1997-01〜1997-05記事

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00(Medical Tribuneなどの記事)【はじめに】今まで 一般(どなたでも)参照可能であったMedical Tribuneの記事が2000年9月28日から、メディプロという会員制(ID+パスワードが必要)サイト内に移行してしまいました。
情報公開IT革命という世の中に於て、残念でなりません。そこで乳癌に関連したニュース (一般雑誌より参考になり得る情報)をここにセレクトし、upしました。  尚、ここに転記したり転載したる責任の所在は吉利です。 Medical Tribune誌関連の方、もし転載に問題がございましたら、 webmaster@prodr.com(吉利)までお願いします。

☆(Medical Tribune Vol.31, No.10,)【心理療法で乳癌患者の予後が改善】
米国放射線療法・腫瘍学会の年次集会での研究、スタンフォード大学精神科のDavid Spiegel教授らは、 乳癌患者に心理療法が有用であることを示唆する報告をした。教授らは、1年間の集団心理療法を受けた 転移性乳癌患者と受けなかった症例について、集団心理サポート療法が患者に及ぼす生理的効果を分析し 両群の生存率とクォリティオブライフ因子を比較した。

結果:集団心理療法を受けた症例群は受けなかった症例群と比較し平均して18ヶ月も長く生存した。

注記:このことは、乳癌というホルモンの関係する腫瘍では、心理的なサポートが重要に思われる。 この逆の反論報告は2000-11/5現在報告されていない。故にHANAさんBBSのポリシーが正しいと思う。
Spiegel教授の報告をサポートしている本:HANAさん推薦のこの一冊; ディーン・オーニッシュ著「愛は寿命をのばす - からだを癒すラブ・パワーの実証的研究 - 」 光文社
キーワード 【乳癌・心理的サポート】このDavid Spiegel教授の記事を元に、雑誌より転載しています。

(Medical Tribune Vol.30, No.07, )【軽いstageでは乳房温存療法も】
〔独ゲッティンゲン〕 ゲッティンゲン大学外科のWolfgang Gatzemeier博士は、 ドイツSenologie学会の第16回年次総会で,「プロスペクティブ観察研究の結果、小さな非転移性乳癌症例では、乳房温存療法は乳房切断術同様に有効であることが判明した」と報告した。1983年から89年にかけて、stage pT1N0M0の乳癌患者1,000例以上を対象に研究を実施した結果、約 3 分の 2 の患者が乳房温存療法を,残りの約 3 分の 1 は乳房切断術を受けていた。
現在のところ,死亡例を含めた乳癌再発例は237例であるが,両治療群間で有意差は確認されていないという。むしろ,非再発群では,乳房切断術実施群の死亡率が少し高かったが,これは高齢者が多かったことから説明がつく範囲のものであった。
再発を見ずに長期間生存するために重要なファクターは,腫瘍の大きさとgradeであることが今回の研究によって再確認された。
キーワード 【乳癌・乳房温存療法1983年から89年・ドイツの症例結果報告】

(Medical Tribune Vol.30, No.08, )【ERTで乳癌リスクは上昇せず】米国対がん協会が調査分析
〔米テキサス州サンアントニオ〕 米国対がん協会(ACS)の研究・振興・広報部長のDawn Willis博士は,当地で開かれたサンアントニオ乳癌シンポジウムで,閉経後のエストロゲン補充療法(ERT)は乳癌リスクを上昇させず,実際はリスクを低下させる可能性がある,と報告した。
継続10年までがリスク減少
Willis博士らは,ACSが行った癌予防研究(CPS)IIの一環であるアンケートに答えた120万人の米国人のうち,閉経後女性42万2,373人において1982年にERTを受けていた585人とERTを受けていなかった884人を対象として,癌のリスクファクターを分析した。死因はNational Death Indexの死亡率分析を調べた。
その結果,1991年までに閉経後女性のうち1,469人が死亡した。ERTを一度も受けていなかった女性は乳癌死亡率の相対リスクが1.0だったのに対し,ERTを受けていた女性は相対リスクが0.84で乳癌死亡率が16%低いことが分かった。また,ERTを受けていた女性は大腸癌死亡率も低かった。
乳癌死亡に対するERTの利益が明らかなのはERT継続10年目までで,ERT継続 2 〜10年までの死亡リスクは0.78,ERT継続 1 年以下の死亡リスクは0.85で,継続11年以上の死亡リスクは0.93だった。 ERTを開始した年齢も乳癌死亡リスクに影響を与えた。ERTを開始したのが40歳未満のときの死亡リスクは0.66,40〜49歳のときの死亡リスクは0.84,50歳以上のときの死亡リスクは0.89だった。
Willis博士は「自然閉経女性と卵巣摘出による早期閉経女性に対し,ERTは明らかな予防効果が認められた。また,ERTの利益は乳癌の家族歴の有無にかかわらずあった」と述べた。 詳細(他疾患は省略)

この反論
テキサス大学(サンアントニオ)の腫瘍遺伝子学者,Kent Osborne博士は「この研究の結果から,乳癌を発症しても長生きするとか乳癌を発症しにくいからエストロゲンを服用すべきだというのは間違った考えだ。この研究は生存率にのみ焦点を当てたもので,この所見に対する説明はいくつも考えられる」 と反論を述べた。
キーワード 【エストロゲン補充療法(ERT)と乳癌】【その結果に関する腫瘍遺伝子学者の反論】

ちょっと話がそれますが
(Medical Tribune Vol.30, No.11, )【結婚生活は癌患者にプラス効果をもたらす】
〔ニューヨーク〕 マイアミ復員軍人局医療センター(フロリダ州マイアミ)泌尿器科のArnon Krongrad博士らは,前立腺癌の既婚男性は独身,離婚,別居,やもめの男性よりも生存率が高いと『Journal of Urology』(156:1695-1700)に報告した。
社会的支援の多さが影響
1973年から90年の間に前立腺癌と診断された14万6,000例を対象とした研究で,既婚男性の平均生存月数は診断後69か月であったのに対し,別居またはやもめの男性は38か月,離婚男性は約55か月,独身男性は49か月とそれぞれ短かった。
Krongrad博士らは,結婚によるプラス効果は社会的支援が多いことからきているのかもしれないことを示唆した。同博士は「この研究の意義を高めているのはデータ数の多さだけでなく,QOLが生存期間を決めるという実生活上の影響を示した点だ」と語った。さらに,同博士は「次の課題は,結婚に関連する変数,すなわち食事,性行為,友達付き合いなどを調べ,どの変数が決定的な因子か突き止めることである」とし,「今回の知見は患者支援グループが治療の重要な一部となることを示唆している」と付け加えた。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJean B. deKernion博士は「実際,このプラス効果が心理的な落ち着きからくるものであればそれが結婚から得られるのかもしれず,気の持ち様が癌の進行など多くの事柄に重要な影響を及ぼすと信じている者に対し,よりその意を強くさせるものと言える」と語った。
キーワード 【気の持ち様が癌の進行など多くの事柄に重要な影響を及ぼす?】

(Medical Tribune Vol.30, No13.,1997 )【40歳代での乳房X線検査不要のNIH諮問委員会決定に大波紋】
〔米メリーランド州ベセズダ〕 1997年 1 月,米国立衛生研究所(NIH)の諮問委員会は,40歳代の女性のほとんどは定期的な乳房X線検査が不要だとの採択を行ったが,この決定が医学界に大きな論争を巻き起こしている。
確定データない40歳代
論争の的となっているこの米連邦政府ガイドラインは,定期的乳房X線検査は50歳以上の女性に限るよう勧告している。専門家の間では,胸部X線撮影は50歳以上の女性では癌死予防に有用だが,40歳未満の女性では意味のないことが広く認められている。しかし,その中間層である40歳代の女性に関しては,はっきりした論証が得られていない。
諮問委員会は,乳房X線検査実施の決定は患者自身の判断に委ね,もし施行を希望する場合は保険会社,健康維持機構(HMO),メディケイドなどに検査費用の負担を要請するよう勧告している。Gordis博士は「科学的な評価に加え,個人的にもリスクを評価することだ」と述べた。
関係各所から危惧・批判の声
国立癌研究所(NCI)のRichard D. Klausner所長
「癌の早期発見乳房X線検査の有用性をこの委員会決定は十分伝えていないのではないか」
「40歳代に対する乳房X線検査の有用性を、女性も医師も知る必要がある」と指摘した。

救命の可能性は0〜0.1%
NIH諮問委員会の審議会において,研究者らは米国,スコットランド,スウェーデン,カナダで行われた複数の無作為臨床試験の結果を検討し、これらの試験すべてで統計的有意性が得られたわけではない。メタ分析では,40歳代の女性に定期的に乳房X線検査を行うことで救われる生命は 1 万人当たり10人,または皆無との結果が示されている。諮問委員会は,約2,500人の検査を行って初めて 1 人の生命が救われるとしている。
キーワード 【乳房X線検査の1997年論争】

ちょっと興味ある記事でしたので
(Medical Tribune Vol.30, No.13, )【出生時体重が乳癌リスクと関連】
〔ニューヨーク〕 ハーバード大学(ボストン)のKarin Michels博士は,ハーバード看護婦健康調査フェーズ I と II に参加した2,151例の女性を対象にした調査で,出生時体重が2,500g未満の女性は,同4,000g以上の女性と比べ,乳癌の発症リスクが約半分であると『Lancet』(348:1542-1546)に報告した。

子宮内エストロゲン量が関係
Michels博士は「この調査から,出生時体重とその後の乳癌発症リスクとの間には有意な相関があることが分かった。しかし,だからといって出生時体重を減らすことを奨励すべきではなく,国民の健康に対しこの所見が意味している重要なメッセージは,40歳や50歳になってからの要因ではなく,人生の早い時期における要因が乳癌発症リスクに関係しているということである」と述べている。
この新しい所見は乳癌の発症源が子宮内とする仮説を支持するとし,妊娠中のエストロゲンなどのホルモン量が乳癌リスクを高めるのではないかと見ている。同博士は「胎児の乳房はエストロゲンなどのホルモンに実に敏感であり,事実,子宮内のエストロゲン量は非常に高い」と説明。また,「エストロゲン量の高い妊婦は体重の重い乳児を出産すると示唆する研究もあるが,今の段階ではまだ仮説にす ぎない」と付け加えた。

50歳以下の女性で有意な相関
米国立癌研究所癌予防治療科応用研究所(メリーランド州ベセズダ)のRachel Ballard-Barbash所長は「子宮内の成長因子が乳癌と関連するという仮説は以前から言われていることであるが,今回の所見は乳癌発症リスク上昇を示唆した他の 2 つの研究結果とも一致する」とし,さらにほかに多くの子宮内因子が女性の乳癌発症リスクに影響しているのかもしれない,と付け加えた。
また,イリノイ大学(アーバナ・シャンペイン)生理学細胞生物学のBenita S. Katzenellenbogen博士は「乳癌発症リスクと出生時体重の相関は概して乳癌診断時に比較的若い女性,すなわち50歳以下の女性に対して当てはまることであり,この調査の対象とした乳癌患者の約 3 分の 2 は閉経前であることから,遺伝的な関連性が示唆される」と語った。
事実,この調査で乳癌と診断された女性582例中393例は閉経前であった。診断時に50歳以上であった女性では,出生時体重と乳癌リスクの相関は有意ではなかったとも報告している。
Michels博士らは,エストロゲンが乳癌発症リスクを高めるうえでなんらかの役割を持っているようだとしながらも,他のホルモンや生理的変化,栄養などの外因が相互に影響して,乳房の腫瘍成長を促進させる可能性のあることを付け加えた。
キーワード 【あなたの出生時体重と乳癌リスクは?の問いかけ】

(Medical Tribune Vol.30, No.15, )【第6回日本乳癌画像研究会】
乳癌は世界中で増加傾向にあると言われるが,その背景には食生活などの生活環境の欧米化が指摘されている。乳癌は早期治療で完治する可能性がある疾患であり,それだけに早期発見が重要である。したがって,触診などの自己検診も大切だが,乳房撮影(mammography:MMG)によって触知不可能な極早期の癌を発見することの重要性がますます認識されてきた。(97年記事)先ごろ横浜で開催された第6回日本乳癌画像研究会(当番世話人=小田切邦雄・神奈川県立がんセンター放射線第一科部長)では,今後ますます導入が予想されるMMGの効果や,読影についての報告が行われた。

〜高分解能MRM〜 病態の把握で手術の判断材料にも
〜3D MRM〜  粘液癌など画像の描出不良の病態も
〜超音波B-FTC〜   小さな癌まで確実に診断可能

乳管浸潤を伴う乳癌もB-FTCの鮮明な画像により癌の浸潤部位の把握も可能となる。同疾患は超音波によ る診断が重要視されるが,B-FTCと従来の方法とを併用することで,ミリメートル単位の小乳癌も発見可能であることを報告した。
キーワード 【乳癌・検査 判断困難な症例も区別可能に】

特別企画
(Medical Tribune Vol.30, No.18, )【肥厚性瘢痕の予防・治療とトラニラストの臨床効果】
整形外科など外科系の領域では,術後に皮膚の縫合線が盛り上がる肥厚性瘢痕に遭遇することも多い。肥厚性瘢痕の治療について,基本的な解説と、トラニラスト(リザベン)の話

創傷治癒を遷延させる多彩な因子
以下 香川医科大学形成外科教授・秦 維郎氏の概説。

皮膚の創傷治癒第一期(炎症期),線維芽細胞の集簇を認める第二期(増殖期),コラーゲンを主体に瘢痕が形成される第三期(成熟期)の 3 相に分類。
遷延因子として,創部の組織酸素分圧の低下,栄養障害,縫合法,感染,人種,遺伝的因子など指摘
肥厚性瘢痕とは,創傷治癒の遷延化などにより,創部が徐々に隆起するものの, その範囲を超えて
周囲に拡大することがなく,隆起周辺に進行性の発赤を認めない。この点でケロイドと鑑別される。
真皮縫合と感染防止;手術創形成外科的手技(真皮縫合)感染防止を図る。
形成された肥厚性瘢痕に対しては,各種外科的治療、圧迫療法、ステロイド局注、経口薬が適宜選択される。

トラニラストがそう痒を改善
経口薬としては,最近,トラニラストが注目され,効果を示している。
特にトラニラスト投与による自覚症状の改善効果を高く評価しうる。
肥厚性瘢痕になりやすい患者には,抜糸時の上皮形成の時にトラニラストを投与。
<参考文献>
1)ケロイドと肥厚性瘢痕の治療(大浦武彦編):P9〜,克誠堂出版,東京,1994.
2)松賀一訓ほか:Prog Med, 12(11), 2863, 1992.
3)松賀一訓ほか:熱傷,18(2), 79, 1992.
キーワード 【手術後の瘢痕やケロイドのこと】

(Medical Tribune Vol.30, No.19, )【見落し・未治療多い癌患者の疲労】
〔シカゴ〕 当地のシカゴ大学内科のNicholas Vogelzang教授は,癌患者の 4 分の 3 以上が衰弱性疲労を経験しているにもかかわらず,このことが見落されており,未治療にされることの多い副作用の 1 つとなっているという研究結果をまとめた。

患者の生活に大きな影響
Vogelzang教授らの所属する,癌疲労の問題を調べる多学問領域にわたる研究グループであるFatigue Coalitionは,癌患者419例,癌学者197名と医療提供者200名を対象に,疲労発生率と疲労が癌患者に与える影響について調べた。その結果,患者の半数以上がほとんど毎日疲労を体験していた。医師の80%が疲労は見落とされ未治療のままだと答えた一方で,この問題について話し合う医師は半数未満で,治療をする医師はそれよりも少ないことが分かった。
Vogelzang教授は「多くの患者にとって,疲労は自分が癌であることを毎日思い出させる」と述べた。 この調査によると,医師は疼痛が癌の副作用のなかで患者を最も衰弱させるもので高頻度に起こると思っているが,ほとんどの患者は疲労は患者の生活に疼痛の 3 倍の影響を与えるという。
キーワード 【癌疲労の問題・心労】

(Medical Tribune Vol.30, No.20, )【人工妊娠中絶と乳癌との間に関連性なし】
〔デンマーク・コペンハーゲン〕 Statens血清研究所・デンマーク疫学センター(コペンハーゲン)疫学研究部のMads Melbye博士らは「150万人の女性を対象とした研究を行い,人工妊娠中絶を行っても乳癌発生リスクは上昇しない。これによってこの問題に関する議論に終止符が打たれることを期待する」と『New England Journal of Medicine』(336:81-85)に報告した。
乳癌発生率に差ない
Melbye博士らは,1935年 4 月 1 日〜78年 3 月31日に生まれたデンマーク人女性152万9,512人について人工妊娠中絶の既往歴と乳癌発生率を比較した。中絶時の年齢,経産回数,中絶後の経過期間,あるいは乳癌診断時の年齢などによって分けたサブグループについて分析を行っても,1 回以上妊娠中絶をしたことのある女性が,1 回も妊娠中絶をしたことのない女性よりも乳癌を起こしやすいという事実は認められなかった。
米国立癌研究所(NCI,メリーランド州ベセズダ)のPatricia Hartge博士は付随論評で「この研究は,これまでの研究によっては解決できなかった論争に決着をつけるのに役立つものだ。要するに,妊娠を中断するかどうかという難しい決断を迫られたとき,女性は乳癌のリスクについて心配する必要はないということだ。この新しい知見が,人工妊娠中絶そのものについての論議に影響を及ぼすことになってはならない。この論争は本質的に,倫理的,政治的なものだからだ」と述べた。
綿密に計画された研究を行って正確に調べれば,人工妊娠中絶は乳癌に何も影響は及ぼさないことが明らかになる」と述べた。
キーワード 【人工妊娠中絶と乳癌の関連の検討】

(Medical Tribune Vol.30, No.21,)【乳癌などの治療に有望】2光子吸収理論用いた光線力学療法
〔ニューヨーク〕 オークリッジ米国立研究所(テネシー州オークリッジ)ヘルスサイエンス部門に所属するEric Wachter博士(物理化学)は,Craig Dees博士(分子生物学),Walt Fisher博士(物理化学),Gil Brown博士(有機化学),Bill Partridge博士(機械工学)らとともに,2 光子励起を用いた光線力学療法(photodynamic therapy)を実用化。副作用のない非侵襲的治療として乳癌治療などへの応用を試みている。

選択的に死滅させる
今回応用された光線力学療法はレーザー光線と既存の薬物を併用するもので,Wachter博士らはこの方法の特許申請を既に行っている。同博士らは,この技術を用いてヒトの乳癌細胞やサルモネラ菌を選択的に死滅させうることを証明した。また,マウスの乳癌を取り除くことにも成功している。
この治療法で使用される薬剤は8-MOPと呼ばれるソラレン誘導体。
この治療で使われるレーザー光線は,医学で一般的に使用されているものとは異なる。それは 2 種類のレーザー光線の組み合わせで,その 1 つは,青または緑の可視光を発するアルゴンイオンレーザーだ。このレーザーが 2 番目のモードロックチタン・サファイアレーザーを“ポンピング”,赤外線に近い高周波のパルスビームを放出する。この赤外線は手の皮膚を明るく照らすが害はない。しかし,皮下のターゲット部位に焦点が合うと,このパルスビームはピークパワー(エネルギーの最高値)を発揮し癌細胞を死滅させる。

深部癌治療の可能性示す
東京医科大学外科・加藤治文教授の話「Wachter博士らの方法では,2 光子吸収理論を用いて光線力学的作用を起こす部位に効果的にレーザーを照射する方法を開発し,特に深部癌への光線力学的治療の可能性を示した。この 2 光子理論を応用すれば従来の適応病巣を表層性癌病巣から深部癌病巣へ拡大できる可能性があり,おおいに期待されるものである。」
キーワード 【2光子吸収理論用いた光線力学療法】その後は?情報

(Medical Tribune Vol.30, No.25,)【乳癌細胞を活性化する酵素の役割の判断は尚早?】
〔ニューヨーク〕 乳癌細胞の“スイッチ”となる酵素について最近発表された報告は,発症のメカニズムを解くかぎの 1 つとして注目されているが,現時点ではその意義を評価できないとする専門家も多い。

MAPキナーゼが20倍にも上昇
ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校(ニューヨーク州ストーニーブルック)のCraig C. Malbon博士らが『Journal of Clinical Investigation』(99:1478-1483)に発表した報告によると,乳癌細胞の多くではmitogen-activated protein(MAP)キナーゼという酵素の値が,非癌細胞の最高20倍にものぼるという。同博士らは,MAPキナーゼ値の上昇が乳腺細胞の分裂を促進し,結果的に乳癌発症につながるのではないかと記している。

Malbon博士は「結局,MAPキナーゼ値の上昇は乳癌細胞の活動を開始させる“スイッチ”として作用するのではないか」とし,「MAPキナーゼの値を調べることで,癌細胞と正常細胞を見分けることが可能かもしれない。また,この酵素を不活性化する薬剤が新しい癌治療薬として有効となるかもしれない」と語った。
今回同博士らは,乳癌細胞と非癌細胞から得た37の組織サンプルを調べたが,リンパ節転移のある進行癌ではMAPキナーゼ値はさらに高いことも発見した。

MAPキナーゼを判断するのは時機尚早
しかし,癌専門医の多くは,現時点で乳癌におけるMAPキナーゼの役割を判断するのは時機尚早としている。例えば,コロンビア長老教会派医療センター(ニューヨーク)Herbert Irving癌総合センターのRamon Parsons博士は今回の知見を「予備的」と述べ,「その意味を明らかにするには,乳癌との関連性を慎重に検討する必要がある」としている。さらに,同博士は「MAPキナーゼの増加が癌の発症を惹起するのか,それとも癌発症の結果なのかは分からない」と語った。
キーワード 【乳癌細胞を活性化する酵素】

真剣に検討されていたんです。こんな事も!
(Medical Tribune Vol.30, No.26, )【予防的乳房切除を支持する新しい知見】
〔米カリフォルニア州サンディエゴ〕 これまで乳癌リスクの高い女性の一部は乳癌発症を心配して予防的乳房切除(PM)を選択していたが,その効果を支持するデータがほとんどなかった。メイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)の腫瘍遺伝子学者,Lynn C.Hartmann博士らは,PMは明らかに乳癌リスクを低下させることが新しい研究によって示された,と当地で開かれた米国癌学会(AACR)で報告した。しかし,同博士らは乳癌リスクのある女性は性急にPMを受けるべきではなく,新しいデータと遺伝子検査を用いて乳癌リスクを正確に調べ,PM選択に役立てるべきだ,と警告している。

乳癌発症率が低下
Hartmann博士らは,メイヨー・クリニックで1960年以降に両側PMを受けた女性950例と一側PMを受けた女性1,525例を対象にレトロスペクティブな研究を行い,両側PMを受けた女性では 7 例(0.74%)が乳癌を発症し,一側PMを受けた女性では 9 例(0.60%)が乳癌を発症したことを明らかにした。
Hartmann博士らは数学的モデルを用いて,両側PMを受けた女性がもし同術を受けていなかった場合,平均17年のフォローアップ期間中に76例( 8 %)が乳癌を発症していたと予測した。このモデルは両側PMにしか適応しないので,一側PMを受けた女性の乳癌発症予測数を算出することはできなかった。
両側PMを受けた女性のうち約 3 分の 2 に乳癌の家族歴があり,約 3 分の 1 に高リスクの家族歴があった。一側PM群では,2 分の 1 強に家族歴があり,5 分の 1 に高リスクの家族歴があった。

選択は慎重に
PMに予防効果が示されたにもかかわらず,Hartmann博士らは高リスクの女性がこの知見を元に性急にPMを受けるべきではないと警告している。
Hartmann博士は「PMは選択肢の 1 つであるが,過去にその効果と死亡率に関するデータの不足から選択が制限されていた。われわれの研究はこのデータ不足を埋めるもので,この研究結果によって高リスク女性のすべての選択肢について公平な議論を行うことができるだろう」と言う。
テキサス大学保健科学センター(テキサス州サンアントニオ)腫瘍内科のPeter Ravdin准教授は「この研究はPMが乳癌リスクを著しく低下させることを示すこれまでで最も強力な証拠を提供した」と述べた。
Ravdin准教授によると,遺伝子検査に基づいて乳癌リスクを判定することができれば,リスクのある女性の乳癌発症を予防する戦略に新たな意味を持たせることになるという。同准教授は,乳癌を発症する女性の約25%が死亡すると述べている。
Ravdin准教授は「 1 親等の家族が50歳未満に乳癌を発症したケースが複数あることが何十年もの間“最も強い”乳癌の家族歴であるとされており,これが一部の女性でPMを考慮する理由となってきた。遺伝子検査はより正しいリスクを示すことができるので,PMを考慮する際のより良い情報となる。乳癌遺伝子検査で陽性の女性はリスクが最高85%になる」と述べている。
キーワード 【予防的乳房切除(PM)そんな時代もあったのです・参考まで】
(Medical Tribune Vol.30, No.26, )【ホルモン補充療法は乳癌患者の再発を促進しない】
〔米アリゾナ州フェニックス〕 当地で開かれた米国婦人科腫瘍学会で,サウスカロライナ医科大学(サウスカロライナ州チャールストン)産婦人科のWilliam Creasman部長は「ホルモン補充療法(HRT)が,閉経女性の乳癌再発を促進せず,生存率を低下させることはない」と報告した。

145例中再発は13例
Creasman部長らはHRTを受けている乳癌生存者145例を検討した結果,これらの患者において発癌または癌再発リスクの上昇は認められなかった,と述べた。同部長は「癌再発リスクはHRTを受けていない患者と同等かそれ以下であった」としている。
対象となった患者は,カリフォルニア大学医療センター,サウスカロライナ医科大学,ロングビーチ医療センター,シティ・オブ・ホープ国立医療センターから集めた。Creasman部長によると,145例のうち129例は,再発の兆候がないまま現在生存している。残り16例のうち再発が認められたのは全体の 9%に当たる13例で,これら再発例のうち10例は生存,3 例が乳癌のため死亡した。残りの 3 例は介入疾患が原因で死亡した。再発患者13例のうち,12例はステージ I,1 例はステージIIの患者だった。in situおよびステージIII/IVであった19例で再発した者はいなかった。

開始前に十分なカウンセリング
Creasman部長は,患者にはHRT施行前に集中的なカウンセリングを行っており,「それぞれの患者に,エストロゲン補充療法に伴う理論的なリスクおよび確証が得られている利点について十分な説明を行った」と言う。これについて,クリーブランド大学病院産婦人科のWulf Utian部長は「この報告は,既にわれわれの多くが診療で行っていること,つまり患者の不安を聞き,HRTのリスク,利点,さらに発癌や癌再発に対するHRTの影響など,患者の知識が欠けているあらゆる点について,注意深く話し合うことを支持する根拠となった」と指摘し,「このように十分な情報を与えられた患者に対してのみ,医師は彼らの判断を助けることができたと言える」としている。

最終的確証は大規模試験を待って
ただし,Utian部長は「このようにHRTと乳癌に関する新たな情報を提供してくれた点で,今回の研究結果を歓迎する一方,HRTが再発リスクを上昇させるかどうかの最終判断をするには,まだ十分な患者数が得られていない。この問いに完全に答えるためには,最低6,000例の患者を検討する必要がある」と述べた。
同部長は「これは勇気と忍耐を持って答を探し続けた数少ない研究の 1 つと言えるが,残念なことにこの研究が答を出してくれるかどうかは分からない。この研究は,HRTによるリスクの差はあるかもしれないしないかもしれないが,あるとしてもその差は大きなものではないと指摘した点に意義がある。確証的試験が行われるまでは,いかなるデータも歓迎される。しかし,このような確証的試験はすぐには実現しそうにない」と付け加えた。
Creasman部長も,今回の試験で明確な解答を得ることはできないと認めており,「だれもが無作為二重盲検試験を望んでいるが,まだ実現していない。そしてそれが実現するまでは,これまでに得られた情報を元に進んでいくしかない」と述べた。
キーワード 【ホルモン補充療法・乳癌再発】

WEEKLY TOPICS
(Medical Tribune Vol.30, No.31, )【乳癌遺伝子検査に関する統一見解を発表】
〜Cancer Genetics Studies Consortium〜
〔ニューヨーク〕 米国では乳癌遺伝子,BRCA1およびBRCA2に対する遺伝子検査が普及し始めているが,陽性患者にどのような対策を助言すべきかに関しては専門家の間でも意見が定まっていない。このような状況に対処するため,米国立ヒトゲノム研究センター(メリーランド州ベセズダ)が資金援助を行っているCancer Genetics Studies Consortium(CGSC)は,遺伝医学,腫瘍学,プライマリケア,消化器病学,疫学の専門家からなる特別委員会を招集。乳癌遺伝子に変異を持つ患者にどのような対策を施すべきかをまとめた統一見解を『Journal of the American Medical Association』(JAMA,277:997-1003)に発表した。

自己触診を毎月行うべき
ワシントン大学(ワシントン州シアトル)内科のWylie Burke准教授は声明のなかで「健常者に存在する癌関連遺伝子の変異を同定する技術は全く新しいものであり,医療従事者はこのような情報を患者ケアにどう組み入れるべきかが分かっていない。今回の勧告は,乳癌遺伝子に変異が発見された患者を支援するための第一歩であり,今後の研究課題を明らかにしている。われわれは将来,このような課題に対するさらに明確な解答が得られることを期待する」と述べた。
今回発表された統一見解によると,さらに解明が進むまで,BRCA1あるいはBRCA2に変異が発見された女性は,乳房の自己触診を18〜21歳ごろから月に 1 度は行うべきだという。また,25〜35歳ぐらいからは,乳房の臨床検査を年に 1 〜 2 回受けることが望ましく,乳房X線撮影も年に 1 度は受けたほうがよい。 乳癌遺伝子に変異が発見された女性に対しては,予防的乳房切除術や予防的卵巣摘出術という選択肢があることを伝えるべきだが,このような手術を受けても発癌リスクがゼロになるわけではないことも必ず言わなければならない。
さらに,BRCA1に変異のある女性は,25〜35歳から卵巣癌の検査も年に 1 〜 2 度受けるべきであり,具体的には経腟的超音波検査や血清CA-125値の検査が含まれる。

現状の選択肢に1つの枠組みを提示
コーネル大学医療センターニューヨーク病院(ニューヨーク)女性ヘルスケアセンターのOrli Etingen所長は,今回の統一見解について「患者と共有すべき具体案を提供するものだ。乳癌あるいは卵巣癌の遺伝的リスクを受け継いだ女性が現在選択可能な保守的および急進的な方法に一定の枠組みを与えたと言える」とコメント。さらに「さまざまな予防策の効果を明らかにするためにも,BRCA1およびBRCA2に変異を持つ患者を長期的に追跡する臨床試験が必要だ」と付け加えた。
その 1 例として同所長は,タモキシフェンによる予防治療で卵巣癌発症リスクが低減されるかどうかという問題を挙げている。また将来的には,遺伝子治療が遺伝性癌に対する最も効果的な予防治療となるかもしれないという。遺伝子の専門家であるテキサス大学MDアンダーソン癌センター(テキサス州ヒューストン)のChris Amos博士は「遺伝子検査を受けようと考えている患者は,結果が出た後,どのように対処するかを考えておく必要がある」とし,「 1 〜 2 年もすれば,陽性患者にどのような対策が効果的かがもっと分かるだろう」と語った。

一方,スローン・ケタリング記念癌センター(ニューヨーク)の遺伝カウンセラー,Heather Hampel氏は「大切な点は,特に家族性の乳癌と卵巣癌のリスクに関する研究がもっと必要だということだ。われわれカウンセラーは毎日助言を与えなければならない。したがって,今回このような統一見解が発表されたことは重要なステップである」と述べた。BRCA1は大腸癌との相関も指摘されていることから,今回の統一見解では,同遺伝子に変異を持つ男女に大腸癌のルーチン検査も推奨している。この検査は一般人口でも推奨されているものだ。
キーワード 【乳癌遺伝子検査に関する統一見解】







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1997-01〜1997-05記事