,出産回数,経口避妊薬の使用,ほかのアルコール飲料の消費量などのファクターを補正したところ,週にビールを 7 杯以上消費する女性の乳癌発症リスクは対照群の2.6倍だった。しかし,同程度のワイン消費あるいは蒸留酒消費ではリスクはそれぞれ46%,41%しか上昇しなかった。
Swanson博士は「ビールを飲む人は他のアルコール飲料もたくさん消費するということかもしれない」と述べている。
キーワード 【まあ 参考までに・アルコール消費と乳癌】

(Medical Tribune Vol.30, No.34, )【遺伝性乳癌は悪性度がより高い】治療勧告の発表は時機尚早
〔ニューヨーク〕 遺伝性乳癌は散発性乳癌より悪性度が高いかもしれないとする試験結果が『Lancet』(349:1505-1509)に発表された。Haddow Laboratories癌研究所(英ベルモント)のMichael Stratton博士らを中心とする国際研究チームがまとめたこの報告によると,今回の知見は女性の乳癌スクリーニングおよび治療に影響を及ぼすかもしれない。
しかし,付随論評でカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)内科のI. Craig Henderson客員教授とSequus Pharmaceuticals(カリフォルニア州メンロパーク)の研究員であるAnthony J. Patek氏は「乳癌の治療選択はよくコントロールされた臨床試験で証明された利益を元に決定されるべきであり,特定の予後因子の有無を元にすべきでない」と記し,遺伝性乳癌患者により積極的な治療を行うことを支持するデータではないと述べた。

BRCA1変異が最も高い悪性度示す
987例の乳癌女性を対象とした今回の試験によると,乳癌家族歴のある女性(BRCA1変異とBRCA2変異を持つ女性を含む)の乳癌は他の女性と比較して悪性度がより高く,増殖の特性もより侵襲的だったという。 Stratton博士らはBRCA1変異を持つ118例,BRCA2変異を持つ78例,その他の家族性乳癌女性244例の組織標本を散発性乳癌女性547例のものと比べた。
標本は1995年までにフランス,ドイツ,アイスランド,アイルランド,オランダ,スイス,英国,米国で乳癌と診断された女性から得られたものだった。例えば,組織グレードが 3 の腫瘍はBRCA1に変異のある女性では66%,BRCA2に変異のある女性では41%,コントロール群では36%に見られた。また,BRCA1変異キャリアから得た腫瘍サンプルは,BRCA2変異キャリアやコントロール群に比べて多型性,有糸分裂細胞数がより多く,腺管形成は少ない傾向が見られた。
髄様癌もBRCA1変異キャリアの13%に見られたのに対し,BRCA2変異キャリアでは 3 %,コントロール群では 2 %にしか見られなかった。
Stratton博士らは「このような傾向についての知識があれば,臨床医は乳癌の遺伝リスクを負っている女性をスクリーニングし,そのような女性にはより積極的な治療を行うこともできる」と提案。「われわれの試験は,異なる遺伝子の変異が原因の乳癌では,その自然歴も異なる可能性を示唆しており,将来的にはそれぞれの遺伝子変異キャリアに合った臨床管理プロトコールが作成される可能性もある」と記している。

生存率に及ぼす影響の検討必要
しかし,Henderson教授とPatek氏は「乳癌の病期とグレードは連続しており,この疾患を分類しようという試みは,しばしば生物学的基礎のない細分化をするだけに終わることが多い。このような点は,年齢と遺伝子変異で分類したグループにも当てはまる」と述べた。
また,ミシガン大学(ミシガン州アナーバー)乳癌・卵巣癌評価プログラムのSofia Merajver部長は,今回の知見は乳癌における遺伝子の役割を解明する手がかりになるとし,「非常に興味深い記述的データだ。しかし,今回のデータを元にした治療勧告を発表するのは早すぎる。BRCA1とBRCA2の変異が生存率に及ぼす影響についてはさらに試験を行う必要がある。増殖が速くても限局性の腫瘍は,増殖が遅く転移しやすい腫瘍より早期発見と治療が容易かもしれない」と述べた。
キーワード 【遺伝性乳癌 BRCA1変異が最も高い悪性度】読み飛ばしましょう

― 第5回日本乳癌学会から ―
(Medical Tribune Vol.30, No.34, )【多くの男性は乳癌手術を受ける女性に好意的】
半数近くが「性生活に制限ない」
乳癌患者にとって,術後の性生活は大きな心配事であるが,主治医に相談することもためらわれ,1人で悩むケースが多い。果たして男性パートナーはどう思っているのか――。滋賀医科大学第一外科の寺田信國講師らは「乳癌患者のパートナーや一般男性に対するアンケート調査から,ほとんどの男性は術後も性生活や愛情に大きな変化はないと考えていることが分かった」と先ごろ東京で開かれた第5回日本乳癌学会で報告した。

「愛情はむしろ深くなった」 アンケート用紙は計1,003人の男性に配布され,799人(80%)より回答を得た。うち56人は乳癌患者のパートナー(全員40歳以上),ほか743人は一般男性(40歳以上324人)。
解析の結果,最も注目されたのは一般男性への「もしパートナーが乳癌になったら,あなたはどのように行動されますか」に対する回答。
47%が「変わりない」,
34%が「愛の妨げにならない」,
10%が「愛情はむしろ深くなる」と回答した。
「遠慮気味となる」は 4 %,「すぐ別れる」は0.5%にとどまったが,このようなマイナスの反応を示した男性は,アンケートの対象とした乳癌患者のパートナーと同じ40歳以上に限ると,さらに少なくなった。
「遠慮気味となる」や「すぐ別れる」は若い未婚男性に目立ち,既婚男性にはなかった。

この点に関連して「あなたが独身と仮定して,愛している女性が乳癌手術を受けたと告白したらどうしますか」という質問には,43%が「愛情に変わりはない」,19%が「黙っていて結婚する」,13%が「もっと深いきずなで結ばれる」と回答しており,これから乳癌手術を受ける未婚女性を励ますことのできる結果だった。
寺田講師は「幸い多くの男性は乳癌手術を受ける女性に好意的であることが分かった。患者を元気づける情報として活用したい」としている。乳癌患者の性生活に関する調査はわが国ではわずかしか行われていない。同学会では,乳癌患者本人にアンケート調査を行い,乳房温存群と切除群とを比較した国立がんセンター東病院乳腺外科・日域洋子氏らの成績も報告された。


〜乳房温存術〜 予後,経済的効率ともに切除術より優れる
早期乳癌に対する乳房温存術は乳房切除術に比べて,期待生存年,quality of life(QOL)が良好な状態での期待生存年,経済的効率のいずれにおいても優れているという解析結果が,徳島大学衛生学の久繁哲徳教授から報告された。久繁教授によると,マルコフモデルを用いた判断分析という手法により,40歳の早期乳癌患者の術後の期待生存年は乳房温存群33年,乳房切除群32年,期待QALYs(quality adjusted life years:QOLで調整した生存年)はそれぞれ28年,25年で,いずれも乳房温存群のほうが長かった。こうした結果は50歳,60歳でも同様に認められた。
キーワード 【男の愛情・乳癌手術を受ける女性に好意的】

BRCA1とBRCA2の再検討
(Medical Tribune Vol.30, No.38, )【乳癌遺伝子変異の解釈に検討の余地】マーカーとしての信頼性に疑問符
〔ニューヨーク〕 乳癌遺伝子BRCA1とBRCA2の変異に関するスクリーニング検査は,現在,広く利用可能であるが,陽性所見が乳癌リスクに対して持つ意味について再検討を促す研究が『New England Journal of Medicine』(336:1401-1408;1409-1415;1416-1421)に 3 件報告された。

検査所見の解釈は単純ではない
アシュケナジ・ユダヤ人女性を対象としたBRCA1またはBRCA2の変異に関する過去の研究では,これらの女性の乳癌発症リスクは85%とされていた。しかし,米国立衛生研究所(NIH,メリーランド州ベセズダ)のJeffery P. Struewing博士らが行ったアシュケナジ・ユダヤ人女性に関する新しい研究では,これらの女性が70歳までに乳癌を発症するリスクは56%であるという。
一方,マサチューセッツ総合病院(ボストン)のDaniel A. Haber博士らが行った研究では,BRCA1遺伝子の変異はBRCA2遺伝子の変異よりも若年期の乳癌発症に大きく関与していることが示された。32歳以下で乳癌と診断された女性73例のうち,BR CA2遺伝子の変異を認めたのは2.7%だったのに対し,BRCA1の変異は12%で認められた。
また,40歳以下のアシュケナジ・ユダヤ人女性39名を対象としたコホート研究からは,BRCA1変異の若年期の乳癌発症への関与は,BRCA2変異の場合の10倍であるというデータが得られた。Haber博士は「われわれの研究結果は,乳癌遺伝子変異の検査所見の解釈がいかに複雑なものであるかを示している。乳房や卵巣の切除といった根治的治療の決定に当たっては,きわめて多くの因子を考慮しなければならないが,現段階では未解決の問題が数多く残されており,これらの問題に答えるには,スクリーニングを受けた女性を臨床的に追跡する以外にない」と述べた。
第 3 の研究は,ペンシルベニア大学(ペンシルベニア州フィラデルフィア)のBarbara L. Weber博士らが乳癌患者263例を分析したもので,乳癌および卵巣癌の一方ないしは双方の家族歴を有する被験者のうちBR CA1の変異が見つかったのは16%であったのに対し,乳癌の家族歴のみを持つ被験者でBRCA1の変異が見つかったのは 7 %であった。

BRCA1変異検査への過信は禁物
同博士らは「過去の遺伝子連鎖分析によると,乳癌または卵巣癌もしくはその両者が多発している家系における遺伝性乳癌症例の45%がBRCA1遺伝子変異によるものとされていたが,今回の研究結果は,ハイリスク家系の女性のスクリーニングを専門に行う特殊外来においても,BRCA1変異検査の所見は大多数が陰性であり,同検査が有益な情報を提供するとは言い切れないことを示している」と述べている。
今回の 3 件の研究は,遺伝性乳癌について未解決の問題が多数残されていることを示唆するものである。
キーワード 【遺伝性乳癌について未解決の問題多々有り】

(Medical Tribune Vol.30, No.39, )【環境エストロゲンが乳癌を誘発か】専門家はCOMTとの関連を注目
〔米バージニア州アーリントン〕 ジョンズ・ホプキンス大学(メリーランド州ボルティモア)公衆衛生学部のJames Yager博士らは,当地で開催された米国立環境衛生科学研究所(NIEH,ノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク)主催の会合で「環境エストロゲンが女性の乳癌誘発に関与している恐れがある」と報告した。

乳癌細胞の分裂を促進
過去20年間にわたる動物実験の結果,殺虫剤や一部のプラスチックに含まれるホルモン様化学物質が,癌や生殖機能の異常,さらには異常な行動を誘発しうることが示されている。さらに1990年代半ばには,1940年代以降,乳癌罹患率が年間 1 %のペースで増加し続けている原因として,環境エストロゲン様化学物質の使用量の増加を挙げる報告が現れている。
今回の会合で発表された多くの研究では,環境エストロゲンは少量であっても,エストロゲンと同様に,ヒトの乳癌細胞の有糸分裂を促進することが示された。Yager博士は「環境エストロゲンは,体内で産生されるエストロゲンの代謝に変化を及ぼすことによって,間接的に作用しているのではないか」と主張。エストロゲンが体内で分解されると,カテコールエストロゲンなどの代謝産物が酸化作用によりDNAを損傷することがあるが,同博士はDNAを損傷する恐れのあるこれらの物質を不活性化する酵素,カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)について研究している。

不活性群でハイリスク
同博士は,女性の約25%ではCOMTの活性が正常以下だと説明。乳癌患者115例と乳癌を発症していない女性115例を対象とした研究の結果,COMTが不活性な更年期女性では,年齢や喫煙といったリスク因子を補正後も,COMT正常群と比べて乳癌発症リスクが 2 〜 3 倍も高いことが明らかになったという。同博士は「今回の研究は,COMTが不活性な女性では環境エストロゲンに対する感受性が高いことを示唆するものだ」と述べている。
Yager博士は現在,女性の血液サンプルを採取して,環境エストロゲンへの曝露の徴候がないかどうか研究中である。また,同博士は「COMTが不活性なケースはまれではなく,多くの人に影響を与えかねない」と懸念を表明。「環境化学物質と遺伝的要因とが代謝のプロセスに影響を及ぼし,エストロゲン関与の癌発症にも影響が及んでいるのではないか」と結論づけている。
カリフォルニア州衛生科学局(バークレー)のShanna H. Swan博士は「最近の研究では,乳癌発症リスクと出生前のエストロゲン曝露との関連が示唆されているが,さらに母体の環境エストロゲンへの曝露とも関係しているのではないか」と指摘。また「思春期早発が多量のエストロゲンへの曝露と結びついていることが報告されており,米国女性における初経年齢の緩やかな低下も最近のデータによって示されている」と付け加えている。
キーワード 【環境エストロゲンが乳癌を誘発か】

(Medical Tribune Vol.30, No.42, )【乳房X線検査受診機会の拡充を】黒人女性で乳癌死亡率低下せず
〔ニューヨーク〕 米国立保健統計センター(メリーランド州ハイアットビル)のFrances Chevarley博士とワシントン大学(シアトル)のEmily White博士は「1989年から92年にかけて,白人女性の乳癌死亡率は全年齢層で年平均1.6%低下したが,黒人女性ではこうした低下傾向は確認できなかった」と『American Journal of Public Health』(87:775-781)で報告した。

60歳未満の白人女性で顕著な低下
同博士らによると,こうした死亡率の低下は,本来の発症リスクの低下,治療の改善,乳房X線検査実施機会の増加によるものだという。
低下率は60歳未満の白人女性で最も大きく,調査期間中における年平均低下率は3.1%であった。60〜79歳の白人女性でも年平均1.5%の低下が見られたが,80歳以上の白人女性では低下は認められなかった。
これに対し,黒人女性の乳癌死亡率は調査期間中ほぼ横ばいで推移しており,年平均0.5%の上昇が認められたものの有意なものではなかった。黒人女性の乳癌死亡率は1980年から88年にかけて年平均 2 %の上昇を示した後,落ち着いた動きとなっている。
同博士らは「各種要因のなかでも,とりわけ乳房X線検査実施機会の増加が乳癌死亡率の低下に寄与している」と指摘。前年に乳房X線検査を受けた女性の数は,白人,黒人を問わず1987年から92年にかけて 2 倍に上昇したという。白人女性と黒人女性とで死亡率に差が認められるのは,スクリーニングから平等な恩恵を受けていないことによるものと考えられる。
同博士らが,全米約 4 万9,000世帯を対象とした年次調査「1987年度国民健康インタビュー調査」のデータを調べたところ,黒人女性は白人女性ほど頻繁に乳房X線検査を受けていないという傾向が浮き彫りとなった。また,黒人女性は疾患のステージが進行してから乳癌と診断されるため,生存率の低さにつながっていると見られている。
ノースカロライナ大学(ノースカロライナ州チャペルヒル)のMichael S. O'Malley博士は,同誌(87:782-786)掲載の別の報告で「50歳以上の白人女性は,同年齢の黒人女性の 2 倍の頻度で,医師から乳房X線検査の受診を勧められている」と指摘している。
キーワード 【X線検査受診機会の拡充を】1997年の論

(Medical Tribune Vol.30, No.47, )【AIB1遺伝子が乳癌増殖を促進か】
〔ニューヨーク〕 米国立ヒトゲノム研究所(メリーランド州ベセズダ)のPaul S. Meltzer博士らは『Science』(277:965-967)で「乳癌の増殖を促進すると思われる遺伝子の同定に成功した」と報告した。癌細胞はしばしば,腫瘍の増殖に利する特定の遺伝子のコピーを蓄積するが,Meltzer博士らは「今回の研究で同定された新しい遺伝子AIB1(amplified in breast cancer-1)は,そうした遺伝子の 1 つであるようだ」と述べている。AIB1は体内のすべての細胞で見つかるが,乳癌細胞でははるかに多く検出される。

“乳癌細胞増殖の理解”に期待
同博士らの研究によると,AIB1は乳癌細胞のエストロゲン受容体と相互作用する蛋白を産生するという。同博士らは「この蛋白が大量に発現すると,癌細胞のより急速な増殖を引き起こす」と説明。今回の知見は乳癌細胞増殖の理解に役立つものと期待している。クリーブランド・クリニック(オハイオ州クリーブランド)ラーナー研究所癌生物学のBrian Williams部長は「これは非常に興味深い研究だ」と指摘。「AIB1が癌増殖の促進に関与していることが明らかになれば,癌治療のターゲットとなりうる」と述べている。
同部長は「将来は,乳癌の遺伝子スクリーニングによって患者の予後が予測できるようになるかもしれない。AIB1の大量な発現が確認されれば,医師はより積極的な治療を選択することができる」と述べた。 同遺伝子は20番染色体の長腕上で見つかっている。
キーワード 【AIB1遺伝子が乳癌増殖を促進か?】1997年の論







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